マガジン9
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Q1日本の防衛の巻
Q2自衛隊の存在の巻
Q3武力行使と国際貢献の巻
Q4日米同盟と集団的自衛権の巻
Q5日本の安全、どう守る?の巻
Q6.北朝鮮の脅威と日本の防衛の巻
憲法9条Q&A
Q1.日本防衛の巻
きくちゆみさん香山リカさん渡辺一枝さん斎藤駿さん
他国が侵略してきたとき、あるいは他国の過激派がテロを仕掛けてきたとき、国民を守る軍隊がなかったら、どうするんですか。自衛隊を軍隊(自衞軍)と認知して憲法に明文化するのは当り前でしょう。9条を変えないと主張する人たちは最小限の自衛権も認めないということですか
私はこう答える
きくちゆみさん
'05-12-28UP
顔写真 きくち・ゆみ
グローバル・ピースキャンペーン呼びかけ人、国際コーディネーター。
1962年東京生まれ。お茶ノ水女子大学文教育学部卒業。
マスコミ、米銀勤務を経て90年より環境問題の解決をライフワークに。98年から千葉県・鴨川市で自給自足の暮らしを実践。農繁期は農業のかたわら著作・講演活動、農閑期の冬は平和活動のために渡米という生活を続けている。

攻められたらどうしよう、と思うなら攻められない国になればいい
その国にとってかけがえのない相手に
  まず第一に、誰が攻めてくるんでしょうか。
  よく北朝鮮や中国を挙げる人がいますが、私はそのような人にはまず「歴史をよく見てほしい」と言いたい。

  日本はこれまで、攻められたことなんかないんです。日本が攻めていき、人を殺していた。過去に悪いことをして後ろめたい人は、過剰防衛したがるんです。後ろめたいから、報復されたらどうしよう、と思う。
  「攻められたらどうしよう」と思うなら、攻められない国になることです。その国にとってかけがえのない相手になればいい。

  たとえば北朝鮮は、日本からおカネをたくさん得ている。日本のカネなしには生きられない国だから、攻撃するなんてことはありえないでしょう。テポドンを一発命中させたとしても、それから軍隊を大量投入して日本を掌握し、駐留し続けるだけの国力は、北朝鮮にはないはずです。国民が大量に飢えている国ですよ。「北朝鮮が攻めてきたら」というのは質問の前提が間違っていると思います。

  中国に関しては、日本は最大の貿易国です。もうすでにかけがえのない経済のパートナーになっているんですね。政治的にはぎくしゃくしているけれど、経済面や一般市民レベルでの交流という点ではとても進んでいる。これが最大の防衛ですよ。

軍備よりも貧困、差別、抑圧をなくすことが先決
  対テロというレベルでも、軍隊ではテロからは守れない、と考えるべきです。
  アメリカを見てみてください。あれだけアフガニスタンやイラクに軍隊を投入しているのに、テロは増えているじゃないですか。
  テロ組織というのは国境を超えたネットワークで、どこか一箇所や国に限定されているものではありませんから、軍事力よりも、警察力や国際司法力を使って対処したり、おカネの流れを止めるといった方法のほうが有効でしょう。

  テロの根本原因は貧困や差別、抑圧であり、これらの問題を解決しない限り、テロはなくなりません。理不尽な抑圧を受け、家族を奪われ、絶望の中で自分の命を捨ててでも思いを訴えようとテロという行動に出る。今の対テロ戦争では絶対にテロは減らない。減らすどころか、もっとテロリストを増やすことになっている。戦争がテロに加担しているのです。

  まずすべきは銃を向けることではなく、お腹をいっぱいにさせ、家を作り、学校に行かせることです。

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私はこう答える
香山リカさん
'05-10-19UP
顔写真 かやま・りか  精神科医、帝塚山学院大学人間文化学部教授。
1960年北海道生まれ。
東京医科大学卒。主著に『若者の法則』(岩波新書)、
『ぷちナショナリズム症候群』(中央公論新社)など多数。

軍隊を持つことでより安全になるというのなら、具体的な数字で示してほしい。

私は単純に、軍隊を持つことが即、防衛につながるのか、という素朴な疑問があります。

まず、日本は戦後60年間、他の国から侵略されていないという事実があります。それが自衛隊の存在によってなのか、それとも外交的な努力なのか、あるいは、これは非常に楽天的な予測ですが、もしかしたら憲法9条がある国だからなのか、正確な答えを出すのはむずかしいでしょう。

ですが、これまで侵略されていない理由を正確に把握せずに「軍隊さえ持てば、日本は今よりも安全になる」と結論づけるのには疑問を感じます。

現在の日本は、少なくとも“他国やテロ集団に攻撃される可能性が極めて高く、早く軍隊を作らなければ大変なことになる”というような状況ではありません。

そもそも今、日本をどうしても侵略したいと思っている国などあるのでしょうか。海外でテロが起こるたびに、地下鉄のゴミ箱が撤去されたりしますが、私には、日本が思っているほどには、どこかの国やテロ集団が日本を本気で攻撃しようとしているとは思えないのです。

もちろん、仮に日本が攻められたとして、ずっと攻撃され続けて被害が拡大してもいいとは思いません。

しかし、逆にアメリカの圧力で軍隊を持ち、日米同盟がより強化されることで「そうか、日本もやる気なんだな」「またアメリカの言いなりになったな」とテロの標的になるという可能性も、ないとは言えないのではないでしょうか。

軍隊を持つことで安全が高まるというのなら、これだけ高まるという具体的な数字を提示してほしいのです。それなしに、軍隊さえ強化すれば安全だ、というのは、いまひとつ理解できません。

かといって、それでは自衛隊を解散しさえすれば、日本は世界から「そうか、そこまで戦争がいやなのか」とあたたかく見守ってくれるとも思いません。

しかし、自衛隊が今あれだけの規模で存在していることが、果たしてどこか日本を侵略しようともくろんでいる国(本気でそう思っている国があるかどうかわかりませんが)に対して、完全な抑止力となっているのでしょうか。

それを正確に検証することは非常に難しいと思いますが、ではせめて、現在の世界情勢の中で「○○国はこれだけの軍備をしていたから、△△国からの侵略を未然に防ぐことができた」とか、「□□国は××国を侵略しようと思っていたが、これだけの軍備をしていて強そうだったのでやめた」といった例をいろいろと示してもらいたいと思います。

私は理念ではなく合理的な理由で、軍隊を持つことの有効性に疑問を持っています。「軍隊を持てばこういう勘定になって、これだけお得ですよ」と具体的に提示されない限り、自衛隊を自衛軍と認知して明文化することが日本を100%安全にするとは思えないのです。

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私はこう答える
渡辺一枝さん
'05-03-01UP
顔写真 わたなべ・いちえ  作家  1945年ハルビン生まれ。
東京近郊の保育園で18年間保母として働いた後、1987年からチベット文化圏への旅行を重ねてきた。著書に「わたしのチベット紀行」(集英社)、「また ひなまつり」(集英社)など多数。

軍隊を持たないということが最大の自衛手段です。
 「軍隊を持たない」ということが、最大の自衛手段です。防衛の基本は、「戦力を保持しない」ことにあります。それは、軍や兵力、武器を持たない地域への武力攻撃は、国際法に違反するからです。もしこの国際法を認めないのであれば、それこそ「世界の孤児」となることでしょう。

 今もし仮に、どこかの国が武力で攻めてきたとして、あるいはテロを仕掛けてきたとして、それに対して武力で報復したとします。相手の攻撃に対しての報復攻撃のすべてが有効になることなど、決してあり得ません。ということは、自国の民間人が犠牲になる“誤爆”は避けることができないということです。決してあり得ないことですが、もしも報復攻撃が百発百中だったとして、それで事は納まるでしょうか。いいえ、相手はなお一層の攻撃を返してくるでしょうし、そうなれば報復もまた、激しさを増さざるを得なくなるでしょう。どちらかが徹底的に疲弊するまで、武力による応酬は繰り返され、暴力の連鎖は、泥沼のように続くことになります。このことは、かつての日本の戦争時を振り返っても、また現在のイラクやアフガニスタンの状況を見ても、明らかなことです。

 そしてこのような武力の応酬によって一番に犠牲になるのは、一般の民間人たちです。とりわけ、子どもや女性、老人、障害を持った人など、弱い立場にある人たちです。軍隊は、国民を守るためにはないのです。むしろ軍隊があることは、国民を危険にさらすことになるのです。

 思い起こして下さい。かつての日本の戦争では、各地が大空襲を受けました。それらの地には、軍需工場や兵器庫があったからではないですか? 敗戦後、“満州”に取り残されてしまい、今なお「残留孤児」と呼ばれる人たちを多数生み出したのは、軍隊がいちはやく侵略地を抜け出して民間人を置き去りにしたからではないですか? 軍隊は、国民を守るためにはないのです。むしろ軍隊があることは、国民を危険にさらすことになるのです。核兵器がこんなにも開発されてしまった現代は、かつてよりもなお一層、軍事力を持つことは危険なのです。たった一発の誤爆が、数十年経ても消えないほどの深刻な被害を、人にも環境にも及ぼすのです。

 私たちに今必要なのは軍隊や兵器ではなく、異なる文化、価値観を持った人たちと互いの相違を認め合いながらの、徹底した話し合いです。言葉を尽くし、誠意を尽くした話し合いです。懐疑心や軽蔑や憎しみを捨て、心を開いて話し合う、国をあげての姿勢です。

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私はこう答える
斎藤駿さん
'05-03-01UP
顔写真
さいとう・すすむ  カタログハウス代表
1935年東京生まれ。
アメリカとの戦争中、悲惨な集団疎開や
東京大空襲による実家の焼失、
タケノコ生活を経験して、戦争はもうコリゴリ。

軍備にかけるおカネを戦争未然防止対策にかける……これが、これからの時代の「防衛費」。
他国が侵略してきたらどうするか。
 現代の戦争は、兵隊さんが落下傘や船で上陸してくるのではなくて、まずは海を越えてじゃんじゃん降ってくる長距離弾道ミサイル攻撃。最近のアフガニスタン戦争、イラク戦争がそうでしたね。北朝鮮は日本を射程範囲とする弾道ミサイル「ノドン」を200発持っていると豪語しています。ホント、けしからん国だ。

 で、これを海上で叩き落とそうというのがイージス艦発射型の迎撃ミサイルSM3だけど、命中精度はいまのところ不確か。それなのに1発20億円だって(よろこぶのはアメリカのミサイルメーカーだけだ)。

 どうも日本の政府はアメリカに弱腰で困ります。九条をなくして自衛隊を「海外にも出かけられる軍隊」にしたら、アメリカ軍の一部に編入されて日本の若者たちはアメリカの国益のために働かされてしまうのではないかと心配します。「中国が脅威だから日米同盟は不可欠」というのなら、日米中同盟を結べばいいと思うのです。

 今日のグローバル化時代、他国を侵略したら、その侵略国はどうなりますか? もし北朝鮮が核をつけた弾道ミサイルで日本を攻撃したら、即日、北朝鮮は友人国の中国やロシアからも見放されて自滅してしまうでしょう。北朝鮮に侵略されて日本経済が麻痺してしまったら、とたんに中国経済も麻痺してしまうのがグローバル化ですから。

 キリのない軍事費におカネをかけていくくらいなら、そのおカネを世界の不公平や貧困(戦争の原因)の軽減化のためにふりむけていったほうが、よほど効率のいい「国の守り方」だと思うけど。

テロに襲われたらどうするか。
 テロの本質は不意打ちなので、これは自衛隊を自衛軍に変えても100%はふせげません。世界最強の軍隊を持つアメリカですら、9・11テロはふせげなかった。こちらの対策もまた、怒りや恨みがテロに結晶する以前に、怒りや恨みの原因解消につねに気を配る「心のこもった国際貢献」しかないんじゃないですか。こっちのほうがよほど現実的で効果的な「自衛権の行使」だと思うけどなあ。

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