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2010-07-28up
癒しの島・沖縄の深層
オカドメノート No.082
民主党の沖縄への数々の裏切り行為は歴史的な犯罪だ
先の参議院選挙で民主党が大敗したため、永田町には閉塞感が漂っている。参議院で過半数を大きく下回り、かつ衆議院でも再議決に必要な3分の2の議員数も確保していないことから、菅政権は単独では法案のひとつも通せない危機状況に置かれている。それもこれも、菅総理が消費税10%アップを持ち出し、政権交代時のマニフェストを大きく後退させ、普天間基地の移設先を日米合意通り辺野古に決めたことに対する有権者の反発が予想外に強かったためである。そういう事態になることを読みきれなかった菅総理-仙谷官房長官―枝野幹事長など執行部の政治センスもお粗末すぎるというしかない。しかも、落選した千葉法務大臣を留任させたことが象徴的なように、菅内閣としては参議院選挙惨敗の責任を誰も取らないままに、9月の民主党代表戦になだれ込もうという腹積もりのようだ。政治的ケジメもつけられない「死に体政権」の支持率もさらに低下しているが、総理大臣は代えない方がいいという世論は7割近い数字をあげている。これは不思議な傾向だが、これ以上総理大臣が短期でクルクル変わるという見苦しい事態は避けて欲しいという有権者の政治不信に対する絶望と諦念の複雑な気持の表れと見るべきではないのか。
ならば、今民主党がやるべきは、政権交代の原点にもどり民主党らしい画期的な政策を次々と打ち出すことで支持率を回復させることだが、現実は自民・公明政権時代の官僚丸投げに近い方向にシフトしつつある。政権交代の目玉のひとつだったはずの国家戦略局も格下げし、政治主導というお題目すらかなぐり捨てたようにしか見えない。一応、来年度予算の概算要求の方向性は出たが、先行きは不透明なままだ。多数決を行使できない民主党がとるべき唯一の方法は、連立やパーシャル連合の模索だが、現実的動きはさっぱり見えない。このままでは、菅政権はブレまくりの連続で、自ら崩壊していくしかないのではないか。政権が弱体化し、政策がブレまくることで大喜びするのは霞ヶ関官僚である。「鬼の居ぬ間に洗濯」という、官僚お得意のヤリクチの堂々復活である。
鳩山―菅内閣で防衛大臣をつとめる北澤防衛大臣もまったく防衛官僚のいいなり。とうとう石垣島、宮古島に陸上自衛隊の国境警備部隊を置く方向性を打ち出した。さらに、日本最西端の与那国島にも100人規模の軽武装の沿岸監視隊を置く方針なのだという。まだ検討段階ではあるが、自民党ですら長年やれなかったことをいとも簡単にやってしまうのは、信念も見識もない北澤大臣が防衛官僚のいいなりにハイハイと安請け合いしているせいだろう。さらに、この北澤防衛大臣が、8月末までに日米合意に基づく辺野古基地の工法などを決める予定を、今年11月に行なわれる沖縄県知事選後まで延期する意向を打ち出した。確かに県知事選の結果によっては、辺野古基地建設は不可能になる可能性がある。特に、辺野古基地建設に反対する県知事が誕生したら、埋め立て工法は知事の認可を必要とするため、政府はまったく手がつけられなくなる。
反対に、相変わらずのらりくらりしている仲井眞県知事が11月の選挙に再出馬して、自民・公明に民主党が相乗りするという三党応援体制をつくれば新基地建設の可能性が出てくる。今年1月に当選した稲嶺進名護市長は海にも山にも基地は絶対作らせないという強い意志を打ち出しているが、地元の名護市の各地域の区長や漁連会長あたりは、条件付基地誘致派である。仲井眞知事を再選させ、アメとムチを駆使して地元を分断するしか新基地を建設する方法はないともいえる。その布石として政府が狙っているのは9月のプレ統一地方選における名護市議会選挙(定数27)で基地容認派が過半数を制することである。そうなれば、基地絶対反対派の稲嶺進市長に揺さぶりをかけることが出来るという作戦だ。
さっそく、そういう動きも始まっている。23日夜に仲井眞知事と当選したばかりの島尻あい子参議院議員が、名護市の港区公民館で野党の合同激励会(現職・新人15名)に参加して、島袋吉和前名護市長、比嘉鉄也元市長、商工会や建設業者による総決起集会が開かれたのだ。島尻あい子議員は今回の参院選挙では自民党本部と対立する形で普天間基地の県外・国外移設を主張して当選した。どうせ平然と裏切るつもりなのだろう。現在は曖昧な姿勢に終始している仲井眞知事も知事当選時には辺野古沖合の埋め立て容認派だった。そういう意味では、こうした動きそのものが辺野古に新基地をつくる勢力の再結集である事は明らかだろう。
先の参議院選挙で、民主党本部に対抗して普天間基地の県外・国外を主張したものの、沖縄を裏切った民主党本部に対する大逆風もあって落選した比例区の喜納昌吉県連代表の運動員2名が名護署に逮捕された。運動員を数万円で買収した公職選挙法違反容疑である。そのうちの一人は次の名護市議選に新基地建設反対で出馬する予定の候補者でもあった。TBS「NEWS23」がスッパ抜いた98年の県知事選で稲嶺恵一知事誕生に3億円の官邸機密費が投入されたという疑惑に比べれば微罪そのものでしかないが、そこに権力サイドの政治捜査の臭いを感じることが出来る。
普天間基地の辺野古移設をめぐる最大の攻防戦は、前哨戦ともいうべき9月の名護市議会選挙に次ぐ11月の沖縄県知事選である。今のところ、民主党をのぞく基地反対派は伊波洋一宜野湾市長を担ぐ動きを見せており、再選に意欲を見せる仲井眞知事との一騎打ちの公算が高い。第三極として、下地幹郎衆議院議員(国民新党)グループが儀間光男浦添市長を担ぐ動きもある。情けないのは、辺野古移設を容認する民主党本部に恫喝されて、伊波洋一支持に動く事を封じられている民主党沖縄県連だ。普天間基地の県外・国外移設を主張して政権交代を実現させた民主党は鳩山に次ぐ菅政権も辺野古基地建設容認に「変節」したことで沖縄政界も分断されてしまった。しかも、中央に先行する形で県知事選において自民党と民主党の大連立が現実味を帯びつつある。民主党の沖縄に対する裏切り行為は歴史的な犯罪である。
*
官邸機密費にまつわる「鈴木宗男証言」は衝撃的でしたが、
民主党は機密費に関しても約束を破っています。
政権獲得当初は機密費の使い道を明らかにするような素振りを見せていましたが、
今ではうやむやに。政権運営の透明性をはかることも、
昨年の衆院選で国民が民主党政権を選んだ大きなポイントだったハズなのですが…。
岡留安則さんプロフィール
おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」
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