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2010-05-26up
ぼくらのリアル☆ピース
普天間基地の「移設」問題が注目を集める一方で、
沖縄県外ではほとんど報道されていない、
もうひとつの「新基地建設」の動きがあります。
沖縄本島北部、東村高江。やんばるの森に囲まれたその小さな集落で、
米軍ヘリパッド建設への反対運動に取り組む比嘉真人さんに話を聞きました。
地球環境に負荷をかけない高江の未来を
■その2■
◆計画の「歪み」が、高江と沖縄を振り回す
──今、普天間基地の辺野古への「移設」問題が注目を集めていますが、こちらは政権交代とともに、一度「白紙に戻す」というので、少なくとも議論にはなったわけですよね。米軍再編のロードマップの一部という意味では高江も辺野古も同じ位置づけなのだし、本来は高江も同じように一から議論しなおすべきだったのでは? と思うのですが…。政権交代後も、国の対応にまったく変化はないというのが現状ですか?
ないですね。政権交代の直後、僕たちも与党議員を含む何人かの国会議員に要請には行っていて、皆さん「それはまずい、早急に対処します」と言ってくれたんですが…。今、もう一度要請に行こうと言っているところです。
ちなみに、今年の2月には、沖縄防衛局が突然住民に向けての「説明会」を開いたんですけど、そこでは「高江の住民の皆さんには、基地の危険性の負担をお願いする」なんていう発言までありました。そもそもヘリパッド建設とかって、一応は「県民の負担軽減のため」っていう名目があったはずなのに、それはどこへ行っちゃったの? という話ですよね。「負担しろ」って、思いっきり言ってるじゃん! と。
──うーん。ある意味正直というか、本音が出たというか・・・。
もともと論理的に崩壊してる計画なのに、そこにさらにいろいろ積み上げてやろうとするものだから、ますますヘンなことになっちゃってる。高江はそれにつき合わされてる、という感じですよね。
──そういえば、以前に比嘉さんが撮影した座り込み現場での映像を見せていただいたときに、気にかかったのが沖縄防衛局の職員のことでした。住民が、工事の強行に抗議して「話し合いが先だ」と詰め寄るのに、彼らはほとんど無言のままでしょう。もしかしてあれは、「何も言わない」んじゃなくて「言えない」からなのかな、という気がして。個人的には納得がいかないけど、でも上からの命令に逆らったらクビになるかもしれないししょうがない、という人もいるんじゃないかと。
いると思いますよ。それに、もっと辛いと思うのは、防衛局に雇われてる警備員の人たち。彼らは座り込みを「排除」して「作業員の安全を守る」ことが仕事なんだけど、住民と衝突しながら、中には本当に泣きそうな顔をしてる人もいます。しかも、その人たちも当然沖縄の人たちなんですよね。僕、中の1人と名護のほうのコンビニで何度か会ったりしてますから。
──そのあたりにも、いろんな歪みが出てきてしまっているような・・・。政権交代は、本来ならそれを是正するいい機会だったはずなんですが、高江についてはほとんど報道もされませんね。
座り込み現場を見おろして。あたりには緑深い森が連なる
◆1人でも多くの人に、実状を知ってもらいたい
──今は、ヘリパッドの建設工事そのものはどんな状況になってるんですか?
2月の防衛局による説明会では、「7月から工事を再開したい」と言われました。3月から6月は、やんばるの森ではノグチゲラっていう絶滅危惧種の鳥の繁殖期なので、それが終わるまではやらない、と。
でも、今までも「やらない」と言っていた時期に突然工事車両がやってきたことが何度かあったので、それに対する監視の意味もあって、座り込みは継続しています。今年の2月下旬にも、いきなり仮設フェンスの設置作業が開始される、ということがあったんですよ。防衛局は「これはヘリパッド工事とは関係ない」っていうんだけど、そんなわけないじゃないですか。1週間くらい毎日、朝の7時前から工事車両がやって来るような日もありました。
結局、たくさんの人が支援に集まってくれたこともあって、工事は中断になったんですけど…そのときは防衛局の職員が6台くらいビデオカメラやスチールカメラを持ってて、ずっと住民を撮影してました。こっちが何かやったら「妨害行為だ」と言って裁判をやる、そのための証拠作りだと思うんですけど。「撮るな」と言っても、そう言ってる住民をまた撮る、という感じで。
──じゃあ、座り込みの抗議活動はまだ続く…。
そのつもりです。あと、なんとか工事が始まる7月までに、なるべくたくさんのところでアピール活動をして、たくさんの人に状況を知ってもらいたい、「おかしい」という声をあげてもらいたいと思っていて。東京だけじゃなく、関西とか名古屋とかでも上映会などのイベントを企画してます。
──現時点ではあまりにも情報が伝わっていないし、まずは知ってもらって、考えてもらうことからですよね。
高江のそばの北部訓練場もそうですけど、沖縄に米軍基地ができたのは50年以上も前ですよね。ということは沖縄の、ある年代以下のの人にとっては生まれる前からある、あって当たり前のものなわけです。だから疑問を持たないっていう人も多いと思うんですよ。僕も、最初から沖縄に住んでたらかかわってなかったんじゃないかと思うことがあります。
でも今、こうやって辺野古や高江の問題が出てきたことで、そうやって「当たり前だ」って思ってたものが、実はおかしいんじゃないかって改めて考えるきっかけにもなるんじゃないかな、と思ってるんです。「安保のため」だとかいうけど、じゃあ北部訓練場でジャングル戦の訓練をなんでしてるんだとか、実は基地自体がいらないんじゃないかとか。今回の問題が、県外でも県内でも、たくさんの人がそういうことを考えるきっかけになったらいいな、と思って。…これは、そういうふうに前向きに考えてないと暗くなっちゃうっていうことでもあるんですけどね。
──ありがとうございます。では最後に、比嘉さんの考える「平和な社会」の姿を聞かせてもらえますか?
もちろん基地のない沖縄、戦争のない社会ですけど…あと、自分たちの暮らしが地球環境に負荷を与えないとか、貧困や飢餓で苦しむ人がいないとか、地域での人間関係もうまくいってるとか。そういういろんなことが実現できたら本当の意味で「平和」なんじゃないかな、と思います。
工事ゲート前の座り込み現場に設置されたテント。ときには支援者からの差し入れなどが届くことも。
│←その1へ│
4月上旬にインタビューを行ってから1ヶ月半あまり。
鳩山政権は、普天間基地の辺野古への移設計画を正式に表明。
一方高江でも、高江区長が「建設は避けられない」として、
「建設位置の移動による負担軽減や迷惑保障を沖縄防衛局に求めていく」
との方針を固めた、と報道されています(沖縄タイムス5月14日)。
「マガ9」では、今後も高江について、沖縄について、
さまざまなコンテンツを企画していきたいと思います。
比嘉さん、ありがとうございました。
*
6月には、東京で2日間連続の「高江イベント」開催が予定されています。
詳しくはお知らせメモをごらんください。
その他、名古屋でも5月中に集会などが開催されるそうなので、
「やんばる東村 高江の現状」をチェック。
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