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2010-10-13up

雨宮処凛がゆく!

第163回

反貧困世直し大集会2010。の巻

韓国から強制送還されてきた翌日の松本さんと記念の一枚。

 最近、フリーターユニオン福岡の通信紙(fuf no.11)を読み、いたく感銘を受ける言葉に出会った。

 それは熊本で結成されている「熊本労働生存組合」についての記事。組合員は3人で、2人はメンヘラ、1人は仕事に追われてなかなか活動できないというのだが、組合員の1人が、「うちの組合は、一番天国に近い組合、今年の目標は死なないことである」と述べているのだ。そんな熊本では、この夏に「今年の各地メーデーの報告会と交流会」という名目で合宿が行われ、私の周りでも参加した人がいるのだが、「天国に一番近い組合」とは、何か労働運動史に残るような名言ではないだろうか。

 「今年の目標は死なないこと」。考えてみれば、これもすごい目標である。1人でこういった目標を立ててもなかなか厳しいものがあるが、3人で、「組合」の目標として設定すれば守れるような気がしてこないだろうか。労働組合というと、団体交渉や争議といった派手な活動ばかりが注目されがちだが、こういった形で地道な「生存」活動をしているところがあるということは何か大きな希望である。

 そんなことを思ったのは、2日に氷河期世代ユニオンのイベントに出たからかもしれない。あの日、打ち上げ(駅前のただの路上でビール立ち飲み)などで就活中の学生と話す機会もあり、私が思うよりも遥かに今の学生たちが「就活」に追いつめられていることを知った。ある意味で周りみんなが「敵」「ライバル」なわけで、それぞれが非常に孤立しているという印象を受けたのだ。その中で「就職戦線」を、時には人格を否定されるような思いまでして戦わなければならないわけである。これはキツい。

 もちろん、就活は本人の人生を左右することだし無責任なことは言えないが、あまり高く目標を持ちすぎると人は知らず知らずに自分を追いつめてしまう。そんな中、北海道で「就活くたばれデモ」を主催した学生のイベント内での発言が印象に残っている。一字一句までは覚えていないのだが、要は「9時5時で、会社に魂売り渡したり全人生捧げなくてもいい就職」を求める旨の発言をしたのだ。しかし、考えてみればこれって相当「普通」の、ささやかな要求ではないだろうか? が、そんな「普通」の要求が通らなくなっているからこそ、彼は「就活くたばれデモ」をブチあげざるを得なかった。この就職難の時代、雇ってもらえるなら魂のひとつやふたつ土下座しながら喜んで売りわたせ、というのが企業側の本音だろう。その中で「未来を人質にとられた」学生たちができることは限られているわけだが、そんな中でデモを開催した勇気を勝手に讃えたい。ちなみにこの日は、この連載にも登場して頂いた増澤さんも出演したのだが、元赤軍派議長とイベントで同席して内定が取り消されたりしないものか、余計な心配をしたのだった。

 もうひとつ、就活ということで言うと、最近突然「卒業して3年以内は新卒扱い」という話が出てきたが、こういう話が出てくる割にはロスジェネ対策的なものは何も出てこないという状況に、焦りを募らせている。

 先々週、トークイベントで福島に行った時にも同世代の女性から驚くべき話を聞いた。非正規で美術の先生として働いているそうなのだが、彼女の8月の月収は「3万円」だというのだ。日給じゃなくて、月給。生活保護基準をブッちぎりで下回っている。「学校の先生」というと安定してて、女性だったら出産、子育てもしやすくて、というような話を思い浮かべてしまいがちだが、非正規の先生の間にはこのような現実がまかり通っているということに言葉をなくした。

 さて、このように、状況の厳しさはなかなか変わらない。1年以上前の政権交代の時、少なくない人たちが「何か大きく変わるのでは」と期待したわけだが、何かが変わったという実感はあまりにも乏しい。

 ということで、10月16日、明治公園にて「反貧困世直し大集会」が開催される。もちろん、私も出演する予定だ。分科会ではいろいろな政治家の人も登場するみたいだし、議員に直接意見をぶつけるもよし、似たような境遇の人たちと出会うもよし、夕方からのデモで大騒ぎするもよし、ということで、ぜひ、集まってほしい。そうしていろいろ語り合おう。

 ということで、詳細は以下で。

※10月16日、午前11時より明治公園にて「反貧困世直し大集会2010」に出演します。詳細はこちら。

里親さんが見つからず、まだうちにいる猫村さん。どんどん可愛さが増してきてヤバい・・・。

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ちなみに、去年の「反貧困世直し大集会」のサブタイトルは、
「ちゃんとやるよね!? 新政権」でした。
政権交代から1年以上、果たして現政権は「ちゃんとやった」のか?
みんなで話して、考えよう!

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雨宮処凛さんプロフィール

あまみや・かりん1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮処凛のどぶさらい日記」

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