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2012-08-01up
雨宮処凛がゆく!
「脱原発中野も」パレードと「デモ」番組と国会大包囲。の巻
「脱原発中野も」のパレード
またしても、すごい週末だった。
まずは、土曜日。この日の午後に向かったのは「脱原発中野も」のパレード。
この連載でも何度か触れている「脱原発杉並」に触発され、お隣の中野区住民によって結成されたグループである。「中野も」の「も」が、出遅れた感を表していて常々素晴らしいと思っていたのだが、この「も」には、「じゃあ、うちも!」みたいな感じでどんどん広まっていくことへの希望が込められていることを私はこの日、改めて理解したのだった。そう、「も」って、そういう効果、絶対ある。
ということで、この日のパレードは次の予定があって途中で切り上げさせて頂いたのだが、集まっていたのは、あまりにも多彩な顔ぶれ。家族連れの姿が目立ち、お坊さんもいれば区議会議員もいるし、ミュージシャンもいれば中野らしくコスプレ姿の人も多い。そんなパレードには、子供用のお散歩カートも登場。お子様たちが風船を手にし、「歌声隊」が歌を歌い、エイサー隊が踊り、サウンドカーも登場。「中野」という雑多な人々が住む街がそのままデモ隊になったような光景に、「デモ」の進化を感じ、「時代は変わったなー」となんだか胸が熱くなったのだった。
「中野も」言いだしっぺの河井さんと
さて、この日、デモを途中で切り上げて向かったのはフジテレビ!
BSフジの「コンパス」という番組に生出演させて頂いたのである。90分の生放送番組のテーマはというと、驚くなかれ、なんと「デモ」!! 「デモは新しい国民意志の表現となるか?」ということで、「官邸前デモ」をはじめとする「デモ」について、たっぷり語る90分。しかも番組ゲストは私と毛利嘉孝氏。毛利氏と言えば、デモをはじめとする社会運動を研究している方で、デモでよく見かける。そんな、「素人の乱のデモの街宣カーの上」のような顔ぶれ二人が、フジテレビの生番組で共演するという奇跡。
番組では、今起きている官邸前行動について、いろんな識者のいろんなコメントが紹介された。驚くことに、ほとんどが肯定的な意見だった。そして番組中、視聴者にこんな問いが投げかけられた。「総理官邸前デモは、日本の社会に影響を与えると思いますか?」。
「大きな影響を与えると思う」「何らかの影響を与えると思う」「あまり影響を与えないと思う」「少しも影響を与えないと思う」。4つの中からひとつを選ぶというアンケートで、番組の最後、結果が発表された。やはり一番多かった意見は「大きな影響を与えると思う」。
フジテレビ「コンパス」スタジオで出演者の皆さんと
なんだか、胸が熱くなった。「デモ」のみを90分間語る番組が成立してしまうことを含め、時代は、確実に変わったのだ、と思った。
そうして、その翌日は「国会大包囲」!!
この日、国会が20万人もの人によって包囲されたことは周知の通りだ。
国会大包囲の日。デモ出発前集会
私はデモ出発前集会で、司会をつとめさせて頂いた。午後3時、集合場所の日比谷公園に行くと猛暑の炎天下に既に数万人が集まっていて、それだけでまた胸が熱くなった。国会包囲は午後7時から。暑い暑い昼下がり、デモ前集会にはあまり人は参加しないと思っていたのだ。でも、違った。こんなにも多くの人が、いても立ってもいられずに「脱原発」の思いを胸に集まっている。暑さで朦朧としながら司会をこなし、デモ隊を見送ったあと、到着地点でデモ隊を迎えた。するとなんと、サウンドカーは「デモ2周目」をするというではないか!! 喜び勇んで「2周目」のデモに参加し、そうして国会包囲へ。どんどん日が暮れていく中、辺りにはキャンドルが灯り、ペンライトの光が揺れる。ドラム隊のリズムと「再稼働反対」のシュプレヒコール。どこまでもどこまでも続く人の列。そしてどんどん増えていく「脱原発」を望む人たち。熱気。目の前に聳える国会議事堂。連なる警察車両と鉄の柵。
なんだかもう、この一ヶ月、現実とは思えないような光景ばかり目にしている。
だけど今、私たちは壮大な「直接民主主義の実践」のただなかにいる。
デモ!
もう、3・11以前と同じやり方じゃ駄目なのだ。あの事故で、私たちは「人任せにすること」の怖さを知った。そして「原発」というものが、戦後日本の政治の矛盾の象徴だということを思い知らされた。民主的な手続きの一切が無視され、情報は公開されず、一部の者のみが莫大な利権の恩恵に与る一方で、多くの人が見捨てられる犠牲のシステム。戦後の自民党政治的なもののすべてが詰まった「原発」という問題。
だからこそ、大飯原発が民主的な手続きなどなく、人々の声を一切無視する形で再稼働された時、人々は声を上げ始めたのだと思う。
「再稼働反対」。その言葉には、「このままこの国を再稼働させるな」という思いが込められているのではないか。官邸前で、そんな言葉を何度も耳にした。
私たちは今、この国の民主主義を、一から問い直しているのだと思う。
そして一から、この国のあり方を作り変えるという壮大な試みの中にいるのだと思う。
ここから、みんなで、たくさんの試行錯誤をしたい。それはきっと、今まで経験したことがないほど刺激的で楽しいはずだ。
官邸前
本当に毎週のように、「今まで見たことのないような光景」が、
私たちの目の前に広がっている。
それは雨宮さんが言うように、
「この国の仕組みを一からつくり変える」試みのただ中に、
私たちがいるからなのかもしれません。
もう誰も、単なる傍観者ではいられないのです。
雨宮処凛さんプロフィール
あまみや・かりん1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮処凛のどぶさらい日記」
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