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2011-06-29up
下北半島プロジェクト
映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を下北半島で上映したい!
第3回
強力助っ人、A子ちゃんあらわる!
このプロジェクトの言い出しっぺが、下北半島出身でマガ9のボランティアスタッフ、Y子ちゃんであることは第1回のコラムで紹介しましたが、このプロジェクトを立ち上げるにあたり、Y子ちゃんやマガ9の背中を押してくれた、A子ちゃんの存在があります。マガ9のボランティアスタッフの仕事仲間であったA子ちゃんは、「マガ9学校」に参加してくれて、その後の懇親会にも参加。Y子ちゃんが下北半島の出身だと知ると、「えっ、私も青森」ということで、俄然、話が盛り上がってた二人。しかし考えてみれば、この広い東京においてこんな偶然の出会いがあり、そしてまだ若い(24歳と31歳)青森出身の彼女たちが、「大間原発や六ヶ所村」のことを、「どうにかしないと・・・」と、顔と顔を合わせて真剣に話をしている姿には、ここから何か始まるのでは!? と予感させるものがありました。そのA子ちゃんに「故郷青森への思い」と今回の下北半島プロジェクト実現に向けて、書いてもらいました。
「まったく、青森県民がダメだからこうなるんだ」
テレビで原発のコマーシャルが流れるたびに、父はそう吐き捨て、私は「ああ、またか」とやり過ごしていました。
下北半島に生まれ育ち、弘前市に移り住んだ父は、若い頃、大間原発の反対運動をしていたといいます。電源開発に直談判し、周囲の住民を説得にまわり、「命がけで原発を止めたかった」そうです。祖父から受け継いだ山が、ちょうど大間原発の設置に必要な土地で、途方もない金額での買収を持ちかけられたものの、山を渡したら最後。家は貧しかったけれど、絶対に山は渡さなかった。それで工事が延期されていた。だけど、けっきょく他の土地を使って大間原発はできてしまった。地元民がお金に騙されたんだ――。
そんな話を、私は小学生くらいの頃から折にふれて聞かされていました。ただ、あまりに当たり前のように「原発=悪いもの」と教え込まれていたせいか、具体的に原発の何がだめか、お金に騙されるってどういうことか、私は自分の頭で考えようとはしませんでした。むしろ、「もっと普通の親だったらいいのに」と煙たく感じていたくらいです。まわりには、反原発なんて言うひとはいなかったから。
原発のことをまったく考えないまま、のんきに東京で暮らしていました。
それが、3.11。
福島原発の事故が起きて、やっとつながった父からの連絡は「とにかく西日本へ逃げろ」。テレビの報道より逼迫した口調が怖くて、翌12日には新幹線で新大阪に移動。さらに翌日、青森の揺れが収まった頃合いを見て、伊丹空港から青森へ飛び、弘前の実家に帰りました。
心臓を患い入院している父のもとへいくと、静かに「だから言ったべ」。プルトニウムの怖さ、電源開発の強引さ、最初はいっしょに反対していた地元の仲間が、次々に賛成派にまわった時の無念。父が下北から弘前に移り住んだ理由の一つが、大間原発に反対して村八分にされたことだったと聞きました。
父とこんなに向き合って話すのは、おそらく初めてです。思春期以来、なんとなく疎遠になり、年に数回、帰省したときも会話らしい会話はしていませんでしたから、今回の原発事故は「社会にとっても、私にとっても大きな変化が起きた」と感じずにいられませんでした。
一週間ほど実家に滞在して東京に戻った私は、父から聞いた話を補完するように原発関係の本を読み漁り、「お父さん、今までごめん!」と心のなかで謝りました。原発のことを知れば知るほど怖くなり、ずっと無関心だったことを猛烈に反省しました。誰かと不安を共有したくて、友人ら数名に「原発、怖いよね」と持ちかけてみました。
が、返ってくるのは、かつて自分が父にしていたような無関心な反応。どうしたらいいの? 何かできることはあるの? そんな不安と焦りを抱えたまま、「マガ9学校」に足を運ぶと、偶然Y子ちゃんと知り合いました。
Y子ちゃんは下北。私は弘前。同じ青森出身者として原発だらけの地元を振り返り、エネルギーシフトの方向に向かうといいのに、という話をしました。原発の恐さだけじゃなく、原発のお金がなければ地域経済が成り立たず、地元民は声をあげようにも難しいという話も。原発についての思いを共有できて、私の不安と焦りは「今、青森が変わるしかない!」に変わっていきました。
Y子ちゃんの「下北半島で『ミツバチの羽音と地球の回転』を上映したい」という思いには、その場で賛成です。
『ミツバチの羽音と地球の回転』で上関原発に反対している人たちの姿は、きっと青森の人たちを勇気付けると思います。とりわけ、30代と若く、妻子を抱えながら島をひっぱっている山戸孝さんの行動力は、青森県の若い人たちに「自分たちも、原発はイヤって言ってもいいんだ」と気付きをもたらすのではないでしょうか。
六ヶ所再処理工場や大間原発ができたのは、もう何十年も昔のことで、多くの青森県民は「今さら反原発なんて……」と思っているかもしれません。だけど、祝島では今もなお、原発はいらないと意思表明をし続け、山口県知事は建設工事の継続を認めないとしたではありませんか。先日の青森知事選では、原発推進派の三村申吾さんが当選しましたが、青森の地元民が祝島の人たちのように声を上げたなら、定期検査で運転停止の東通原発を、そのまま廃止にできるかもしれません。『ミツバチの羽音と地球の回転』を下北で上映することは、とても大きな意味があると思います。
ただ、私もY子ちゃんも、今は青森を離れて東京に住んでいます。遠くにいるのに青森の人たちに何かをいうことに、うしろめたい気持ちがないではありません。本当だったら、青森に帰って、地元民の一人として上映会をするのが正解かもしれません。それに、会場の手配や、上映会の告知など、東京にいたら難しいことがたくさん出てきそうです。資金のことも具体的に考えなくてはならず、課題はいっぱい……。
だけど「下北半島プロジェクト」。ぜったいに実現させたいのです。上映会が実現して青森の人が何か感じてくれたら嬉しいし、そこから原発に頼らない青森が生まれるともっと嬉しい。上映会が実現するまでの経過を「マガ9」で報告していくことで、青森以外の原発のある県でも、同じことが起きてくれたら本当にいいな、と思っています。
先日、父に電話して「私、原発に無関心だったことを反省したよ」と話したら、「今わかっただけでもいい。これからどうするかだ」と心なしか嬉しそうでした。あれほど“もっと普通の親がいい”と思っていた私ですが、今となっては反原発の父が誇らしいくらいです(照れくさくてそこまでは本人にいえませんが)。
父は、今も入院中で、いつ退院できるかわかりません。若いころ、「命がけで原発を止めたかった」という父の思いは、娘として私が受け継ぐしかないな、と感じています。まずは「原発はいや」と声を上げること。そして、原発意外の道を探すこと。少しずつかもしれませんが、確実に意思表示し続ける。そうすれば、きっと青森は変わることができると思うのです。(A子)
*****
☆「下北半島プロジェクト」に届いたメールを紹介します、(6月22日から6月28日)
ドンドンさん(56歳 男性 東京都)
「応援します」
青森出身者ではありませんが、青森の故郷を大事にするY子さんにエールを送ります。下北半島で起こっていることは、核のゴミを下北半島に押し付けている我々-特に電気をたくさん使っている都会の人々の問題です。この差別の構造を変えていきたいと思っています。
Fujiiさん(36歳 男性 青森県)
「いいですね」
何かはじめましょう。
鮎川想さん(52歳 男性 埼玉県)
「Y子さんへ」
同じ下北半島出身者として、Y子さんと思いを同じくする者です。大間原発の話が持ち上がったのは私が上京してすぐの頃。反対署名を集めたりはしましたが、田舎に住んでいる両親のことを考えると思い切ったこともできず、やがて本決まり、着工。この30数年、故郷の原発のことを考えない日はありませんでした。
完成後に訪れるであろう破局の悪夢を何度見たことか。それが今福島で起こっていることです。故郷喪失。これほど恐ろしいことはありません。
Y子さんの投稿を読んで改めて大間原発を完成させてはならないとの思いを新たにしました。小さな絆もみんなが手を携えれば大きな輪になる。
一緒に輪を作りましょう!
いながの農ぼーいさん(青森県)
「青森犬民?」
原子力の犬状態の青森。
エサもらんねぇば生ぎれねぇ。
飼い慣らされでナンボ。
ご主人サマの顔色ばり見る。
こったら状態の人は見に来ねぇべ。
って事は、殆ど来ねぇべ?w
それでも、上映しねぇば、知るチャンスねぇ人多い。
この映画観で、色んた選択肢あんの知って、希望持って欲しい♪農♪
YAMさん(59歳 男性 青森県)
「賛同しますっ!」
僕は八戸市でPEACE LANDっていう市民グループをやっています。5月の「大MAGROCK」を主催したり、先日は八戸市で小出さんの講演会を開きました。「下北半島でミツバチの羽音と地球の回転上映!」いいですね。動きますよ〜!
http://peaceland.jp
にしおかまゆみさん(女性 神奈川県)
「シモキタde下北藩です。」
六ヶ所村ラプソディー出演者のYAMさん(@yamzodiac)たちと一緒に、今回のプロジェクトとものすごく似た問題意識でイベントやってきましたー。自分は和歌山出身なのですが、下北半島一回りして、正直、半島全体がまるで工場みたいで大きなショックを受けました。前にイベントをやった時は下北半島の文化について話してくれる人がいなくてそっち方面のアプローチに力を貸してください! @aresan_nishioka
*
一歩一歩ですが、前に進んでいる「下北半島プロジェクト」。
ますますの応援をよろしく! そして一緒にやりましょう。
原発のある地元に暮らす人からのメールもお待ちしております。
また近々、行う予定の勉強会&交流会については、決まり次第お知らせしていきます。
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