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2011-12-28up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.114

「2011年を考える」民主党は自民党よりもタチの悪い政権に変貌した

 ま、何とも凄まじい一年だったという他はない。筆者が悲願としてきた政権交代は実現したものの、民主党としてはすでに鳩山、菅、野田という三人の総理が交代し、自民党よりもタチが悪い政権に変貌した。政権交代からわずか2年3か月の間に、である。その三代目総理も、就任3か月で支持率を大きく後退させ、政治力にも大きな疑問符がついている。西郷どん風の容貌ながら、中身はスケスケで政治家としての能力はほとんどゼロ状態だ。年明け早々の国会では、一川防衛大臣、山岡消費者担当大臣の問責決議可決の収拾が待っている。公約破りの消費税増税や、辺野古基地建設、八ッ場ダムの建設続行などの民意無視の難問切り抜けが待ち受けている。

 公約破りと政治的リーダーシップなき民主党政権の迷走の真っ最中に、東日本大震災による巨大津波と史上最悪の事故ともいえる福島第一原発のメルトダウンが発生した。「想定外」という言葉が乱発されたが、これは東京電力や経産省・保安院の怠慢の結果であり、原発事故ともども明らかな人災ミスである。被災者にすれば、国策に裏切られた、最悪の年だった。3・11という日付も人々の心に永遠に残る悲劇の記念日として刻印されるだろう。福島第一原発の廃炉まで40年はかかるといわれており、この原発大事故が過去の歴史として人々の生々しい記憶から消え去るまでには一体どのくらいの年月を要するのだろうか。気が遠くなる話だ。

 大震災、原発事故にまつわる悲劇はいくら語っても語りつくせないだろう。年末になって各メディアも今年の総括的番組の中で、この大震災の悲劇の軌跡を繰り返し報道しているが、そのことによって、被災者の生活も心も元に戻るわけではない。「絆」を否定する気はないが、その綺麗ごとの言葉の陰で東電や政府の悪行の数々が見逃されているのではないか。年末になり原発事故の中間報告が出された。700枚に及ぶレポートは政府や東電の失敗の数々を厳しく指摘しているが、指摘された側に真剣な反省があるとは到底思えない。おそらく、時間の経過とともに、東電も経産省役人の頭の中からも記憶じたいを曖昧に消し去っていくのだろう。考えてみれば、明治維新以来の日本の官僚と政治家による政策はよく言えば試行錯誤の連続であり、常に失敗や間違いの歴史の繰り返しだったのではないか。

 今回の原発事故に対する初動対策のミスを検証していけば、日本の戦前の陸軍省が無謀な太平洋戦争に突入した時代のプロセスとほとんど変わりがない。誰も責任をとることなく、何となく時の流れに身を委ねるパターンだ。これだけの原発事故は、これまでの経験則になかったにせよ、国策に責任を持つ人々のいい加減な所業は到底許されるものではない。今回の原発事故だけでもどれだけ多くの政策上のミスがあり、それが被災者にどれだけ大きな悲劇や絶望を与えたのかは明白だとしても、東電も官僚も、政治家も基本的には他人事としか捉えていないことがよく見えた。不幸中の幸いか。

 その最大のものが、原発事故がどれだけ危険なものであり、人類史にとっても単なる一過性のものではないことを今回は思い知らされたはずなのに、性懲りもなく再生エネルギーへの転換ではなく、原発再稼働の道を模索しているのも理解不能だ。民主党は原発そのものを海外に輸出することも決めている。一体、どんな神経をしているのか。仮にベトナムに原発を輸出し、そこで収拾のつかない事故が起きた場合、日本政府はどうするつもりなのか。科学技術の粋を集めたつもりでも原発の安全性に絶対はない。仮に事故が起きれば、廃炉までに最低40年はかかるし、放射性物質は何万年も地球上に残る。核兵器が人類にとって悪魔の兵器であるとすれば、原発も人類の夢のエネルギーであるはずがない。放射性物質の危険性は人類にとってどちらも一緒である。

 原発大事故が今年最大の日本の不幸であるとすれば、いまだに原発をつくることを宣言した米国の奴隷のような日本が追従する日米同盟もしかりだ。その矛盾が集約されているのが、在日米軍基地の74%を押し付けられている沖縄だ。年末ぎりぎりになって沖縄振興予算が2900億円に増額された一方、防衛省は辺野古基地の環境アセスを沖縄県に提出する方針を決めた。県庁にはアセス提出に反対の運動グループが陣取っているため、防衛省は郵送で送りつけるという。紙切れ一枚と同じ扱いということか。防衛省も県庁も御用納めで正月休暇に入る時期である。メディアの批判を恐れているのか、それとも年を越せば、忘れやすい日本人の脳裡から記憶が消えうせるとでも思っているのか。沖縄県が要求してきた一括交付金3000億円に限りなく近い2900億円を提示し、基地対策と予算をリンクさせる可能性がミエミエだ。相も変わらぬ、アメとムチの「沖縄植民地政策」にはうんざりだ。

 鳩山元総理が政権交代前に言明した、「普天間基地は最低でも県外」という公約を潰したのは、盲目的なまでの親米国家である日本政府そのものの強固な意志と利害関係だった。鳩山政権時の北沢防衛大臣、岡田外務大臣、平野官房長官、前原沖縄担当大臣が、外務・防衛官僚に洗脳されて、鳩山総理の沖縄に対する善意と県民の期待をこぞって潰したのである。一国の総理の意志も抹殺する日米両政府の強固な利害関係とは一体何なんだ。TPPとまったく同様の構図ではないか。不可解というレベルよりも、もはやフザケタ話ではないか。少なくとも沖縄県民は絶望的なまでに、その理不尽さを押し付けられている。年末だというのに、来年の希望すら持てない状況だ。2011年、福島と沖縄で日本国家のいい加減な「本性」が剥き出しになった、記念すべき一年だったことだけは確実な歴史である。

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文中にもある「辺野古基地の環境アセス」については、
沖縄防衛局が28日朝の4時、
県庁を取り囲んだ市民らの目を盗むようにして搬入を強行するという、
にわかには信じがたい事態となりました(琉球新報号外)
福島でも沖縄でも続く、「絶望的」な状況。
2012年、それをそのままにしておかないためには?
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岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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