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2012-04-04up
雨宮処凛がゆく!
再稼働問題と、手薄になる被災者支援。の巻
原子力安全委員会で、班目春樹氏のネームプレートをゲット! 別にいらないけど・・・。ちなみに名前の上には「茶番王」という落書きが!
いろいろなことが、いろいろなドサクサに紛れるようにして進んでいる。
新しい春を迎えるという時期、そんなことを思い知っている。
今年に入ってから、餓死や孤立死が相次いで起きている中での消費税増税の論議。「登録型派遣の禁止」や「製造業派遣の禁止」が盛り込まれなかった改正労働者派遣法。そうして、原発事故がまったく収束していない中での「再稼働」を巡る動き。
このまま行けば、すべての原発は5月5日には止まると言われている。しかし、それまでになんとか再稼働を進めたいという思惑が至るところで渦巻いている。
3月23日には、そんな現場を目の当たりにした。
この日は原子力安全委員会の臨時会議の日。大飯原発の再稼働について話し合われるという臨時会議だ。
奇しくもこの日、私は衆議院第一議員会館で記者会見をしていた。大飯原発再稼働に反対する記者会見で、出席者は宮台真司氏やピースボートの吉岡達也氏、そして「原発いらない福島の女たち」の椎名千恵子さんなど。会見では福井現地の人から電話で中継も行われ、大飯原発再稼働に対する不安の言葉が語られた。
そんな記者会見が終わったのが午後1時前。ちょうど近くで1時から原子力安全委員会の臨時会議が開催されるというので傍聴に行ったのだ。
私が会議場に着いたのは午後1時を5分ほど過ぎた頃。会場に入るとなんだか騒然とした雰囲気で、班目春樹氏など原子力安全委員会のメンバーが奥の部屋に消えていくところだった。そんな彼らを追い、柵を乗り越えていく人が警備員と揉み合いになっている。殺到するテレビカメラ。辺りに響く怒号。一体どうしたのかと思い、傍聴していた人に聞いてみると、なんと臨時会議は資料を読み上げただけでなんの議論もなく、5分で終了してしまったのだという。そんな「アリバイ」のような会議によって、再稼働が進められようとしているというデタラメさに、ただただ言葉を失った。
そうしてその日はそのまま会場をジャック。こんな会議のあり方に抗議の意味を込めた緊急集会となり、私も少し、話させて頂いたのだった。
茶番のように終わった会議に傍聴人が抗議すると、テレビカメラが殺到。
それにしても、大飯原発の再稼働は今後のすべての原発の再稼働の基準になる可能性が高い。それがどれほど適当で非民主的な手続きによって進められているか、現場に行って改めて思い知ったのだった。まるで、誰も責任を取らなくていいようなシステムを作ることの方が優先されているような。この日、記者会見で誰かが言った言葉を思い出していた。それは原発の再稼働について、海外に合理的な説明をできないこと、そのことは日本の国際的な信頼を失墜させることであること。まったくその通りで、再稼働によってそんな「恥」が世界に知れ渡ってしまうことも充分に怖い。そんな非常識は、おそらく世界にはまったくもって通用しない。
さて、そんなふうに再稼働に注目が集まる中、被災者を追いつめるような措置が4月1日に開始されたことをご存知だろうか?
それは、高速道路の有料化。3月31日まで、国土交通省は被災者が高速道路を使う際は無料としていたのだが、4月1日からは、原発事故の警戒区域、計画的避難区域、旧緊急時避難準備区域からの避難者を除いて無料措置を打ち切ったのだ。
震災から1年以上。この報道に触れて、「まぁ、仕方ないのでは?」と思った人もいるかもしれない。しかし、私たちは、多くの「自主避難者」を知っている。原発事故によって、警戒区域などにはなっていないものの線量が高く、やむなく子どもを連れて避難している母親たち。一方で父親は仕事のため福島に残り、会えるのは週末だけ、という家族の正確な数はわからない。しかし、そんな二重生活を送る人たちはたくさんいる。今までは高速道路が無料だったから会えていたものの、有料になることで会う回数が減ることは容易に想像がつく。
「絆」。この言葉は震災以来、日本を覆い尽くしているものの、国土交通省は、その家族の絆を断ち切るような措置を取っているわけである。
27日、首相官邸前で、大飯原発再稼働に反対する緊急アクションが開催され、駆けつける。内閣府担当者に要請書が手渡される。
ちなみにこの問題に対し、「原発事故の区域外避難世帯に対し、2012年4月以降も高速道路の無料措置を継続するよう求める署名」を集めている東京災害支援ネット(とすねっと)によると、いわき・東京間を月4回往復すると、かかる高速料金は3万4800円。原発事故さえ起こらなければ普通に一緒に暮らしていた家族が、なんの落ち度もないのにある日突然バラバラにされ、不便で不安な二重生活を余儀なくされ、それまでのライフプランもことごとく破壊された上、日々の家賃や生活費だけでさえ大変なのに週末に会う高速道路代まで「自腹で」というのは一体どういうことなのだろう。原発を推進してきた国の立場として、それはあまりにもひどいのではないだろうか。しかも、ここにはまたひとつの「線引き」がある。「警戒区域など」と「それ以外」という線引き。もうこれ以上、分断の火種を国が持ち込むのはやめてほしい。
ということで、なんとかしたい! という人はぜひ、「とすねっと」の署名に協力してほしい。
新しい春を迎えようとしている今、このように、いろいろなことがいろいろなドサクサに紛れて進行している。そうして高速道路問題に象徴されるように、震災や原発事故への支援の手が、人知れずひっそりと手薄くなるという動きも見られる。被災者だけじゃない。貧しい人、社会的に弱い立場の人、不安定層、そんな人々の問題が、いろいろなことが言い訳にされて置き去りにされている。
日々、あまりにも多くのことが起こるので、すべてを覚えているだけでも大変だ。しかも私はもともと難しい問題を考えると眠くなってしまう性質である。だからこそ、「無関心でいろ」と言われたら、結構あっさりそうなってしまいそうな自分が怖い。しかも春なので最近若干浮かれてもいる。しかし、そんな自分だからこそ、ドサクサに紛れて進行しようとしていることに対し、意識的に注視していようと自分に課しているのである。
もやいのパーティーで福島みずほさんと。
「いろいろなことがいろいろなドサクサに紛れて進行している」。
まさに今の状況を適切に言い表す雨宮さんのこの言葉。
そして、その犠牲になるのは結局は、
被災した人たちをはじめ、さまざまな面で弱い立場におかれた人たち。
「ドサクサ」にごまかされないように、
今こそ、なんとか一人ひとりがしっかり踏ん張るしかないのだと思います。
雨宮処凛さんプロフィール
あまみや・かりん1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮処凛のどぶさらい日記」
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