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2010-09-22up

マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.153

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ANPO

2010年9月18日公開/リンダ・ホーグランド監督

 僕たち日本人には「アメリカ」がインストールされている。
 この映画で、そう気づかされた。

 画家の中村宏や横尾忠則、写真家の石内都、舞台演出家の串田和美、シンガー・ソングライターの加藤登紀子など、10数名のアート作品とアーチストのインタビューを基に、戦後日本とアメリカの関係性を描いたこの映画は、現代を生きる日本人の「自画像」を映し出しているようだ。

 日本人には「アメリカ」がインストールされているのだが、多くの日本人は、普段そのことをまったく意識せずに暮らすことができる。
 しかし、沖縄や横須賀など、「アメリカ=米軍」がむき出しになっている場所で生活を送る人たちは、日々「アメリカ」と対峙せざるを得ない。
 あるいは、この映画の中心テーマでもある60年安保を経験した世代には、インストールされる「アメリカ」に対して激しく抗った記憶があるのだろう。

 だが、「アメリカ」は「日米安保条約」によって日本にインストールされてしまった。そして日本人は、その状態にうまく適応し、経済成長することで内なる「アメリカ」の存在を忘れようとした。

 だから多くの日本人にとって、この映画はできることならあまり見たくないものかもしれない。だって、自分の中に「アメリカ」があることを、多くの人は認めたくはないはずだ。60年安保を知らない世代にとっては、あらかじめインストールされた「アメリカ」に(薄々は気づいていたのだろうが)はじめて気づくことになるだろう。

 混迷を極める普天間飛行場をはじめとする沖縄の基地問題について、沖縄とそれ以外の地域では、ものすごい温度差がある。
 なぜアメリカに対し、「普天間を無条件で返還せよ」と誰も言えないのか。それは多くの日本人に「アメリカ」がインストール済みだからだ。「アメリカ」=「アメリカ軍」がいなくなることを、本能的に恐れているのだ。

 冒頭、アーチストの会田誠さんの言葉は、この映画を象徴しているようだった。
 「日本人にとって、アメリカを好きか嫌いかって微妙ですよね。フランスなら、その人個人の嗜好が出るけれど、アメリカは……」
 つまり、「すでに日本人に埋め込まれたアメリカ」≒「日本人のある意味一部になってしまったアメリカ」については、好き嫌いを超越した存在だからではないだろうか。

 僕たちは、自分自身(日本)のことを知らなければいけない。そのためには、鏡に映った自分(日本)を見ることが必要だ。たとえそこに、自分の望まないものが映っていたとしても。普天間問題の解決の第一歩も、実はそこにあるんじゃないかと、僕は思う。

(山下太郎)

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