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2011-06-15up
下北半島プロジェクト
映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を下北半島で上映したい!
第1回
ことの起こりは Y子ちゃん!!
マガ9のボランティア・スタッフのY子ちゃんは、青森県は下北半島の出身です。3.11の後、彼女より「私のふるさとがなくなってしまうかもしれない」と相談を受けました。下北半島には、六ヶ所村の再処理施設だけでなく、原発や使用済み核燃料の貯蔵施設も計画されており、まさに下北「核」半島と呼ばれるほど、核施設が集中している場所です。Y子ちゃんは、今回の福島第一原発の事故を受けて、いてもたってもいられなくなってしまったそうです。
日本の原発問題の集約点が、下北半島にあるような気がします。また先日の青森県知事選の結果をみてもわかるように、根が深く悩ましいものを抱えています。いろいろとハードルは高そうです。
しかし「下北半島で"原発"を考えるイベントを開きたい。映画『ミツバチの羽音と地球の回転』を上映したい!」そんな彼女の思いを聞き、マガ9も実現に向け、全面的に支援することにしました。まずはY子ちゃんの思いを紹介します。
3月11日。東京の職場から帰宅できず都内の避難所に身を寄せていた私は、スクリーンに延々と映し出される津波にのみこまれていく家々の映像を、頭で整理できずに茫然となって眺めていた。翌12日朝、福島県の原子力発電所で事故が起こったと、同じく避難所のスクリーンのなかで男性記者が言っていた。他に何を言っていたのか、彼が叫ぶように言っていたか、それとも淡々としたように言っていたか、覚えていない。ただ、「これはきっと大変なことが起きたんじゃないか」と思ったことだけは、覚えている。
そして、それから約2週間後のあの日、決めたこと。
◎3月27日 日記
多分あれからずっとパニクってた。混乱してた。動揺してた。
だけどやっと少しずつみえてきた。
地を踏みしめる足の置き場所。
ここから世界を変えるんだ。
3月11日までの積み重ね。
3月11日からのしかかってきたもの。
悔んでばかりいられない。遠くに離れて縮こまってばかりいられない。
だいすきなこの世界を。もっとだいすきな世界にするために。
恐れない。怖がらない。
堂々と、そして包み込むように、立ち向かう。
これから作戦を立てよう。
さらに2ヶ月後、帰省して。
◎5月24日 日記
怒りで興奮おさまらず、眠気が全くこない。帰省してさらに怒り倍増。
のうのうとしてやがる原発のある日常。
美しいみどり、空気、水。
かけがえのないひと、景色、思い出。
くっそーーーーーー 失いたくない、奪われてたまるか。
ぜってえ、とめてみせる、守ってみせる。
3月11日から今もって全く収束の目途が立たない、福島第一原発の事故。それは、人々が積み重ねてきた生活をいともたやすく奪い、山河海を汚し、日常が混乱していくさまを今に至るまでみせつけている。その間にわたしを覆った今まで経験したことのないほどの無力感、絶望感、虚脱感、恐怖は、同時に、「いままで」と同じであることに終止符を打つことを求めている。もう何も奪われたくない。誰かを犠牲にしたくない。そうであるならば、手で足で声で変化をおこさなければ。
私の生まれ育った場所、青森県下北半島には、「原子燃料サイクル施設:高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、再処理工場など」(六ヶ所村)や東北電力の「東通原発1号機」(東通村)が既に立地し、現在さらに東京電力の「東通原発1号機」、「リサイクル燃料備蓄センター」(むつ市)、「大間原子力発電所」(大間町)の建設が進んでいる(6月13日時点で、東通原発増設計画は設計大幅見直しで延期、「リサイクル燃料備蓄センター」は本体工事が止まり建物の周りの環境整備事業は再開、「大間原子力発電所」は建設休止)。
福島第一原発の事故が起きてから休止している建設工事を受けて、地元の商工会は「原子力関連施設の早期安全確保と建設工事等早期着工に関する要望書」を電力会社などに提出した。厳しい自然のなか森と海の恵みで細々と生きてきた下北半島。そして、経済成長、政治に取り残されてきた場所。
原発からのお金で生活しているひとたちもたくさんいる。青森県も自治体も原発の税収で財政を工面している。だから、不信を声に出しづらいしそこから抜け出すことも難しいのには、そういう背景が大きいんだと思う。
でもだからこそ、下北の人間として地元のひとたちと何かしていきたいし、自分の足で立てる地域社会の姿を一緒に考えていきたい。本当に小さいことかもしれないけれど、下北や青森県以外の声も集めて、皆で脱原発への選択肢をつくっていくきっかけをつくりたい。こんなこと言ってると、親兄弟にも地元で迷惑をかけるんじゃないかと不安になるけれど、そういう社会ですらもどうにか巻き込んで変えていきたい。
***
前置きがとても長くなりましたが・・・そのような自分自身の変化と原発に依存して生きる故郷への思いから、下北「核」半島での映画上映を行いたいと考えるようになりました。私が上映したいと思っている映画は、鎌仲ひとみさんが監督したドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」です。初めて観たとき、大袈裟かもしれないけれど、どこにだって希望はあるんだと思えました。石油・原発依存から一歩抜け出して、自分たちでエネルギーを選択していく人々。彼らが原発に抗う姿を通じて、「守りたいもの」はなんなのかがさりげなく、時にユーモラスに映し出される。それは、実は私たち自身もそういうふうでありえるという希望なのではないかと思います。そこに私は下北を変えるチカラがある気がするのです。
この実現を、「原発に頼らなくても生きていけるんじゃないか、選ばざるをえないということではなく選択肢はほかにあるんじゃないか」という小さな問い直しをしていくきっかけに、まずはしていけたらと思っています(まずは、というのは「原発なきあと具体的に地域で暮らしていくには」というテーマが表裏の問題として重要だと考えているため)。地元の人間がそんなことをやる、というだけでもインパクトになると思っているので必ず実行したいと思います。
そして、先日のマガ9学校の鎌田慧さんと雨宮処凛さんとの講演『原発の現場を歩いて』の際には、みなさんよりたくさんのカンパをいただきありがとうございました。本当に感激しました。思いもかけずたくさんの励ましの言葉もいただけて本当に嬉しかったです。資金についてはまだ不足分がありますので、その点についてどうするか改めて考えたいと思いますが、とにかく、ありがとうございました。なんらかのご報告ができるようにしていきたいと思います。
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