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2011-07-27up
読んでいて何度か震えがきた。ときに奥歯をかみ締めたくなるような怒りや涙を伴って。
不思議だ。著者のマガジン9のコラムは毎週欠かさず読み、ツイートもフォローしている。だから本書の内容に目新しいものはない。それでも心がこれほどまで揺さぶられるのは、3月11日から5月11日までの記録を通して読むことで、その2カ月間が生々しく立ち上がってくるからだろう。
著者の予言はよく当たる。首相になって人気を博していたころの安倍晋三を指して、この内閣は長続きしないと断言し(『目覚めたら、戦争。』) 、鳩山由紀夫首相の「在沖縄米軍基地を最低でも県外へ」との主張にも決して楽観論を語らなかった(『沖縄へ』)。
原発に関しても、著者はずっと以前から、活断層の上に立つ浜岡原発の危険性を訴えてきた。そして、それは「浜岡」が「福島」に変わっただけで現実のものとなった。
3・11以降は、浜岡原発の運転を止めることができるのは首相しかいないと繰り返し主張する。そして5月6日、菅直人総理大臣が浜岡原発の原子炉をすべて停止するよう、中部電力に要請したのは周知のとおりである。
本書は、莫大なカネと大量のヒトを動員して進めてきた原子力行政の欺瞞、とりわけ事故後も「安全」を繰り返す原子力安全委員会や原子力安全・保安院、御用学者らを厳しく批判し、原子力発電をやめたら電力は足りなくなるといった電力会社の嘘を暴き、福島の児童を「原発疎開」させよと訴える。同時に、ツイッターで刻一刻と状況が悪化する福島原発の状況をフォローし、私たちがなすべきことを語る著者の切実な言葉が挿入される。本書が生み出す緊迫感は、この編集に負うところも大きい。
原発に関する政府の発表やマスメディアの報道がいかに信じられないものかを私たちは知ってしまった。ならば、どうやって情報の真偽を見極めるべきか。
本書を読むと、著者の情報源のほとんどが公表資料であることがわかる。それらを丁寧に解読することで、インサイダー情報を得意げに語る評論家よりも、ずっと正確に事態を把握したのである。
私たちも本書から、時の為政者や専門家のウソを見抜く眼力を身につけたい。いま「反原発日記」を読むことの最大の価値はそこにある。
(芳地隆之)
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