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2012-01-25up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.115

史上最低の野田内閣の本性が見えてきた

 年末、年始から沖縄も騒々しい。まず、11月末に田中聡前沖縄防衛局長が暴言問題で更迭された。琉球新報のスクープだった。そして12月、政府は沖縄に対する2900億円の補助金を決めるや否や、辺野古新基地建設のための環境アセスを年末ぎりぎりに提出。役所の御用納めぎりぎりの朝4時に県庁の通用口から大量の資料を運び込んだ。反対派が防衛省の強引なヤリクチを批判して県庁周辺を交代で見守りをしていたからだ。結局、年内に間に合わなかった残りの資料は年明けに搬入して辻褄あわせをした。防衛省の必死さはわかるものの、コソ泥みたいなやり口に県民の支持が集まるわけがない。防衛省は沖縄県民に本気で喧嘩を売っているみたいなものではないか。沖縄防衛局の真部朗局長よ!

 年明け早々に野田内閣は改造人事をおこなった。一川防衛大臣、山岡消費者担当大臣の問責決議を受けて、国会開幕前に野党側の協力を引出すための改造だ。税と社会保障の一体改革を名目にした消費税増税のために岡田克也を副総理に指名した。本来ならば、前原政調会長を表に出すところだろうが、八ッ場ダム建設の是非をめぐって野田総理と前原政調会長の間でぎくしゃくしたこともあって、No.2に岡田を指名したものと思われる。そして、問題の防衛大臣には田中直紀が指名された。田中真紀子議員の亭主ではあるが、防衛問題に詳しいという話はこれまで聞いたことがない。

 田中直紀に決まる前には、東祥三衆議院安全保障委員長や渡辺周防衛副大臣の昇格、北沢前防衛大臣の再任も取りざたされたが、結局は田中直紀に決まった。その田中防衛大臣が仲井真知事と東京と沖縄で会談した。しかし、民主党のこれまでの防衛大臣と同じ。仲井真知事が県外移設を求めたことに対して、田中防衛大臣は「日米合意に従って、辺野古に基地をつくりたい。そのために、県民の理解を求めたい」とバカの一つ覚えのセリフを棒読みするだけだった。これまで、何人の防衛担当者が沖縄を訪れたことか。皆、全く同じセリフを繰り返すだけだった。全く智恵のない連中ばかりだ。どうせなら、田中直紀じゃなくて、外務官僚とバトルを展開した田中真紀子元外相の方が数段マシだと思うのだが、防衛大臣は防衛省の言いなりになること、親米従属であること、防衛問題に疎いことが暗黙の必要条件なのだ。一体誰が田中直紀というミスキャスト人事をやったのか。おそらく、参議院のドンでもある輿石幹事長の推薦なのだろうが、わざと防衛問題に疎くて防衛官僚の言いなりになるような人物しか選んでいない。輿石幹事長は小沢一郎にも近いといわれてきたが、これは大嘘ではないのか。でないとしても、単なる野合なのだろう。輿石と小沢では日米問題に関するとらえ方に雲泥の差がある。輿石は米国や防衛省の手先ではないのか。一連の、防衛大臣の人事を見れば、そうとしか思えない。

 いずれ、この田中防衛大臣も国会答弁や記者会見で失言や無知ぶりを発揮して、問責決議の対象になるのは時間の問題だろう。すでに、「辺野古は年内に着工」という防衛官僚の本音を代わりに漏らしてしまった。しかし、もはやそのレベルではなく、野田総理自身が今や四面楚歌の状態だ。消費増税だけを焦って打ち出したため、支持率は低下し国民の批判を浴びた。大慌てで、議員定数削減を打ち出したが、比例80削減というのは、公明党などの政党の確実な反対でうまくいくはずがない。野田総理自身も消費税増税のために努力しているという姿勢を見せるための、国民向けのパフォーマンスのつもりではないのか。国家公務員の給与削減には一切手を付けずに、財務省の操り人形では、野田総理がいくら声を大にして不退転の決意を叫んでもうまくいくとは思えない

 辺野古新基地建設のための環境アセスに関しても、地元紙は連日のように批判を続けている。防衛省が下請け会社二社に丸投げした調査書は、初めに建設ありきということがミエミエの粗雑な内容だ。ジュゴンにしても、生存の追跡確認はしているが、埋め立て工事で生態に影響はないという事をひたすら繰り返しているだけで、具体的、科学的な言及はしていない。オスプレイが発する低周波に関しても、杜撰な調査に尽きる。あろうことか、沖縄選出の国民新党幹事長・下地幹郎議員は米国まで飛んで、オスプレイの安全性が証明されたというプロパガンダをやっている。この人物は沖縄の為に働いているのか、米国の宣伝マンなのか、よくわからない。民主党沖縄県連代表代行・喜納昌吉氏が、野田総理や岡田副総理に直訴した普天間基地の嘉手納統合案にもちゃっかり便乗している。嘉手納統合案は既に消えた案ではあるが、米国議会の中では、辺野古に新基地をつくるよりも合理的であることを主張する議員もいる。しかし、そのためには基地公害で長い間苦しめられてきた嘉手納基地周辺の沖縄市、北谷町、嘉手納町の住民の受け入れ支持が不可欠であり、二万人規模の騒音公害訴訟を起こしている地元住民を説得できる可能性は限りなくゼロである。

 野田内閣は「狂っている」と表現したメディアもあったが、無定見な消費税増税といい(早くも10%では足りないとの説も出ている)、展望が全くない辺野古新基地に執念を見せたり、地下トンネルから汚染水230トンが見つかったにもかかわらず大飯原発の再稼働に意欲をみせたり、何だか史上最低内閣の本性がだんだん見えつつある。民主党の壊滅につながる解散総検挙だけは絶対やりたくないというのが野田総理の本音だろうが、これじゃ自滅するのも時間の問題じゃないのか。原発収束の先がまったく見えない中、こんな内閣で日本は大丈夫なのか。

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住民と対話することさえ放棄しているとしか思えなかった、
辺野古アセス評価書提出をめぐる一連の動き
(詳しくは琉球新報などを)
そして今度は本島北部・高江でも、
住民の意思を無視しての工事が強行されようとしています。
『大臣が代わる度に版で押したように繰り返される「沖縄県民の理解を得る」。
これが理解を得るための方法でしょうか。』(「やんばる東村 高江の現状」より)
現地からの声が重く響きます。

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岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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