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2013-04-24up
マガ9レビュー
本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。
vol.216原発とグリーンとお金のはなし
(いとうせいこう×吉原毅/マガ9ブックレットNo.2)昔の話になるが、ある信用金庫の面接に臨んだことがある。その席で理事長から「あなたはこの地に骨を埋める覚悟がありますか?」と問われた。都市銀行では出世コースを外れると、定年前に再就職先を探す人(探さざるをえない人)も少なくないという話を聞いたことがあったせいか、その一言が今も耳に残っている。
地域とともに生きていく信用金庫は、地域がこわれるのを放ってはおけない。だから城南信用金庫は福島第一原発事故後に、いち早く「脱原発」のメッセ―ジを掲げた。地域とともに生きる信用金庫として当然のことと考えたからだ。
本書は昨年3月に行われたマガ9学校「原発とグリーンとお金のはなし」の対談を収録したものである。作家・クリエーターのいとうせいこうさんの質問に、城南信用金庫の理事長、吉原毅さんが答えるかたちで進んでいく。
対談で何度か出てくる吉原さんの「我々は(お金の)プロ」という言葉が印象深い。
「私どもの三代目理事長を務めた小原鐡五郎がいつも話していたのが『お金は麻薬だから、十分気をつけろ』と、『お金を健全に皆さんに使っていただけるように、我々が良識を持って絶えずコントロールしていかなければいけない。そのためには、幅広い人間性や良識、価値観をちゃんと持っていなければだめだ』ということです」
吉原さんが紹介する三代目理事長の言葉に従えば、原発マネーはさしずめ麻薬といったところか。デフレ対策への言及にいたっては、アベノミクスの危うさを予言するかのようだ。吉原さんは「財政政策しかない」と述べつつ、こう続ける。
「……財政政策は、市場が開放されていてはうまくいかないんです。市場開放してグローバリゼーションが進んでいるから、いくら内需拡大をやったって外に流れてしまうんです」
「失われた20年」を過ごした日本経済は、さらに失われる月日を送ることになるのだろうか。
脱原発を求める人は城南信金にこだわる必要はなく、地元の信金にお金を預ければいい。いとうせいこうさんが私たちに代わって吉原さんに確認してくれている。
お金よりも人を大切にしなければ世の中はおかしくなります、とは城南信金HPの言葉だ。
地べたから世の中を変える。信用金庫にはそんな力があることを知った。
(芳地隆之)
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