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2012-07-25up
マガ9レビュー
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東電株主代表訴訟
原発事故の経営責任を問う
(河合弘之・編著/現代人文社)
戦後、最大規模の事故を起こし、国土の一部が失われんとしている原因をつくったにもかかわらず、東京電力という会社は何ら罰されていない。膨大な損失を隠していたオリンパス、会長が子会社から巨額の融資を受けていた大王製紙が受けたような責任追及を、東電はどうして免れているのか。日本経済の6~7割を占めるといわれる「原子力ムラ」の存在が大きく立ちはだかっているように見える。 戦後の日本で営々と築かれてきた原子力産業の利権構造の岩盤を穿つため、河合氏をはじめとする弁護士らが行ったのが東電株主代表訴訟である。東電の元・現取締役27人に総額5兆5,045億円の損害賠償を求める同訴訟は、同じような惨事を起こせば、株主からこうした訴追を受けることになると世に知らしめる役割も果たすだろう。
本書は株主訴訟とはどういうものか、なぜ東電の賠償額は上述の規模に値するのか、株主訴訟とは別の責任追及の方法はあるのか、などをQ&A方式で説明する。株主訴訟にいたる経路は、本書所収の緊急リポート「動き始めた原発責任追及」(ジャーナリスト・小石勝朗)に詳しい。
政官財がスクラムを組み、学界とメディアがサポートする複雑かつ堅牢なシステムを突き崩す手段として株主代表訴訟を紹介するのが本書の目的であるが、福島第一原発の建設時から安全対策にいたるまで、東電が積み重ねた多くの不作為のミス、そして隠ぺい体質など、これまでメディアで報道されなかったような事実も少なからず知った。
詳細は本書を読んでいただきたい。ここでは「取締役に対する訴え提起請求書」の一節を引用しておこう。
「(略)貴社取締役は、個人的には全く財産上の責任を取っておりません。このまま推移すると、貴社取締役は、何事もなかったかのように円満に定年退職して、多額の退職金を受領し、関連法人に天下りして安楽な人生を送るということになります。それでは、原発被災者の方々の人生と余りにバランスを失し不公平であると考えます。貴社取締役の方々に個人資産をもって原発被災者の方々に償って頂きたく、本件提訴請求をし、上記要求をする次第です」
分量はさほど多くない。繰り返し読んで、たとえ相手が巨大企業であっても、泣き寝入りをしない方法があることをしっかり覚えておきたい。
(芳地隆之)
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