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2012-05-09up
マガ9レビュー
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猿の惑星・創世記(ジェネシス)
(2011年米国/ルパート・ワイアット監督)このタイトルを聞いて、1960年代に公開された『猿の惑星』の衝撃的なラストを思い出す人も少なくないだろう。私もその一人であり、それゆえ本作品に対する不安も大きかった。理由はコンピュータグラフィックスによる映像だ。あまりに精巧な動きが、オリジナルを知る観客の興を削いでしまうのではないかと思ったのである。たとえばハリウッド版『ゴジラ』(1998年製作)はほとんど「恐竜」だったし、リメイクされた『キングコング』(2005年製作)は「巨大なゴリラ」にしか見えなかった。
はたして『猿の惑星・創世記』を見ると、不安は杞憂に終わった。いや、このCG技術がなければ、この映画は成り立たなかっただろう。
物語はサンフランシスコにある大手製薬メーカーのラボから始まる。そこでアルツハイマーの治療薬の開発を目指す若き研究者ウィルは、チンパンジーを使った実験を通して、脳の働きを飛躍的に向上させる新薬の発明にこぎつける。しかし、実験の対象とされた高い知能を持つ雌のチンパンジーが研究所で暴れ、射殺されたことでプロジェクトは中止。ウィルはチンパンジーが残した赤ん坊を自宅で育てながら、密かに新薬の開発を続け、それを、アルツハイマーを患う父親に投与する。
結果は驚くべきものであった。父親は病を発生する前以上の状態に戻ったのである。それを聞いた最高経営者は中止を命じた新薬の開発を再開させた。しかしウィルは彼を止める。チンパンジーを実験に使った性急な新薬づくりは危険であると考えたからだ。彼の父親の回復も一時的なものでしかないことがわかった。
しかし、人間の欲望には際限がない。それが結果としてチンパンジーの自我を芽生えさせることになる。
映画の後半、人間並みの知性と人間を遥かに上回る運動能力によって反乱を起こすチンパンジーたちの映像は圧巻だ。ただし、スクリーンからはみ出さんばかりの派手なアクションにばかり目を奪われてはいけない。チンパンジーたちは人間たちを殺戮して地球を制覇していくわけではないのだ。
どうやって彼らは地球の主になったのか。
オリジナル『猿の惑星』のラストの理由が明らかにされるエンディングに唸らされた。
ここで結末を語る愚は避けたい。チンパンジーが獲得したウイルスに対する抗体を、人間はもつことができなかったというストーリーから、放射能に対する抗体を手に入れた生物が人間に代わって地球を支配する。そんな世界を妄想したことを記しておこう。
(芳地隆之)
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