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2010-08-11up
癒しの島・沖縄の深層
オカドメノート No.083
やはり、沖縄はなめられている
当、「マガジン9」とも関係の深い鈴木耕さんが『沖縄へ』(リベルタ出版)という本を出した。サブタイトルには「歩く、訊く、創る」とある。沖縄を頻繁に訪れている鈴木さんがこの間、沖縄側から発せられた「沖縄の差別」や「沖縄の屈辱」という言葉に呼応して、書きあげた本だ。「訊く」という章では、大田昌秀、山内徳信、伊波洋一といった政治関係、三上智恵、謝花尚といったキャスター、普通の人々のインタビューが掲載されている。「創る」「読む」という項目も鈴木さんらしい。沖縄に対する思いが込められた内容になっており、当コラムを読んでもらっている沖縄関心派にとってはお薦めの一冊だ。
なんて調子で、人の書いた沖縄本の紹介を書いていると、「早く、君も本を書けよ」という声が何処からともなく聞こえてくる。確かに、沖縄移住して6年が経つ。その間、沖縄と東京を行ったり来たりしたものの、沖縄ではけっこう濃密で多彩な人間関係を続けてきた。政治家から経済人、文化人、メディア関係者、市井の人々まで実に幅広い。むろん、取材して本を書くために来たわけではない。人生の休養をとるという目的があった。従って、思想的には右も左も分け隔てなく、好き嫌いの感情も別にして付き合ってきた。深みのあるつきあいもあれば、浅いままでの長い交遊関係もある。
しかし、あまりにその付き合いの幅が広いために、焦点を絞るのが大変である。単なる「沖縄交遊録」ならすぐでも書けるが、やはり筆者が書く以上は基地問題、政財界、県庁、地元メディアはいうに及ばず、沖縄の歴史・文化、風土にまで踏み込んで沖縄にまつわるタブーを書く必要があるだろうと思う。そんなわけで、もうしばらく、泡盛が古酒に熟成するまで待って欲しいという気分である。いや、別に待たなくてもいいが、書く時は書くとだけいっておきたい。ナンクルナイサー(笑)。
それはともかく、沖縄にいると日々の出来事やニュースもあるし、政治課題も山積みだ。東京からの来客もけっこう多いし、地元の人々との付き合いも多い方だ。マジに次の名護市議選をどうするか、県知事選をどうするか、民主党本部と民主党県連のネジレをどうするか、辺野古新基地建設をどう阻止すべきかといった問題で相談を受けることもあるし、取材やコメントを求められることもある。今や、沖縄では何でもこなす長老のような日常だ(苦笑)。
そういえば、昨夜は、今回の参議院選比例代表で落選した喜納昌吉民主党県連代表を囲む、記者懇親会があった。地元紙だけでなく、共同通信、朝日支局、毎日支局も来ていた。県連からは、新垣幹事長、上里政調会長、花城那覇市議らも参加していた。ややもすると、喜納ワールドに入りそうな喜納代表を具体的な県知事選、名護市議選などのテーマに引き寄せ、現場記者が関心をもつように筆者が誘導役を果たす。民主党本部が辺野古新基地建設を打ち出したことで、県連と民主党本部は修復しがたい次元にまで対立を深めている。もはや、民主党沖縄県連は沖縄独自で活動するくらいの覚悟がないと、県民の支持は得られない段階にまできている。どうする民主党県連よ!
それでも、原点となる問題意識だけははっきりしている。沖縄の基地なき将来をどうするかだ。基地なき沖縄というと壮大な構想になるが、少なくとも普天間基地の代替施設は辺野古ではなく、県外・国外が原則である。嘉手納基地も即時閉鎖せよといっているわけではない。今ですら在日米軍基地の74%が沖縄に集中している。これ以上、沖縄に新基地をつくるという日米両政府の野心は断固拒否しなければならない。鈴木耕さんのいう「沖縄の差別」「沖縄の屈辱」をこれ以上、放置しないことが、東京からやってきた自分に課せられた役目だろうとも思っている。ホントは人生の休養のための沖縄だったはずだが、いつしか深入りしてしまった・・・。
つい先日、前原国土交通大臣は、中断していた泡瀬干潟の埋め立て工事を、国費を投入して再開すると発表した。沖縄市の東門美津子市長が出したばかりの見直し計画案を速攻で一発回答。自然破壊の元凶であると主張する埋め立て反対派も巨額の投資に見合う経済効果を疑問視する人々も前原大臣の大盤振る舞いにビックリ仰天である。この前原大臣は北部振興策も基地とリンクしない形での支援策を発表。そんなことあるわけがないだろう。自民党政権時代よりもタチの悪い国費のバラマキであり、辺野古に新基地をつくりたい思惑がミエミエである。効果的な運用が疑問視される科学技術大学院大学も沖縄の基地対策と連動した無駄な投資として、本来は事業仕分けの対象にすべきではないのか。少なくとも縮小か路線変更だ。二重行政のシンボル・沖縄総合事務局、沖縄防衛局、沖縄大使もいらない。岡田外相や北澤防衛大臣らの沖縄に対する上から目線による新基地押し付けも呆れるほど傲慢なヤリクチだが、前原大臣の巧妙な沖縄潰し、骨抜き作戦も要注意である。やはり、沖縄はなめられているのだ。差別と屈辱の沖縄を見て見ぬふりをする政治家や霞ヶ関の官僚は絶対許せない! これも、筆者の反権力の性ということか(苦笑)。
*
本土では、普天間問題の報道が徐々に減り、
間近に迫った名護市議選や11月の知事選についてはほとんど報じられていません。
岡留さん指摘のバラマキはもちろん、
高江のヘリパッドに関する報道などは皆無といっていい状況。
政治家や官僚だけでなく、大手メディアの責任も大きいと言わざるをえません。
岡留安則さんプロフィール
おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」
「癒しの島・沖縄の深層」
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岡留安則さんの本
「マガ9」コンテンツ
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- おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」
- 川口創弁護士の「憲法はこう使え!」
- 中島岳志の「希望は商店街!」
- 伊藤真の「けんぽう手習い塾」リターンズ
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- 伊勢崎賢治の平和構築ゼミ
- 雨宮処凛がゆく!
- 松本哉の「のびのび大作戦」
- 鈴木邦男の「愛国問答」
- 柴田鉄治のメディア時評
- 岡留安則の『癒しの島・沖縄の深層』
- 畠山理仁の「永田町記者会見日記」
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