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2011-01-11up

マガ9対談:2010〜2011 ニッポンの「明日の政治」を語ろう/中島岳志さん×辻元清美さん(その 8)
普天間問題の「落としどころ」

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無所属になった政治家・辻元清美さんと、リベラル保守を自認する政治学者・中島岳志さんの対談です。「国民世論」にふりまわされる政治家が多い中、信念と理念をつらぬく政治家が希少価値となっています。日本の政治を立て直すため今、何が必要なのか。社民主義とリベラル保守は手を結ぶことができるのか? 10回にわたる対談で明らかにしていきます。

辻元清美●つじもと・きよみ  1960年生まれ。早稲田大学在学中の83年に「ピースボート」を設立し、民間外交を展開。96年の衆議院選挙に社民党から立候補し初当選。NPO法、情報公開法などに取り組み成立させる。2002年に議員辞職後、2005年の衆議院選挙で比例代表近畿ブロックにて当選。社民党女性青年委員長、政審会長代理に就任。2009年、衆議院議員総選挙において大阪10区(高槻・島本)から当選。社民党国会対策委員長に就任。国土交通副大臣に就任。2010年5月、国土交通副大臣を辞任。7月に社民党を離党。

中島岳志●なかじま・たけし1975年生まれ。北海道大学准教授。専門は、南アジア地域研究、近代政治思想史。著書に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)、『中村屋のボース−インド独立戦争と近代日本のアジア主義』(白水社)、『パール判事─東京裁判批判と絶対平和主義』(白水社)、西部邁との対談『保守問答』(講談社)、姜尚中との対談『日本 根拠地からの問い』(毎日新聞社)など多数。「ビッグイシュー」のサポーターであり、「週刊金曜日」の編集委員を務めるなど、思想を超えて幅広い論者やメディアとの交流を行なっている。近著『朝日平吾の鬱屈』(双書Zero)

辻元  それから、普天間基地の問題についてはどう考えますか。

中島  私の理想は早期の日米安保破棄です。自主防衛のあり方をしっかりと考えるべきです。しかし、現実的にはそうもいきません。一定程度の時間をかけて日米安保見直しの方向に進むべきで、一気に破棄というのは極論でしょう。そうすると、現実的な問題解決策を考えなければいけない。
 落としどころは嘉手納への統合しかないと思います。辺野古はまず無理だし、ここまで来るとグアムも難しい。民主党が一瞬動きかけた徳之島も、米軍及び防衛省的には多分アウト。としたら、やっぱり嘉手納への統合しかない。あの案で問題になってるのは、米軍内部の対立の話なので。

辻元  そうそう、空軍と海兵隊が仲が悪いから統合はできない、というね。

中島  嘉手納統合は可能だったはず。問題は沖縄がそれを妥協できるか、漸進的な一歩と捉えられるかどうか。米軍の数は変わらない、でも辺野古への移転はなくなるし、普天間もかえってくる。そもそも自民党時代にだいぶグアムには押し戻した、それを一歩と考えられるかどうか。
 私は沖縄に過重な負担を強いるのは不正義だと思います。本当は海外移転がいいに決まっているし、可能ならば県外移転を進めるべきです。しかし、現状の地政学的な状況・日米安保の状況では難しい。一方で、普天間の危険性は深刻です。沖縄県民の精神的負担も大きい。とすれば、過渡期的な措置としての嘉手納統合を選択肢として真剣に検討すべきなのではないかと思います。
 最悪なのは、このままなし崩し的に普天間が存続し続けること。政治はどうしても「レス・ワース(less worth)」の選択をしなければならないときがあります。  嘉手納統合については、アメリカもどうもオーケーだったんじゃないかと僕は見ています。「嘉手納ならいいよ」というシグナルが、いくつかあった気がする。

編集部  例えばどういうものですか?

中島  ルース駐日米大使が何人かの日本の知識人に会っていて、僕の北海道大学での同僚である山口二郎さんとも会っています。そこでルースが「僕たちは政権が交代したということの意味は理解しています」と言ったそうなんです。つまり、政権交代したんだから、政策が自民党政権時代と変わるということは、世界の当たり前の常識として理解している、と。
 そのほかの話とも照らし合わせてみると、アメリカ側は落としどころのラインを「嘉手納統合」に置いていた節がある。もちろん、最初はもっと上乗せして要求して、「カード」として使うわけですけど。嘉手納統合を主張していた国民新党は、そのあたりを理解していたんじゃないかな。

辻元  辺野古はどっちにしても、やっぱり難しいと思う人は増えてきていると思います。

中島  無理ですね。もう100%無理だと思います。

辻元  だから、辺野古移転を掲げた日米共同宣言が出たときも、そこであんまりちゃぶ台をひっくり返して、「もう知らん、鳩山政権はけしからん」と言うのがいいのかどうかはちゃんと考えないとあかん、とはずっと言ってたんだよね。だって、100枚空手形があったとしても、地元の自治体とかがノーなら結局は移転は極めて難しい。
 それなのに今政権を出たら、憲法審査会だって立ち上がるかも知れないし、もし衆院比例定数の80削減なんていうのが実現したら、社民党や、あと共産党なんかの議席が減る可能性が大きくなる。それでもいいのかと言って、政権離脱の前にかなり党内で議論してたんですけど。そういう声はまったくかき消されたね。

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「嘉手納統合」案への賛否は分かれるところでしょうが、
判で押したように「(辺野古案で)理解を求める」と繰り返す現政権を見ていると、
どこまで他の可能性を追求したのか? とも思いたくなります。

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