私は単純に、軍隊を持つことが即、防衛につながるのか、という素朴な疑問があります。
まず、日本は戦後60年間、他の国から侵略されていないという事実があります。それが自衛隊の存在によってなのか、それとも外交的な努力なのか、あるいは、これは非常に楽天的な予測ですが、もしかしたら憲法9条がある国だからなのか、正確な答えを出すのはむずかしいでしょう。
ですが、これまで侵略されていない理由を正確に把握せずに「軍隊さえ持てば、日本は今よりも安全になる」と結論づけるのには疑問を感じます。
現在の日本は、少なくとも“他国やテロ集団に攻撃される可能性が極めて高く、早く軍隊を作らなければ大変なことになる”というような状況ではありません。
そもそも今、日本をどうしても侵略したいと思っている国などあるのでしょうか。海外でテロが起こるたびに、地下鉄のゴミ箱が撤去されたりしますが、私には、日本が思っているほどには、どこかの国やテロ集団が日本を本気で攻撃しようとしているとは思えないのです。
もちろん、仮に日本が攻められたとして、ずっと攻撃され続けて被害が拡大してもいいとは思いません。
しかし、逆にアメリカの圧力で軍隊を持ち、日米同盟がより強化されることで「そうか、日本もやる気なんだな」「またアメリカの言いなりになったな」とテロの標的になるという可能性も、ないとは言えないのではないでしょうか。
軍隊を持つことで安全が高まるというのなら、これだけ高まるという具体的な数字を提示してほしいのです。それなしに、軍隊さえ強化すれば安全だ、というのは、いまひとつ理解できません。
かといって、それでは自衛隊を解散しさえすれば、日本は世界から「そうか、そこまで戦争がいやなのか」とあたたかく見守ってくれるとも思いません。
しかし、自衛隊が今あれだけの規模で存在していることが、果たしてどこか日本を侵略しようともくろんでいる国(本気でそう思っている国があるかどうかわかりませんが)に対して、完全な抑止力となっているのでしょうか。
それを正確に検証することは非常に難しいと思いますが、ではせめて、現在の世界情勢の中で「○○国はこれだけの軍備をしていたから、△△国からの侵略を未然に防ぐことができた」とか、「□□国は××国を侵略しようと思っていたが、これだけの軍備をしていて強そうだったのでやめた」といった例をいろいろと示してもらいたいと思います。
私は理念ではなく合理的な理由で、軍隊を持つことの有効性に疑問を持っています。「軍隊を持てばこういう勘定になって、これだけお得ですよ」と具体的に提示されない限り、自衛隊を自衛軍と認知して明文化することが日本を100%安全にするとは思えないのです。