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2013-01-23up

マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.210

※公式サイトにリンクしてます

この国はどこで間違えたのか
沖縄と福島から見た日本

(徳間書店出版局編)

 本書は沖縄タイムスの記者である渡辺豪氏が、日本の抱える問題について積極的に発言する識者にインタビューをしたものである。米軍を押し付けられた沖縄、そして首都圏への電力供給の役割を担わされた福島から日本を見ると、この国はどのように映るのか。Q&A形式とはいえ、語られる内容は重い。

 内田樹氏は、普天間の米軍基地を巡る問題について、「最低でも県外」と発言した鳩山由紀夫元首相を寄って集って非難する一方、アメリカ人が沖縄のことをどう思っているのかさえ取材しようとしないマスメディアの思考停止を指摘、米国の意向を忖度しながら国の運営をしようとする属国根性を解剖する。「2度と戦争をしない」という誓いは、「2度と戦いません」ではなく、「もう2度と負けない」という宣言からしか生まれないとの言には、いわゆる「反戦の誓い」に自分が抱いていた違和感を拭えた気がした。

 開沼博氏は、「原子力もなか」というお菓子に代表されるような、東北の過疎地に住む人々の豊かさへの憧憬を抱きしめるように語る。「震災でも略奪が起こらない穏やかで耐え忍ぶ日本人、東北の人々」という言葉の裏に潜む、当事者がそのイメージからはみ出ることを許さない暴力性は、福島に生まれ、いまもその地に足場を置く同氏だからこそよく見える。「『過疎化しても幸せになれる』、つまり『地域活性化しなくてもいい』というモデルを誰かがたてなくてはならない」は、脱原発のために欠かせない考え方だ。

 小熊英二氏は重厚長大型産業の最たるものとしての原発の歴史的な終焉を論じ、佐藤栄佐久氏は、福島県知事時代に原発の危険性を訴えたことでバッシングを浴びた経験から地方自治のあり方を説く。佐野眞一氏は3・11以降、言葉が痩せ衰えていくことに警鐘を鳴らし、清水修二氏は利益誘導型の政治の限界を明らかに、そして広井良典氏は地域に根差した新しい生活スタイルを提唱する。

 最後に登場する辺見庸氏は、震災直後の米軍による「トモダチ作戦」を、その背景にあるアメリカの国益も見ようともせずに、手放しで賞賛してしまうマスメディアを厳しく批判する。大震災と原発事故を『朝日ジャーナル』誌で予言した同氏が見る日本の将来は極めてペシミスティックだ。絶望の淵から語られる次の言葉は胸の深奥に迫る。

 「身体をはったパシフィズム(平和主義、反戦主義)が僕の理想です。9条死守・安保廃棄・基地撤廃というパシフィズムではいけないのか。丸腰ではダメなのか。国を守るためでなく、パシフィズムを守るためならわたしも命を賭ける価値があると思います。」

 沖縄と福島という限られた視点から、これだけ多角的にこの国のかたちが語られるのは、聞き手である渡辺氏の功績だろう。語り手が彼から沖縄の現状を教えられ、それが内容を深めていく場面も多い。

 唯一難を言えば、インタビュイーに女性がいなかったことか。次作はぜひ。

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