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2011-01-08up

マガ9対談:2010〜2011 ニッポンの「明日の政治」を語ろう/中島岳志さん×辻元清美さん(その 5)
「守る」ためには変わらなくてはならない

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無所属になった政治家・辻元清美さんと、リベラル保守を自認する政治学者・中島岳志さんの対談です。「国民世論」にふりまわされる政治家が多い中、信念と理念をつらぬく政治家が希少価値となっています。日本の政治を立て直すため今、何が必要なのか。社民主義とリベラル保守は手を結ぶことができるのか? 10回にわたる対談で明らかにしていきます。

辻元清美●つじもと・きよみ  1960年生まれ。早稲田大学在学中の83年に「ピースボート」を設立し、民間外交を展開。96年の衆議院選挙に社民党から立候補し初当選。NPO法、情報公開法などに取り組み成立させる。2002年に議員辞職後、2005年の衆議院選挙で比例代表近畿ブロックにて当選。社民党女性青年委員長、政審会長代理に就任。2009年、衆議院議員総選挙において大阪10区(高槻・島本)から当選。社民党国会対策委員長に就任。国土交通副大臣に就任。2010年5月、国土交通副大臣を辞任。7月に社民党を離党。

中島岳志●なかじま・たけし1975年生まれ。北海道大学准教授。専門は、南アジア地域研究、近代政治思想史。著書に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)、『中村屋のボース−インド独立戦争と近代日本のアジア主義』(白水社)、『パール判事─東京裁判批判と絶対平和主義』(白水社)、西部邁との対談『保守問答』(講談社)、姜尚中との対談『日本 根拠地からの問い』(毎日新聞社)など多数。「ビッグイシュー」のサポーターであり、「週刊金曜日」の編集委員を務めるなど、思想を超えて幅広い論者やメディアとの交流を行なっている。近著『朝日平吾の鬱屈』(双書Zero)

中島  それにしても、僕がこういう発言をすると、「おまえは保守と言ってるのに、なんでそんな左寄りのことを言うんだ」と言う人がいるんですが(笑)。

辻元  私もちょっとそう思った。私と一緒やん、って(笑)。

中島  でも、僕はこの「新しい公共」の議論は、実は保守本流そのものだと思っているんですね。かつてはコミュニティを嫌い、「自由を阻害する」と批判してきたのが左派。それに対して保守は、コミュニティとか社会的な絆を守れとずっと言ってきたはずなんです。
 僕がすごく好きな保守の評論家である福田恆存も、『人間・この劇的なるもの』という本の中で、「人間は本質的に自由なんていうものを求めていない。何でもできる手放しの自由よりは、社会の中で自分が意味ある生活をしているという実感こそが人を支えている」と言っている。これもまさに「居場所と出番」なんですよね。
 とすれば、むしろ「新しい公共」の議論に保守は飛びつかないといけないのに、何で左派にやらせているのかが僕は不思議なんですね。そう考えるとつまり、彼らは保守ではなく単なる「反左翼」なんだと思う。左が言っていることの反対を言えばいいと思っているんですね。

辻元  左派が「反権力」になっているのと同じように、「反左翼」になっているんだよね。

中島  そう、同じなんです。僕はよく「左も右も『萌え』が起きている」と言うんですけど、左は例えば「9条萌え」。9条にしがみついてればよくて、社民主義なんてどうでもいい。「メガネ萌え」な人が、「メガネ」という断片に反応するのと一緒(笑)。

編集部  「右」は例えば…。

中島  右は右で「靖国萌え」とか「改憲萌え」とか、最近だと「尖閣萌え」とか、いろんなパターンがいるんですけど、いずれにしても「保守とは何か」なんてことは誰も考えない。それを両方でやり合っているのは、非常に不毛にしか見えないんですよね。

辻元  すごく凝り固まっているんですよね。自分と同じ価値観じゃない人はみんな「反○○」みたいにレッテルを貼って、現実を見ようとしない。
 でも、今はそうじゃなくて、左も右も「変わり続けなければ評価されない」時代に来ていると思うのね。例えば憲法9条にしたって、いつも同じ顔ぶれで「守りましょう」と言って集会をしてるだけでは守れないわけですよ。ヨーロッパでノルウェーがやっているような仲介外交にチャレンジするとか、スリランカでの紛争でやろうとしたように和平プロセスに関与するとか、厳しくても具体的に行動を起こす必要がある。何かを守り続けるためには、変わり続けて行動していかないといけないんだと思うんです。

中島  保守もそうです。エドマンド・バークが「保守するための改革」と言っているように、「大切なものを守るためには変わらなければならない」というのが、保守の考え方の大前提にあります。保守は「人間は不完全な存在だ」という考え方からスタートしていますから、現在にも過去にも「理想社会」があるとは考えない。ただ、世の中が変わっていくのに合わせて、漸進的な改革を常にやり続けないといけないという発想なんです。「三丁目の夕日」の時代が素晴らしかったなんて、保守なら言えないはずなんですよ(笑)。
 そう考えてくると、やはりもう一度、保守とは何か、社民主義とは何かということをちゃんと踏まえた上での議論をスタートしないといけない。その中で、保守も左派も、両方が歩み寄れる点を模索していかないといけないんだと思います。

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右も左も、形にばかりとらわれて、
守るべき本質を見失ってはいないか?
自省も込めて、常に向き合っておきたい問いかけです。

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