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2011-08-24up

下北半島プロジェクト
映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を下北半島で上映したい!

第9回

青森に行ってきました!

 前回お知らせした通り、A子とマガジン9スタッフは、夏休みを利用して下北半島に出掛けてきました! 5日間かけて現地の方と交流し、六ヶ所・東通・大間の核施設を見学しました。初めて会う方々、初めて見る核施設。どちらも刺激的で、「いよいよ、プロジェクトが本格的になってきた」と実感しました。

8月16日 
青森市交流会“自分たちで何かしなければ”を共有

 この日の参加者は、映画配給会社のSさん、高校で数学を教えるO先生、スーパー勤務のOさん、舞踏家のFさん、ちょうど青森に来ていた千葉県の中学校の国語教師・K先生の5人。K先生のほかは青森県在住で、東京の支援者の紹介や、ツイッターでの呼びかけに応じて集まってくれました。
 青森の郷土料理を囲みながら、原発や上映会についてざっくばらんに語らったのですが、ほぼ初対面同士にもかかわらず「あの人に相談したらいいよ!」「あのお店なら、チラシ置いてもらえる」と、ポンポン会話が弾みます。原発に対する県民の意識についても話題にのぼり、「原発・再処理は正しく理解されていない。六ヶ所再処理工場は、すでに使用済み核燃料のリサイクルができていると思っている人も多い」とO先生。地元に核施設があっても、意識しなければ正確な情報は入手しにくいことを実感しました。

 一方で印象的だったのは、“青森県民も縮こまっているわけではない”という一言です。6月の青森県知事選では、原発を容認する三村申吾さんが圧倒的な大差で当選しました。長い間、雇用も財政も原発に頼ってきたことを考えると、無理もない結果だと思っていましたが、それだけではないようです。
 「僕らは県議会を傍聴したり、県会議員に電話して原子力施設についての見解を調査している。なのに、中央には伝わらない」
 こう語るOさんはとてももどかしそうで、“自分たちで何かしなければ”という思いに溢れていました。私たちが下北半島プロジェクトを始めた動機を共有でき、ほくほくした気持ちのまま初日を終えました。

8月17日 
六ヶ所見学でうなだれ、突然のラジオ収録に大慌て

 2日目は小雨がちらつくなか、朝早くマガ9スタッフの皆さんとレンタカーに乗り込みました。行き先は六ヶ所村。前日の交流会で「原発・再処理は正しく理解されていない」と聞いて、そういえば自分はどうだっけ? と自己点検の意味も込めて六ヶ所原燃PRセンターを訪れました。
 1時間近く見学して、知らなかったことを確認したり、燃料棒や燃料ペレットを見られたのはいいのですが、展示物が予想以上に子ども向け。ボタンを押すと音声が流れて電飾が光り、クイズが始まる展示があれば、「食品から取り込む放射線は年間0.3ミリシーベルト」など原発事故後、テレビでよく聞いた謳い文句だらけの展示に気が滅入りました。リスクについての解説を、大至急、拡大リニューアルしてほしいです。

「呼吸するたびに放射性物質を吸い込んでいます」と書かれた展示。
他にも原発の安全性を強調する展示がいっぱい。

 PRセンターを出た私たちは、その後、むつ市へ。むつ市出身で現在は東京の大学で勉強中のOさんと合流。青森県大間出身で現在は東京の新聞社に勤務のYさんの紹介で、地元ラジオ(FMアジュール)や地元新聞社(東奥日報社)を回りました。最初ですし、さしあたってのご挨拶くらいかなと思っていたのですが、事態は急展開。FMアジュールさんのご好意で「映画の上映会? じゃ、今収録しちゃおう!」となり、私とOさん、マガ9スタッフさんはスタジオの中に……。ラジオ出演はもちろんはじめて。マイクを前にラジオのパーソナリティの方からあれこれ質問を受けて、しどろもどろに。それでも「いい映画ですから是非多くの人に見て欲しいのです。大人にも子どもにも」と来場を呼びかけました。この日の収録は、近日中に放送されるそうです。

 夜は、むつ市で交流会を開きました。夜から合流した参加者は地元で家業を手伝うTさんと八戸在住のミュージシャンYさん。会話の中心は、上映会の告知方法と地元の様子について。終始、和やかな時間でしたが、Tさんの話でハッとしました。
 「震災前に友達とね、下北の核施設に何かあったら半島を切っちゃえばいいって笑い話にしてたの。でも福島への対応をみると、現実になりそうじゃない?」 切り離してはいけない。分断するなんて、絶対だめ。下北半島プロジェクトで大切にしたいことが、より明確になりました。

8月18日
大間原発、思っていたより民家に近い!

 現地ツアー3日目は、東通村と大間町の原発を見に行くことにしました。むつ市から車で40分ほど。どんどん人気がなくなり、不安になった頃「東通原子力発電所PR施設 トントゥビレッジ」の看板が見えてきました。途中、原発の敷地を囲む鉄格子に戦々恐々としながら到着すると、ショック! 節電のために臨時休館でした。
 発電所をPRする場所が休んで節電……なんとも不条理を感じつつ、海の方に出てみると、遠くに東通原発が見えました。周囲はものすごく静かで、大きな建物の存在感が際立ちます。今、津波がきたらどうなるだろう。目の前の景色と東日本大震災の映像を重ね、言葉にならない思いを抱えて車に戻りました。

 お昼過ぎに大間に着いた私たちは、地元出身の方の案内で、建設中の大間原発がよく見えるスポットへ。近い。思っていたより民家に近い。一番近い家は、原子炉から300メートルだそうです。もし、このまま大間原発が完成して始動したら、あの建物から排気があがり、あの放水口から原子炉の冷却水が海に注がれる。で、そこで捕れた魚を食べる。想像すればするほど、受け入れ難い感情が湧きます。

約4割まで工事が進んだ大間原発。2014年運転開始予定だそうですが…。

 少し離れた「北通り総合文化センター『ウィング』」の原子力郷土資料展示室に立ち寄ると、新しい資料は更新されていませんでした。安心、安全、普段の生活にも放射能はある。この3つの謳い文句が並ぶ資料がいっぱいのなか、地元の子どもたちが遊んでいます。この建物には、屋内運動場や図書室、プールがあり、放課後の子どもたちの居場所になっているとのことでした。原発が生活に浸透するとはこういうことかと、しばし考えさせられました。

8月19日
一面ブルーシートで覆われた野球場

 最終日、マガ9スタッフの皆さんと観光して帰ろうと思った道すがら、気になる看板が。近づいて見ると、「飛散を防ぐためにシートで覆っております」の文字。看板の先に進むと、野球場いっぱいに敷かれたブルーシートに、石の重しがキレイに並べられていました。

グラウンドいっぱいのブルーシート。これでセシウムの飛散を防げるの?

 老朽化のために改装したむつ運動公園野球場は、入れ替えたグラウンドの土が宮城県内や福島県周辺で採取されたもので、放射性物質に汚染されていました。内野の「混合土」はセシウム137が最大値1,000Bq/kg、セシウム134が最大値890Bq/kg。外野の「張り芝」は、セシウム134が最大値690Bq/kg、セシウム137が最大値760Bq/kg検出されたそうです。汚染がわかっても、土を移動させる場所がなく、ブルーシートはやむを得ずの対応とのことですが、すぐ近くで、子どもたちがはしゃぐ姿が見えます。
 原発問題は結局のところ、子どもを大切にするかどうかに行き着く気がしました。子ども向けの展示で「安全性」を説き、子どもが遊ぶ場所に汚染物質を置く。今は抵抗する術を持たない子どもが大人になった時、「それは仕方なかったね」と言ってもらえるだけの言葉が、私には見つかりません。

 そんなこんなで、現地ツアーはとっても濃密な5日間でした。青森・下北でお会いした皆様、どうもありがとうございました。仲間が増えてパワーアップした下北半島プロジェクト、これからが本番です!
 10月16日(日)、みなさんとお会いできるのを楽しみにしています!

(A子)

下北文化会館を下見に行くと、高い天井、広々として紫の絨毯が敷き詰められた豪華なロビー。素敵な建物です。みなさん、ぜひいらしてください!

映画『ミツバチの羽音と地球の回転』上映会
10月16日(日)開場13:30/開演14:00
入場料:500円(事前予約・前売りチケットは特製ポストカード付き) 未就学児は無料
場所:下北文化会館 大ホール
★参加申し込みはこちらのフォームから。
 または、上記の販売場所で前売券をお買い求めください。
★オリジナルちらしは、こちらからダウンロードできます。
 お友達や行きつけのお店などへお知らせいただけたら嬉しいです。

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マガ9スタッフとA子ちゃんは、5日間の間、
原発ばかりを見に行っていたわけではありません。
広葉樹林が作り出す美しい緑の道を車で走り抜け、
身体がすべすべになるいで湯につかり、
美味しい日本酒を新鮮なホタテを肴に呑む。
親切な地元の人の案内で地元の夏祭りにも参加しました。
「いいところだなー」と感じると同時に、沸き上がってきたのは、
自分の故郷への望郷の念。
そういった気持ちを思い出させてくれた今回の青森の旅でもありました。

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