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2010-09-15up
ぼくらのリアル☆ピース
今年5月の日米共同声明で、
再び普天間基地の「移転先」とされた沖縄・名護市辺野古。
今も座り込みの反対運動が続くこの浜で、
10月、音楽を通じて「基地はいらない」のメッセージを発信しようという、
一大野外イベントが開催されます。
「ピース・ミュージック・フェスタ! 辺野古2010」の実行委員、
ミュージシャンの知花竜海さんにお話を聞きました。
辺野古から発信する
「ピース・ミュージック・フェスタ!」
■その1■
◆子どものころからの「違和感」が出発点
──沖縄・普天間基地の「移転先」とされる辺野古の浜で10月末、音楽を通じて基地問題へのアクションを起こそうという野外イベント「ピース・ミュージック・フェスタ! 辺野古2010」が開催されます。
知花さんは2007年からこのフェスの実行委員を務められているほか、基地問題や「沖縄」をテーマにした曲をいくつも発表されていますが、そうした活動に取り組まれるきっかけはどこにあったんでしょうか?
僕は、沖縄の読谷村というところの出身なんです。沖縄戦のときに米軍が上陸したポイントなので、あちこちに「戦争」にまつわる場所があります。戦争中に住民たちが避難した自然壕のチビチリガマやシムクガマ(※)、あと今はもうなくなりましたけど、「象の檻」と呼ばれた米軍施設の楚辺通信所もあった。国民体育大会での日の丸焼き捨て事件もあったし、とにかく戦争の問題、基地の問題を絶えず身近に意識せざるを得ない環境だったんですね。
それと、田舎の何もない村ではあるんですけど、僕が小学生くらいのときからリゾート開発が始まって、見慣れた光景がどんどん開発されて変わっていってしまった。そういうことに対してもずっと違和感を抱きながら育ったんです。ただ、高校生くらいまでは、本当に「漠然とした」違和感で、問題意識というところまでは行っていなかったですね。
※チビチリガマ、シムクガマ…読谷村にある自然壕(ガマ)。ともに米軍上陸後、住民の避難場所となった。シムクガマでは住民全員が米軍に投降して生き延びたが、チビチリガマでは「米軍の捕虜になったら残虐な殺し方をされる」という教育を受けていた住民らが「集団自決」の道を選び、逃げ込んだ約140人のうち85人が命を落とした。
──音楽を始めたのはいつごろからですか?
高校生くらいのときに、モテたくてギターを始めたみたいな感じです(笑)。もちろん、普通に恋愛の歌とか歌ってましたよ。
──それが少し変わってきたきっかけは…
高校を出た後、沖縄大学に進んで、沖縄の歴史や政治的な立場について、いろいろ勉強することができたんですね。さらに、ちょうどそのころに2000年の沖縄サミットがあったんですが、これがまさに「アメとムチ」の構図だった。サミットが開催されて、守礼の門を絵柄にした2000円札が降ってきて、その一方でサミット主会場になった名護市では、ちょうど会場とは反対側にある辺野古の海岸を基地建設のために埋め立てるという計画が進みつつあって…。
そういう状況と、自分の抱えてた違和感と、大学で学んだこと。この三つが、そのとき初めて自分の中でつながったんです。「ああ、こういう歴史とか経緯とか仕組みの中で、沖縄はいまこういう状態にあるんだな」と。同時に、初めて問題を自分のこととして、「何かしなきゃ」というふうに思えた。それまでは、沖縄の島の中のことではあっても、どこか他人事というか、自分の問題としては捉え切れていなかったのが、「これは、俺たちが変えないと相当まずいことになるんじゃないか」と感じたんですね。沖縄や基地問題などのテーマを音楽で表現するようになっていったのは、そこからです。
サミットのときにも、喜納昌吉さんがサミット日程にあわせて辺野古で「ニライカナイ祭り」というイベントをやったので、僕らもバンドで参加させてもらいました。辺野古の問題についても、そのときに初めて「出会った」というか。それまでは新聞やテレビだけで見ていたのが、初めて自分も「当事者」なんだ、と感じて、それがその後の活動のきっかけにもなりましたね。
──ピース・ミュージック・フェスタ! との出会いは?
その後も、基地問題をテーマにした曲を作ったり、それをイベントで歌ったり、といった活動はしていたんですね。2004年に沖縄国際大学で米軍ヘリ墜落事件があったときには、ラッパーのカクマクシャカと2人で「民のドミノ」という曲を発表したりもしました。
ただ、その中でずっと感じていたのが、そういうテーマで音楽をやっている人が、同世代の中にはほとんどいないということ。「辺野古」とかをテーマにしたようなイベントだと、出てくるのはいわゆる「運動」世代で、音楽もフォークなどが中心。「集会」とか「デモ」とか、若い人たちにとってはちょっと参加しにくい雰囲気だった。そうじゃなくて、若い人をもっと巻き込んでいくにはどうしたらいいんだろう? と考えていたときに、辺野古で第1回のピース・ミュージック・フェスタ! が開かれるんです。
──2006年ですね。最初は那覇の若者たちが主宰したレゲエイベントだったとか。
そうです。僕はそのときは客の1人だったんだけど、大雨の中、辺野古の浜で600人くらいの若者が踊ってるのを見て、すごい感動したんですね。「なんだ、若い連中を集めることはできるんじゃないか」と思って。
同時に、自分たちとは別のところから、同じようなことをやろうという動きが出てきたのも嬉しかったし、そこから「僕たちも合流したい」という話をして。次の年から僕と伊丹(英子)さんが実行委員に入って、今に至るという形です。
◆ジャンルを超えた「超党派」イベントを
──そのピース・ミュージック・フェスタ! も今回で5回目。今年は2日間ということで、参加するミュージシャンの数も一気に増えたし、ジャンルも幅広いですね。
そうですね。音楽のジャンルで括るタイプのイベントではないので…。一つのテーマを共有しながらいろんなジャンルの音楽が集まる、音楽の県民大会超党派みたいな(笑)感じでやろうと思ってます。3分の2が沖縄県内で活動してるミュージシャンで、3分の1は県外から。沖縄系移民の2世3世で結成された民謡グループも来沖してくれますよ。
──初参加の顔ぶれも多いのでは?
多いですね。僕らのこれまでの活動を見て「一緒にやりたい」と言ってきてくれたミュージシャンもいるし、こちらから「出てほしい」ってアプローチした人たちもいます。
例えば、THA BLUE HERB、B.I.G. JOE、それからOLIVE OILっていうヒップホップのミュージシャンたち。今年の7月に、彼らが普天間の問題をテーマに共同制作した「MISSION POSSIBLE」っていう曲が発売されて、すごく話題になったんですね。それで「ぜひ出て欲しい」ってお願いして。
あと、FAKE KINGZというヘヴィロック系のグループも今回初めて参加してくれることになっているんですが、彼らは普段、米軍基地で米兵相手にライブをやってるグループなんですよ。
──そうなんですか。その彼らが「基地はいらない」を掲げるイベントに出演する…。そこにはどういう思いがあるんでしょう。
直接「どうして?」と聞いたわけじゃないからわからないけど、彼らもウチナーンチュだし、基地とか戦争とかに対して「嫌だ」という思いはもちろんあると思うんですね。だけど、僕もいつも感じることだけど、米兵1人1人は、ライブハウスで会ったりとかすれば、僕らと同じように音楽が好きな「いい奴」なんですよ。彼らは、そのことも肌で感じてるわけで。だからこそ、彼らともっといい形の関係性を持っていくことができないかな、という思いはあるんじゃないかと思います。
「米軍基地はいらない」というと、アメリカ人全体を攻撃してるかのように誤解されることがあるんですが、もちろんそういうわけじゃない。個人としてのアメリカ人が嫌いなわけじゃないし、その人格を否定しているわけじゃないんです。その意味でも、彼らが出演してくれるというのはすごく大きいと思っています。
◆辺野古の海から世界が見える!
──ステージのほかには、どんなプログラムを?
フードコートは例年も出してましたが、ほかに今回は新しい試みとして、音楽ステージとは別にトークイベントのステージも設けようと考えています。あと、子どもたちが遊べるスペースや、絵のワークショップやシーサーづくり、カヌーなんかの体験ブースもつくりたいなと。2日間、「辺野古」という場所をまさに体感できる、そしてサブタイトルでもある「辺野古の海から世界が見える」を1人ひとりが感じられるようなイベントにしたいと思っているので、ぜひゆっくり楽しみに来てほしいですね。
──ちなみに今、実行委員は何人くらいでやっているんですか?
5人くらいです。ほぼみんなミュージシャンなんですけど。
──それでこれだけの大きなイベントを、というのは相当大変では?
やることは膨大だし、お金になるわけじゃないし、正直なところ大変です(笑)。でも、何かきっかけさえあれば、自分も何かやりたい、こうした問題にかかわりたいというアーティストは実はたくさんいると思うんです。だけど、だからって誰もが主催側になれるわけじゃないし、だったらその部分は僕たちが頑張るからみんなやろうよ、という感じですね。
──地元のボランティアスタッフも増えているとか。
毎回100人くらいが手伝ってくれるんですが、今回は特に、地元の沖縄の人たちがすごくたくさん動いてくれています。
基地問題がテーマのイベントというのは、沖縄ではとても難しいところがあるんです。やっぱりみんな、家族とか友人とか職場の人間関係とかのしがらみがあって、表立って何か発言したり、参加したりというのは難しいんですね。
でも、昨年からの普天間基地移設をめぐる一連の流れの中で、初めて沖縄の中でも、基地問題を話題に出せるような空気ができてきた。ずっと「まともに取り合ってもらえるわけがない」というあきらめのムードがあったのが、「もしかして、本当に基地がなくなるのかも?」という期待が生まれてきたんですね。もちろん、結果として県外移設は実現しないままここまで来てしまったわけだけど、出演者も含め、「一緒にやりたい」と言ってくれる地元の人たちがすごく増えたことは、とても大きいと思っています。
──そうして5年間、輪を広げながら継続してきたというのはすごいですよね。
まあ、実は、やめられるものならやめたい、という思いもあるんですけど(笑)。これは伊丹さんや、スタッフみんなの一致している考えですが、こんなフェスをやらないでいいならそのほうがいい。「ピース・ミュージック・フェスタ!」なんていらない世の中にするのが本当は最終目標なんですよね。でも、今はまだとにかく「やらざるを得ない」状況なので、なんとか頑張ってやっていきたいな、と。
ただ、ずっと赤字赤字で来ているので、今回大赤字を出しちゃったらさすがに多分次はないかなあ、とも思っていて(笑)。その意味でも、1人でも多くの人に来てもらいたい。あと、資金集めのためのTシャツも販売してるので、ぜひ協力していただけると嬉しいです!
『Peace Music Festa!辺野古2010 〜辺野古の海から世界が見える〜』
2010年 10月 30日(土)・31日(日)
場所: 沖縄県 名護市 辺野古ビーチ
OPEN 11:30 START 12:00 END 20:00(雨天決行)
料金: (一日券)大人/前売 2500円 当日 3000円
高校生/前売 1000円 当日 1500円
*
出演陣の顔ぶれは、ピース・ミュージック・フェスタ! オフィシャルブログでチェック!
現地まで行くのはどうしても無理!なあなたは、
Tシャツ買って応援しましょう。 公式サイトでカンパも受け付けています。
そして、もう1人の実行委員である、
「ソウル・フラワー・モノノケ・サミット」の伊丹英子さんのインタビューはこちら。
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