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2010-10-07up
政権交代から1年! 「記者会見フルオープン化はいつ?」座談会(大川豊さん×岩上安身さん×畠山理仁さん)
「記者クラブ」が、ない「普通の国」になる日はくるのか?
その1:「オープン化」最初のブレイクスルーは「政権交代」
2009年8月30日、総選挙の結果、政権交代が行われました。フリーランス記者として会見場で初めて、畠山理仁さんが岡田克也外相(当時)に質問したのが9月18日。あれから約1年と1ヶ月。「メディア」や「記者クラブ」、そして「永田町や霞ヶ関の言論」をめぐる環境はどう変化したのでしょうか? 記者会見に精力的に出席し、取材を続けている3人の「フリーランサー」による座談会です。なお収録は、まだ鳩山政権だった5月21日に行われました。掲載が遅くなりごめんなさいっ。
大川豊●おおかわ・ゆたか 大川興業総裁。1962年東京都生まれ。1983年、明治大学在学中に大川興業結成。1988年、自ら代表取締役となり大川興業株式会社を設立。日本三大総裁(日銀総裁、自民党総裁、大川総裁)の一人としても有名。北朝鮮やイラク、9.11直後のアメリカなどに出向き、現場主義をまっとうし、“日本のマイケル・ムーア”と称される。舞台公演では脚本・演出もこなし、最近では“世界初の暗闇演劇”『Show The Black』シリーズで演劇界に一石を投じている。
畠山理仁●はたけやま・みちよし 1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中の1993年より週刊誌を中心に取材活動開始。1998年、フリーランスライターとして独立。興味テーマは政治家と選挙。米国大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選など世界の選挙も取材。大手メディアが取り上げない独立系候補の活動を紹介した『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社刊)では取材・構成を担当した。twitterでは、 @hatakezo で日々発信中。現在「永田町記者会見日記」を連載中。
岩上安身●いわかみ・やすみ 1959年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、出版社(情報センター出版局)に就職して編集者となる。退職後、週刊誌記者を経て、1987年よりフリージャーナリスト。1989年から94年まで6年間かけて、旧ソ連・東欧圏を取材し続け、1996年にソ連の崩壊とロシアの民主化の実装を描いた『あらかじめ裏切られた革命』(講談社)を出版。同年、第18回講談社ノンフィクション賞を受賞。2000年10月からフジテレビ系『とくダネ!』のレギュラーコメンテーター(現在も継続中)。twitterでは、@iwakamiyasumiで日々発信中。オフィシャルサイト(岩上安身サポータークラブへの登録やカンパはこちらから)
編集部大臣の記者会見をなぜオープンにしなくてはいけないのか、については、畠山理仁さんに連載『永田町記者会見日記』をスタートさせるにあたり「なぜ私は記者会見に出るのか」で、書いていただきました。日本独自の「記者クラブ」が抱える問題についての世間の注目も徐々にではありますが、以前とは比べられないほど、広がったように思いますね。やはりそれは、ひとつには政権交代があったということ。それから、ツイッターであったり、iPhoneやUstreamなどの、テクノロジーの進化によるものもありますね。
岩上情報革命的なことですね。
編集部 一次情報を得た取材者が、そのまま消費者というか読者に伝えることができるツールが整備されたことは、大きかったと思います。
岩上そう。ちょっと前までは、僕らみたいなフリーのジャーナリストやライターは、雑誌に記事を書いて載せるか、本を書かなければ存在しないも同然という状況だった。自分の意に沿わなくても、出版社の意向に従わなくては存在できなかったわけです。もしくは、自分が資本を投じてミニコミとか同人誌を作ったり、自費出版するとかね。それが、ブログなどインターネットを通じて、自分の伝えたいことを無限に多くの人に発信できたり、どこからでもライブで動画を配信できたりするような環境が整ったというこの一歩は、凄いことです。でも、それだけじゃしょうがない。やっぱり「権力の塀の中」というか、城の中に入り込めないと生の情報は取れない。永田町の記者会見のオープン化というのは、その一端が開いたということですね。まだ一部だけど。
編集部自公政権が続いていたら、オープン化はどうでしたか?
岩上ありえないでしょう。だって、全部一体のシステムだもの。向こうからすれば、開放する必要性がない。考えたこともないはず。永遠の与党の自民党と官僚と財界と記者クラブメディア。これらが一体になって既得権をもった支配層組織を結成していたのですから。
畠山自民党の総裁会見も政権交代前は開いていませんでしたからね。今、野党になって人が来なくなったら突然、「フリーの人もどうぞ」って言われて。それで最初の記者会見の時に行ったんですよ。そこで、「何で今まで記者会見をオープンにできなかったんですか?」って谷垣さんに聞いたら、「わたくしはその質問に答えられるほど(記者会見を開くことについて)熟慮したわけではありません」なんて答えるんです。ほんっとこの人、何も考えてないなと思いましたね。(笑)
一同:(笑)
編集部畠山さんは、『永田町記者会見日記』の連載が始まるずっと前から、いろいろな省庁に対して「フリーランスも記者会見に出られますか?」と聞いてまわっていたそうですね。
畠山そうです。10年前に『通販生活』の読み物記事の一つで「『通販生活』は記者会見に参加できるのか」という企画があったんです。その時に編集者がいろいろ問い合わせてくれたのですが、どこの省庁も「質問権あり」の立場では入れなかった。結局、国交省に「オブザーバー」なら入れるということでした。
編集部オブザーバーで記者会見に?
畠山参加できるけど質問できません、見ることはできるけど、写真撮影や録音もダメですって。じっとしててくださいね、みたいなこと言われて。
大川 社会科見学ですよね。
畠山そんな時代でした。
編集部記者会見のオープン化については、民主党の「マニフェスト」に書いてあったんですか?
畠山民主党のマニフェストには、「記者会見をオープンにする」という項目は、そもそも入っていません。ただ、昨年の政権交代前の民主党マニフェスト発表会見や、その前の民主党本部での記者会見で、ジャーナリストの上杉隆さんや神保哲生さんが質問をしているんです。その際の答えは「当然なことであって、マニフェストにわざわざ書き入れるまでもない」という答えでした。公の場である記者会見で、神保さんや上杉さんが「じゃあ、約束ですよ」と言質をとったわけです。だからもう政権交代すれば、官邸をはじめ各省庁の記者会見は全て開くんだと思って、永田町に出かけて行きました。ところがクラブの反対を押し切って開けたのは岡田外相だけでしたね。亀井静香さんも自分で開けようとした。だけど、財務省の記者クラブが絶対に許さない、会見室も使わせないって言い張ったんです。会見室は省庁のもので、記者クラブの所有物じゃないのにですよ。総務省なんかでは、彼らが役所から賃料無料で提供されている記者室も「記者クラブ以外立ち入り禁止。撮影禁止」って書いてあるんです。
岩上「記者クラブ」がいろいろな既得権益を守る様は、ある意味、北朝鮮よりも秘境だね。国民の血税が投入されているのに。
畠山記者クラブは本当に秘境。だって記者クラブ員以外入れないわけですからね。しかも記者会見の告知も記者クラブ内の掲示板でしか行なわれなかった。ある時、会見場に忘れ物をして、幹事社の人の所に「すいませーん、ICレコーダー落ちてませんでしたか?」って聞きに行ったんです。いったい記者クラブの中はどうなってるのか興味がありましたからね。各社ごとにブースが分かれていて、なんか基地っぽい感じになっていました。
岩上よく彼らは、汚い小部屋がどうのこうのっていうんですよ。でもね、普通の企業のオフィスと変わりませんよ。
大川 それぞれの新聞社は、使用料みたいな金は払ってるんですか?
畠山払ってないです。
大川 例えば、記者クラブ専用のコーヒーメーカーやジュースの自販機が置いてあるとか?
畠山自分たちが飲み食いする分は払っているようです。でも、昔はそういう負担もなかったと聞きました。ビールメーカーがやってきて、冷蔵庫にビール入れていって記者は飲み放題だったところもある。
大川 ええっ! いいですねー!
畠山昔はそうだったと聞いたことがあります。
│次へ >>│
*
記者会見会場でよく顔を合わせるという3人ですが、
意外にも「記者会見」や「記者クラブ」といったテーマで
じっくりと話をするのは、はじめてだとか。
本日より8回連続、毎日更新でお送りします。
次回は、永田町にある秘境「記者クラブ」について。
お楽しみに!
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