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2010-05-19up
マガ9レビュー
本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。
vol.142ビルマVJ―消された革命
2010年5月15日公開/アンドレス・オステルガールド監督「ビルマVJ」は、2007年9月にビルマ(ミャンマー)で起きた僧侶を中心とした反政府デモとその前後の様子を、VJ(ビデオ・ジャーナリスト)たちが小型ビデオカメラで撮影した映像をもとに、一部再現映像を織り交ぜつつ構成したドキュメンタリー映画だ。
軍事政権による支配が半世紀以上続くビルマでは、報道は厳しい検閲を強いられるし、自由な取材活動も禁止されている。そんな状況下でも、VJたちは身の危険を冒しながらビルマの「現実」を記録する。
この大規模デモについて、日本ではジャーナリスト・長井健司さんが殺害された映像と共に記憶している方が多いと思う。世界中を駆け巡ったあの衝撃的な映像も、ここに登場するVJたちが撮ったものだ。しかし、この映画で僕の胸をわしづかみにしたのは別のシーンだった。
行進する僧侶たちの周りを、鎮圧部隊から僧侶を守るために一般の人たちが手をつないで壁となる。そして沿道を笑顔で拍手を送る人、顔の前で手を合わせる人たちが埋め尽くし、さらに道路の両側に立つビルからも、多くの人たちが身を乗り出し手を振り歓声をあげる。
僧侶の着ていた袈裟の色から「サフラン革命」と呼ばれるこの民主化運動がいちばんの盛り上がりを見せたこのシーンは、まさに感動的だ。ビルマの人たちがどれだけ「この日」を待ちわびていたのか。それまでいかに抑圧されていたのか。そして心から自分たちの国の民主化を望んでいることが、その顔・顔・顔から伝わってくる。
それでも……、ご存知のとおり、このデモの目的は達成されていない。ビルマでは現在も軍政主導の政治が続けられているし、国際社会も有効な対抗策を講じられないでいる。あれほどのエネルギーが集まってもなお、社会を変革することができないのかと悲しくもなる。
でも、ビルマの人たちは諦めていないと思う。
先週土曜日。僕が観た回の上映終了後、最前列に座っていたビルマ人の女性が突然立ち上がり、観客に向かって「ありがとうございました。ありがとうございました…」と繰り返し頭を下げた。
それは、自分の国の現状に少しでも関心を持ってくれた外国人に対する純粋な感謝の表現だったろうが、僕には「(日本人もビルマの民主化に)協力してください」と懇願しているように聞こえた。彼女は、いま自分のいる場所で自分にできることをすることで、自分たちの国を変える努力をし続けているのだ。
僕は、「自分たちの社会」を「自分たちの力」で変えようとする意思を、ビルマの人たちに教えられた。その恩返しではないけれど、僕がビルマの人たちにできることは何かを考え、実行していきたいと思う。
*
と、書きつつ、最後に配給を手がけた方の「ツイート」を紹介させてください。本当にそう思います。
『ビルマVJ』は語弊を恐れずに書くと、もう少し気軽に観て欲しいなあとも思っています。映画としても驚くほどにエンターテインメントとして作られています。(中略)構えて観るより、肩の力を抜いて観てもらえるとうれしい。
(山下太郎)
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