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2011-05-25up
雨宮処凛がゆく!
「原発やめろデモ」での逮捕。の巻
代々木警察署に抗議に行くと、既に待ち構えていた警察の人々。なんで待ってたんだろ?
ご存知の人も多いと思うが、5月7日の「原発やめろデモ」では四人の逮捕者が出た。
そのうち二人は「誤認逮捕」としてすぐ釈放されたが、あとの二人のうち一人は5月18日まで勾留され、もう一人 (女性)は今も勾留されているという状態だ。
5月7日、私は講演のため、名古屋にいた。そして講演を終え、サイン会をしている時、「二人逮捕されたようだ」という情報がもたらされた。すぐに新幹線で東京に戻り、デモを終えた「素人の乱」界隈の人たちと合流。みんなで二人が勾留されているという代々木警察署に行き、抗議の声を上げた。
それから2週間以上が経つというのに、まだ一人が中にいるという異常事態。これは明らかに、現在盛り上がっている「反原発」「脱原発」の動きを潰そうとするものに見えて仕方ない。
当日、私は現場にいなかったわけだが、現場にいた人たちの話を総合すると、とにかく7日の警備は「異常」「過剰」だったと様々な人が口を揃えた。当日はサウンドカーやバンドカーなど何台かの車が出たわけだが、参加者と車を分断するように警察が立ちはだかったり、だ。弾圧救援会の映像などをご覧頂ければわかるが、こんな「警備」はサウンドデモ歴5年のデモ・ジャンキーである私も経験したことがない。サウンドデモの一番の醍醐味はサウンドカーの音楽で踊って盛り上がることなのだから、こんなことをすれば大混乱することは誰だってわかる。警察だって当然わかってる。わかった上でわざと嫌がらせのような警備をし、デモ隊を混乱状態にし、そしてその混乱の中、どさくさに紛れるようにして参加者を逮捕したのだ。ちなみに現在も勾留されている女性が先に逮捕され、その女性を助けようとした男性が捕まってしまった、という流れだという。当日の目撃者によると、やはり二人とも、何もしていないそうだ。それなのに女性は「公務執行妨害」と「傷害」、男性は「公務執行妨害」で逮捕されてしまった。
私自身、今まで3度、目の前で逮捕の瞬間を見てきた。06年のメーデー、08年のG8札幌デモ、そして「麻生邸ツアー」でのことだ。3回とも、逮捕された人は警察に暴力をふるったわけでもなく、何か「罪」になるようなことをしたわけではまったくない。麻生邸ツアーに至っては、ただ道を歩いていただけだ。そのような経験から、時と場合によっては、「なんらかの意志」(G8反対とか、原発やめろとか)を持つ人がデモに参加していたり道を歩いていたりするだけで「公務執行妨害」になり得る、というメチャクチャな、本当に犯罪のようなことがまかり通っているということを痛感してきた。そして今回は、「レベル7」規模の最悪の原発事故を受けて「原発いらない」というあまりにも素朴な意思表示をしただけでの逮捕。4月10日のデモの時は、警察までもが義援金に募金したりといった「いい話」が話題となっていたのに、残念で仕方ない。今、まったくどうにかなる気配のない原発の恐ろしすぎる状況を見て、「脱原発」に向けて大きく世論が動き出している時に「原発やめろデモ」参加者を逮捕するなんて、なんらかの意図が働いているとしか思えない。
救援会メンバーの一人も「デモのイメージダウンを狙ってると思う」と語る。一方で、「警察もどうしていいかわかんなかったのかもしれない」とも語った。なぜなら、これほどの巨大デモの経験が警察自体にないからだ。
「例がないからパニックになってたのかもしれないですね。ただ、デモを小さくみせよう、盛り上げないようにしようというのは感じました」
イラク反戦で定着したサウンドデモは、街頭から大量に飛び入り参加する人が現れるため、警察がそれを嫌がっていることは知っていた。そのため、わざと「盛り上がり」を抑えるために今回のような分断をしかけてきたのだろう。
デモに参加していただけで逮捕されるという実態がある一方で、放射能を巻きちらし、土や海や空気を汚し、避難地域の人たちの生活を根こそぎ破壊し、生き物を安楽死させ、また犬や猫を餓死させた上に人々の命を危険に晒し続けている東電やそれを支える利権構造に密接にかかわっている人たちからは一人の逮捕者も出ていないという現実がある。
6月11日には、百万人規模の巨大デモが予定されている。
「警察はこれ以上過剰なデモ規制をすると後悔することになると思う」
救援会メンバーの言葉だ。私もまったく同感である。
「福島の現実を考えると胸が痛み、いてもたってもいられなくなくて来た」「原発の詳しいことはわからないけど、とにかく職場でも話せない雰囲気なので原発についていろんな人と話したくて来た」。多くのデモ参加者から聞いた言葉だ。それは誰だって持っている思いだろう。そんな素朴で真っ当な動機から今、多くの人がデモに参加している。そして、「原発と共存することが前提の社会」を根本から変えなくては、と思っている。
まだ勾留されている女性の1日も早い釈放を願いつつ、こういうことにめげずに声を上げ続けなければ、と切に思う。だって、ここで引き下がってしまったら、選択肢はただひとつ、「元に戻る」=「地震とかで原発に何かあったら大量の“原発難民"が生み出される社会そのものが維持される」ことになる。それを放置していていいのだろうか? 少なくとも私はしたくないから、6月11日、また街頭で声を上げようと思う。
雨宮処凛さんプロフィール
あまみや・かりん1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮処凛のどぶさらい日記」
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