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2012-12-13up

この人に聞きたい

金子勝さんに聞いた

脱原発こそが、日本を救う経済政策

選挙の大きな争点の一つが「景気対策」です。15年以上つづくデフレは、格差を助長し雇用を減らし、若い人たちの就職はますます厳しくなり、閉塞感がただよっています。日本社会が沈没しないために「デフレ脱却」「景気回復」しなければいけないのは、誰の目にも明らかです。しかし、話題になっている自民党の「経済政策」でそれは可能なのでしょうか? 選挙直前に金子勝さんに緊急インタビューしました。

かねこ・まさる
経済学者。慶應義塾大学経済学部教授。専門は、制度経済学、財政学、地方財政論。経済理論学会所属。著書に『新・反グローバリズム 金融資本主義を超えて』(岩波現代文庫)、『「脱原発」成長論 新しい産業革命へ』(筑摩書房)、『失われた30年 逆転への最後の提言』(NHK出版)など多数。オフィシャルブログ:金子勝ブログ

過去の反省のない自民党の脱デフレ・景気対策は小手先だけの経済政策
編集部

 最新の世論調査などによると、投票したい政党を選ぶ理由の第1位が「景気回復」で、原発問題は第3位になっていました。また、安倍晋三自民党総裁がマスコミの前で語る「これまでの次元をこえた大胆な金融緩和でデフレ脱却に挑む」という言葉が注目を集めていますが、彼らの政策でデフレ回復は期待できるのでしょうか?

金子

 そもそも、脱原発と景気対策などを別に語ったり、世論調査の質問項目を分けることが間違いなんです。それについてはあとでお話しするとして、「日銀の改正法」などを言い出し、「日銀に物価目標達成の責任を負わせるべき」、というようなことを言ってるのは、安倍さんだけでなく、日本維新の会の政策ブレーンを務める竹中平蔵氏を始め、他にもいますが、ほとんどが小泉「構造改革」の失敗組と重なるんですね。自民党時代に行った金融緩和政策と市場原理主義、そしてIT戦略の失敗という組み合わせが、猛烈な格差社会とデフレを生んだんです。
 理由は、自分たちの生活状況を考えればわかると思いますが、「構造改革」による雇用流動化政策で雇用が不安定になり非正規雇用が増えて、給料が下がっているのに、モノをジャンジャン買おうってなりますか? 我慢しておこう、生活費を切り詰めようということになるでしょう。量的金融緩和はこの10年間ほどずっと続けてきていました。96年からほぼずっとゼロ金利です。日銀がいくらマネーを供給しても、日銀にある各金融機関の当座預金に積み上がっていくだけです。要するに過剰準備になっている状態です。なぜか? 不良債権処理に失敗して長引くうちに、やがて産業や地域の衰退が進んでいき、雇用の解体で消費も停滞してしまうと、銀行もどこに投資、融資すればいいのか、「信用」でお金を融資する先がなくなってしまっている、というのが現状なのです。こういったことの原因を作り出した、すなわち「構造改革」をあおってきた張本人たちが、責任のがれのためにデフレを全部日銀のせいにしている、という無責任体制が事の本質なんだと私は考えています。

編集部

 日本は先進国で唯一、15年間もデフレが続いているそうですね。

金子

 その間、信用が回復していませんからね。経済というのは、投資したり融資したり消費したり、そしてローンが膨らんだりしていかないと拡大していかないものです。そもそもデフレを作り出した人たちが、自分の責任をとらないで、日銀のせいだと言っているわけです。わかりやすく言えば、結核にかかっているのに、風邪薬を与え薬がきかないからと、風邪薬をもっと飲ませなくちゃいけない、といっているようなもんなんです。

編集部

 治療法が間違っているわけですね。

金子

 彼らは広がった格差を是正しなくてはいけないとか、一言もいわないでしょう。で、景気が悪いのは日銀のせいだといっている。ただ、これはわかりにくいでしょうね。お金をどんどん刷って市中に大量に出せば、なんとなく景気がよくなると思うでしょうし。

編集部

 お金が流通し、公共事業をやれば、とりあえず回るのかなとは思いますね。

金子

 回らないんですね。ずっと金融緩和はやってきていたんです。でもデフレは続いているでしょう。この「失われた20年」はツケの先送りの繰り返しだったんですね。バブルがはじけて金融機関は不良債権を隠し、貸し渋りをし、その結果中小企業が衰退していった。これが最初の行き詰まりです。で、この状況を克服するために何をやったかというと…景気が悪くなると、公共事業をやって当面もたせる。多少よくなると、「構造改革」路線になる。また景気が悪くなると、公共事業で景気対策です。
「構造改革」論は一種の呪術のようです。「市場に任せれば、自動的に産業が生まれ、競争によって新しい企業が生まれてくる」という、「風が吹けば桶屋が儲かる」というようなロジックですね。でも現実は悲惨なものでした。小泉さんは「痛みを伴う構造改革だ。これを乗り越えれば必ず成長がやってくる」と言ったけれど、やってきたのは痛みだけ。この「構造改革」路線を引き継いでいるのが、みんなの党と維新。で、自民党はまた逆戻り路線です。「失われた20年」と何も変わっていない。このままでは「失われた30年」になります。

イノベーションなき経済成長はない
金子

 今の電機産業がなぜここまで悲惨な状況に追い込まれたのか、ということもきちんと検証をしておく必要があると思います。原因の一つはバブルの後処理の失敗でしょう。そして小泉構造改革の結果、雇用の流動化がおこり、賃金を下げ、儲かった分はみんな企業の内部留保にした。企業が成長すると、トリクルダウン(経済が発展し、富裕層が富めば貧困層にも自然と富が浸透して豊かになるとする考え方)してくるはずなんだけれど、ぜんぜんトリクルダウンが起きなかった。企業は米国型経営ということで、当面の利益を上げるために、技術開発投資を怠り、コスト削減競争に走ったわけです。で、結局、ソニーも、パナソニックも、シャープも、NECもボロボロでしょう。日本の電機メーカーって、同じものをただ作ってきたわけでなく、10~20年ごとに新しいものを開発し発明してそれを製品化してきた。ところが、経営陣がやることは、ただのコスト削減になった。その瞬間に雇用をどんどん切っていくようになったんです。製品がデジタル化されたことで、誰にでも簡単に組み立てられるようになったこともあり、人件費の安い韓国や台湾に工場を作るようになっていった。その一方で、リストラされた技術者が韓国、中国の企業などに雇われて、急速にキャッチアップされてしまったわけです。

 ではそのころ、技術革新の競争はどこで行われていたかというと、90年代にIT革命が起こっています。かつてスーパーコンピューターの世界では、ベクター型が主流でNECや日立が世界を席巻したんですね。世界一計算の速いコンピューターも日本製だったし、シェアも3割ぐらい持っていた。ところが、90年代後半から、スパコンはスカラー型に急速に代わっていったんです。でもグローバル競争とか言っていた小泉「構造改革」のときに、もう終わったベクター型でやっている東大の地球シミュレーターみたいのに何百億と使ったりしていたんですね。半導体も韓国のサムソンなどがDRAMメモリーに参入してきたのに、インテルのやっているマイクロプロセッサーに攻めていくことはしなかった。90年代に次なる新しい技術開発に参入しなくてはいけなかったのに、日本のメーカーはバブルが崩壊したから、みんな後ろ向きで、同じようなものを作り続けたわけです。
 グローバリゼーションといいつつ、世界の動向のことはまったくわかっていないからそういうことになるんです。その結果、今、クラウドという言葉があるけれども、巨大なスパコンをどんどん拡大させているGoogle、アマゾンなど――全部アメリカの企業ですね――にどんどんと情報はたまっていき、計算速度も計算コストもどんどん加速している。このクラウドと呼ばれる巨大なコンピューターシステムができると、ただディバイスを作っているだけではダメなんですね。膨大なデータを集積して、いかに人のニーズにあったコンテンツを作っていくのか、どのようなアプリケーションを作っていくのか、ということに競争の重点が移ってきてるんです。
 ソニーは世界でそういうことが起こってきていることは、わかっていた。でもソニーは、系列会社を抱えていて音楽著作権問題で守りにはいってしまった。アップルはまず音楽をネット配信できるiTunesから入っていった。つまりソフトやコンテンツの方から入ったんですね。結局、ソニーは今のネットで音楽をダウンロードさせるというビジネスモデルの先駆けを作ったにもかかわらず、アップルのipodにグローバル市場で負けてしまったんです。

編集部

 そういうイノベーションが日本企業にできなかったのは、小泉政権の経済政策と関係あるんですか?

金子

 小泉政権の政策は、市場にまかせておけばいいという経済政策だったから、結局何も手を打たなかったわけです。新しい産業を生み出し育てるためには、ある程度、戦略性がないとだめなんですよ。

編集部

 アメリカにはあったわけですか?

金子

 アメリカは、クリントン政権でゴアが副大統領の時に情報スーパーハイウェイ構想というのをたてて、その路線でこういうことが起きた。アメリカが自由競争だけやっているかというと、それはまったくうそで、アメリカはある種の「タニマチ」モデルなんですよ。例えば、アマゾンはずっと赤字が続き、ITバブルの時でもまだ不振だった。しかし、デビッド・ショーといって、情報スーパーハイウェイ政策に参画した一人で、コンピューター技師でありながら3兆円近いファンドを運用するヘッジファンド「DEショー」を経営していた人がいるんですが、彼が「このビジネスモデルは必ず成功する」と考え、ずっと赤字だったアマゾンを支え続けていた。
 そもそも投資とは、百投資して、二つか三つ、いいものができ、それで上場したら、莫大な利益がかえってくるというものなんです。Facebookもこういう「タニマチ」モデルですね。それを日本人はまったく勘違いをしていて、みんな自由競争して、自己責任でやれば、新しいビジネスがどんどん生まれてくるなんて、そんなわけないんです。で、日本はIT革命とかいいながら、ホリエモンや村上ファンドみたいな買収屋さんしか出てこなかった。

編集部

 それらの政策をやってきた政党は、自民党。

金子

 自民党の成長戦略は明らかに「バブルよ再び来い」という金融自由化路線でした。なのにその反省がまったくない。そしてまた逆戻りして、ばらまきの公共事業をやる、などと言っている。そんなことやっていたら、ゼネコンがもうかるだけでいつまでたっても新しい成長産業なんて生まれてきやしない。原発事故やトンネル事故をみてもわかるように、補修するのがせいいっぱいの国なんですよ。老朽化して壊れかけている国なんですよ。
 格差が開き、新しい産業が生まれず、雇用ができなくなって若い人たちがぼろぼろになって、デフレも続いたまま。リーマンショックに結びつくような、金融の自由化ばかりやってきた。それがこの「失われた20年」なんです。

この国のリーダーの無反省、
無責任ぶりが経済をダメにしている
金子

 この国のリーダーがいかに無反省で無責任かというのは、今回の原発事故で決定的になりましたね。考えてみれば、不良債権問題から原発事故にいたるまで、誰一人責任をとっていない。反省がないから、検証もできず、転換もできない。だからまた同じところにもどってくるだけです。
 規制緩和を主張する財界からして、電力・製鉄・化学など規制に守られた産業が中心で55年体制そのものなんですから、おまけに官僚がそれと結びついて既得権益を守るために規制緩和をする。笑い話としか思えない。
 政治家も学者もメディアも同じで、「偽物の改革者たち」が、自分がデフレを創り出した犯人なのに、日銀のせいにしたりする。そして自分だけが生き残ろうとする。そしてただ市場に任せろという、新興宗教のようなものを植え付けている。これらのツケが全部、今にまわってきているんです。

編集部

 でも、自民党や維新が唱える「デフレ脱却・景気対策」が人気あるのはなぜなんでしょうか? 

金子

 それは人の「もうかりまっせ」というさもしい精神をくすぐるからです。目先の株が上がればいいじゃん、景気が持てばいいじゃん、というそういうところに訴えているだけで、結局、長期の成長戦略は描けない。そこで、郵政民営化とか道州制とか、本質的でない所で何か「改革」をやっているポーズを作るんですね。

編集部

 その、とりあえずもうかりますよ、と言われ、票を入れてしまう有権者の方にも問題がないとはいえないですね。

金子

 そうです。で、そういう国は滅びていくんです。

地域分散ネットワーク型にすることで生まれうるビジネス、イノベーション
編集部

 冒頭の話にもどりますが、今、テレビでも新聞でも各政党の政策を比較する際、経済政策と原発問題は、分けて論じられていることがほとんどですね。そこがそもそも間違っていると。

金子

 そうです。そして原発をやらないと経済成長できないという言い方もされますが、まったく逆です。原発を動かし続けたら、経済成長はできません。なぜかというと、僕はブログでも書いていますが、今、日本は20世型の「集中メインフレーム型」から21世紀の「地域分散ネットワーク型」へと、転換していく過程にあります。明らかに、いわゆる分散ネットワーク型経済のシステムへと変わろうとしているんです。
 集中メインフレーム型とは、大量生産、大量販売、大量消費することで、コストを削減していくモデルです。人口が増加し経済が成長している時は、それでも物がどんどん売れていく。しかし、人口増加がなくなり経済が成長しなくなると、それだけ買う人が減り、物がはけません。こういうやり方はやがて行き詰まります。
 その典型が、スーパーです。かつては、大量に仕入れ、大量販売して、価格を下げた。それで流行ったのが、ダイエーのような大型スーパーであり、「消費者革命」とも呼ばれました。それがある時から、人口が増えなくなって、成長率が落ちてくると、巨大な複合施設を郊外に建てるようになって、30km圏内を吸い尽くすような販売方法をとるようになる。でも今はそれも行き詰まってきています。

編集部

 そういう話は全国各地で聞きますね。

金子

 その一方で、今やイトーヨーカドーよりも、セブンイレブンの方が全店舗の売り上げ規模は大きくなっています。コンビニは一つ一つは小さな店舗です。でも全国の店舗がPOSシステムで結びつき、レジスターを端末としてデータが本部の大きなコンピューターに集積されて、どこで何がどれだけ売れているかがすぐにわかる。ということは、どこの店舗で何が足りないかが瞬時にわかる。つまりニーズに素早く応えられることで、必要なものだけが仕入れられ、定価で販売できるので成り立つわけです。小規模店舗の場合は、売り上げが不安定だと、普通つぶれてしまうものですが、ネットワーク化されることで、効率がよく、小回りがきくシステムになる。こんな社会がもうすでにあるんです。コンビニを再生可能エネルギーに置き換えればいいんですね。
 それなのに、再生エネルギーは不安定だから普及が難しいとか言っているのを聞くと、頭が20年前で止まってしまっているんじゃないかと思うわけですよ。

 結局、これからそのエネルギーの新しいシステムをいかに構築するかが、勝負になるんです。再生エネルギーは、特別なことをやらなくても、電源の20%くらいまでは賄えるんです。従来型でも、コージェネレーションで効果的なガス発電と組み合わせたり、蓄電システムを取り入れたりしていけば、できるはずです。ただし、今、ドイツもこの壁にぶち当たっているんですが、その率を35%~50%にあげていこうとすると、新しい送電網のシステムを作らなくてはならない。太陽、風、バイオマス、小水力…一つひとつでは小規模で供給が不安定だったりコストが高くついたりするかもしれないけれど、それをネットワークで結びつけ、需要と供給のバランスを瞬時にコントロールできる、賢い送配電網(スマートグリッド)を開発するんですね。

 原発を立てるという集中メインフレームでは、リスクの分散ができないわけですが、ネットワーク型でひろまっていくと、リスクが極小化していくわけ。そういう仕組みを技術的にもどう突破できるのか、というのがこれからの課題。まだ始まったばかりで、次の段階にこれから日本がどんどん入っていけるかどうか、なんです。こういうシステム構築をしていくことが世界の競争の的になり、次世代で勝つことにつながるんです。
 もちろん、スマートグリッドがすぐに整わないからといって再生可能エネルギーが普及できないわけではない。スマートファクトリー、スマートハウスが集まった、スマートシティ構想など、創エネ・省エネ・蓄エネと結びついたシステムが、点や面で徐々に広がっていくんです。そこは電機産業、IT産業、住宅産業などが新しく伸びていける分野です。しかし、背後ではビックデータを集積できるスパコン、そのデータを使ってソフトやコンテンツを開発する技術者の力とそれを引き出す国家戦略が、求められている。ところが、今、日本企業は、半導体にしても、台湾企業の下請けになってしまうぐらい、衰退してきている。先ほど述べたように、小泉構造改革の時の、バブル志向の「IT革命」の失敗が今も響いているわけです。だから今こそ、新しい経済と社会システムに転換させなくてはならないんです。

編集部

 だから「スパコン」が2位ではだめだったんですね。

金子

 当面の金融緩和と公共事業とで生き延びて、先に死んでいく年寄りはいいかもしれませんが、後に残った若い人たちはどうするんですか? 原発を残すということは、新しい産業の芽もない、世界の動きからすっかり取り残された荒野に若い人たちを放り出し、このまま日本が滅びる道を選ぶ、そういう選択なんですよ。

「脱原発、もうかりまっせ」
編集部

 脱原発を言う方が、金融緩和を言うより、理にかなった経済政策と言えるわけですよね。

金子

 そうです。理にかなっています。でも脱原発を言う人は、安全性のことばかりで、経済問題と絡めて話をあまりしませんね。多くの人が、「経済性より安全を優先しよう」と言う。「福島は原発の事故を受けて、あんなにひどいことになってしまった。経済成長は多少犠牲にしても命の方が大事でしょう。だから脱原発しましょう」と。私からいえば、その論理はまったくちがう。原発をやめることは、21世紀型の経済や社会システムを作っていく転換なんです。
 福島の人がかわいそうとか、原発は事故が起きると危ないからということだけではなく、原発を続けていたのでは、そのうち日本が沈んでしまうんです。そういうロジックで、原発問題を考えていないから、経済政策と原発問題が別々のものとして扱われてしまうんです。

編集部

 マスコミの印象操作もありますけれどね。日本未来の党は、脱原発だけれど、経済政策は未知数だとか…。

金子

 どうして、エネルギーを変えることが経済政策なんだ、と言えないんだろう、とも思います。今、多くの原発反対を言っている人たちは、倫理的な見地から怒っている、それ自体は正しいことです。でも、それだけでは持続性が持てないし、多数派にもなれない。脱原発をしないと、経済からみて日本の未来はない、というところまで言っていかないとダメなんです。

編集部

 地震が起きなくても、たとえ原発事故が起きなくても…ですね。 

金子

 私は昨年の8月に『「脱原発」成長論 新しい産業革命へ』(筑摩書房)という本を出しています。私としては、10年前から考えていたことなので、今こそこの考えをみんなが理解してくれるだろう、と思ったのですが、これが思ったほどには売れてない…出すのが早すぎたのかな(苦笑)。

編集部

 成長なんてしなくても、いいじゃない、という考えもありますね。 

金子

 これだけ若い人の雇用の場が失われている現状があって、そんなことを言う人の神経が私はわからない。結局、それは公務員だったり、大学の先生だったり、年金生活者だったりなんです。自分は困っていない人の発言だと思います。「経済成長」という言葉が嫌いなら、「みんなが働ける場所を作ろう」でもいいですよ。バブルのような成長を言っているわけではなく、みんなが生業を成り立たせることができるように、環境にやさしい方法で、経済はちゃんとまわしていこうよ、と言っているのです。イノベーションは、絶対に必要です。私は江戸時代にもどりたくないし、清貧の思想は好きではないですよ。

 原発産業に代表されるような、集中メインフレーム型の経済システムはもう断末魔の状況にあります。脱原発は、単に地球環境のことだけではなくて、経済や社会も持続可能にするものなんです。ビジネスチャンスが生まれ、イノベーションが生まれるんです。スマートグリッドが新しいインフラになり、皆が電気を作って儲けることができる。耐久消費財もスマート化していく。たとえば、電気自動車の普及で新しい技術開発の余地は多いし、食べていける人が増える。スマートハウスで建築や改修の需要が増え、住宅メーカーや電機メーカーの人たちの雇用が増える。そうやってこれからの若い人たちが食べていくことができる機会を増やすことです。

編集部

 二者択一ではないですよね、利益ばかりおっかけるのか、清貧を選ぶのか? ではない。

金子

 自民党、維新の会、みんなの党が、有権者をくすぐっているのは、「とりあえずあなた個人はもうかりまっせ」ということなんです。自己責任論もそうですね。「これがリアルな社会の論理だ」といっているわけです。しかしこれからは、社会に貢献することで生業を成り立たせていくような公共的な思想の入った資本主義が大事になっていく。そのスタンスに立って「脱原発はもうかりまっせ」なんです。

編集部

 なるほど。でももう選挙まで日がないですね。「脱原発はあなたも、社会ももうかりまっせ」を広めていくことにします。


(構成 塚田壽子)

小泉構造改革時代やバブル時代へ回帰するのではなく、
未来をみつめた「イノベーション」は必須であり、
その中心にあるのは「脱原発」です。
私たちは次の選挙で間違えてはいけません。

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