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2012-10-10up
癒しの島・沖縄の深層
オカドメノート No.123
市民が声をあげて、政治の流れを変えるしかない
那覇市内で瞬間最大風速61メートルを記録した大型の台風17号の沖縄本島上陸で、予定されていた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備は3日ほど順延されたものの、台風が過ぎ去った翌日には強行配備された。しかも、オスプレイ運用に関して日米で合意された、なるべく市街密集地の飛行を避ける、高度150メートル以下はなるべく飛ばない、ヘリモードへの転換はなるべく基地上空で行う、といった約束は初日から完全に反古にされた。もともと、「なるべく」という文言が入っている以上、米軍にすれば最初からオスプレイの自由使用の権利を手に入れたも同然だ。日本政府も、「米軍さんにお任せします」という米国追従、主権放棄の姿勢で一貫していた。夜間飛行はなるべく減らす、などという合意が破られるのは時間の問題だ。
試験飛行段階から事故が多発し、「未亡人製造機」と揶揄されてきたオスプレイは、ヘリコプターと通常のジェット飛行の機能を併せ持つ次世代型輸送機で、航続距離も輸送能力もこれまでのCH46に比べれば、はるかに優れていることは間違いない。よく言えば、夢のような輸送機といえるかもしれない。しかし、実際はモロッコでも死者が出る事故を起こしたし、フロリダにおいても市街地に不時着する事故があったばかり。まだ、技術的には進化途上機だし、操縦士にも高度なテクと熟練度が求められる機種なのだ。
にもかかわらず、世界一危険な米軍基地と米国の国防長官に言わしめた普天間基地に配備し、沖縄本島を縦横無尽に飛行訓練する方針だ。ありえない!と沖縄県民が怒りに燃えるのは当然だろう。飛行回数もCH46よりもはるかに拡大・増加される計画だ。米国やハワイにおいては、地元住民の反対で飛行航路を変更したり、飛行を中止しているのに、沖縄はかつて米国の統治下にあり、本土復帰以降も米軍基地の自由使用は日本政府により保障されており、今でも感覚的には植民地扱いなのだろう。野田総理はいみじくも言った。「配備は米政府の方針であり、(日本から)どうのこうの言う話ではない」。まさに、米国の言いなりの亡国政治家としか思えない恥ずかしい無責任な発言だった。
沖縄県民でオスプレイ配備に賛成している人はいない。今や、妄想的カルト宗教の様相を見せている「幸福の科学」(幸福実現党)沖縄支部の面々くらいではないのか。保守系の仲井真県知事も佐喜真淳宜野湾市長も、オスプレイ配備前に続いてこの連休明けにも官邸に乗り込み、野田総理をはじめ森本防衛大臣などに安全性の確約と配備の撤回を求めたが、野田総理らはカエルの面にションベンといった表情で対応していた。仲井真知事は、安全基準の順守と本土への米軍基地分散を求めたが、それが守られる可能性すらゼロだろう。いくら口先だけで沖縄の負担軽減と安全性を繰り返しても、次はF35ステルス戦闘機の嘉手納基地への配備まで米国はすでに発表している。手の付けようのない日本政府の無為無策的対応に、沖縄県民は本土復帰前夜のような県民一丸となった怒りを募らせている。
オスプレイ配備直前、怒りに燃える沖縄県民は普天間基地の各ゲートを実力で閉鎖に追い込んだ。米軍基地前に市民の車や運動団体の街宣車をバリケードがわりに駐車させ、それを市民デモ隊が防衛するという形、である。これまでの沖縄の反基地運動は、合法的かつ平和的な行動だった。しかし、今回ばかりは非暴力・合法闘争の範囲内とはいえ、直接的に米軍基地に向けて抗議し、普天間基地の全ゲートの閉鎖に追い込んだ。さすがに、身動きの取れない米軍側の要請により沖縄県警の警官隊が車をレッカー移動で撤去し、デモ隊は強制排除された。
しかし、その後も基地に対する抗議と集会はゲート前で波状的に連日のように行われている。普天間基地周辺で、凧や風船をあげて、オスプレイが飛べないような状況をつくる作戦だ。これは合法だし、そもそも普天間基地は米軍の管轄下にあり、国内法が適用されないのだ。全国に呼び掛けて、3000個、あるいは一万個の風船を上げれば、米軍も根を上げるのではないか。
米軍基地への直接的抗議行動だけではなく、米国総領事館を日夜取り囲んで「オスプレイ反対」を叫び続ける作戦も有効だろう。米国の手先になっている沖縄防衛局や外務省沖縄事務所を取り囲むデモンストレーションも必要だろう。日本政府が沖縄県民の意志を完全無視している以上、沖縄県民は独自に戦うしかない。いずれ、オスプレイが墜落するか、デモ隊に対する流血の惨事が起きない限り、日米両政府は沖縄県民の諦めを待つ作戦のはずだ。しかし、ゲート前の抗議を取材してきた筆者の認識で言えば、現場は一触即発の雰囲気だったし、こうした理不尽な基地政策に対して今回ばかりは県民が大人しく引き下がるとは到底思えなかった。
本来はこうした日米安保、日米地位協定の改定といった対米交渉は政府の仕事である。しかし、野田民主党も安倍自民党も、そして橋下日本維新の会もオスプレイ賛成派である。安倍に至っては憲法改正、核武装必要論まで持論としている政治家だ。オスプレイ配備に異を唱えたのは「国民の生活が第一」の小沢一郎代表など、少数に過ぎない。
反原発や消費税増税反対という民意は確実に多数派のはずだが、自民、公明、民主、維新といった政党はいずれも民意を否定する立場に立つ。このネジレ現象を解消するには総選挙による勢力拡大しかないが、大手メディアが親米、親霞ヶ関、親財界の論陣をはっており、それを覆すには市民が声を上げて、政治の流れを変えるしかない。その拠点になりうるのが、反原発の国会デモであり、沖縄における反オスプレイの闘いではないのか。いや、それに期待するしかないとの思いである。
普天間ゲート前の抗議行動、Ust中継で見ていましたが、
座り込んだ人たちが警察によって強制的に「排除」されていく映像は、
あまりに衝撃的でした。
沖縄タイムスや琉球新報などの現地紙の記事を読んでいても、
「本土」との温度差を強く感じずにはいられません。
県外にいる私たちに、何ができるのか。
考えながら、声をあげ続けていく必要を感じます。
*
岡留安則さんプロフィール
おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」
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