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2012-03-21up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.117

暴走する官僚と沖縄差別を繰り返す閣僚たち

 沖縄の意志を無視して暴走する防衛・外務官僚につける薬はないのだろうか。普天間移設の環境アセスにおいても仲井真知事すら否定的な見解を出したにも関わらず、「沖縄タイムス」のワシントン特派の平安名記者の報道によれば、日本政府は「辺野古の埋め立ては大丈夫」と米国政府にすでに報告していたという。今や米国政府が、普天間基地にこだわらず、海兵隊をグアムやオーストラリアに移し、これまでのようにアジア・太平洋をローテーションで訓練移動するという構想を示しても、日本政府が率先して潰しにかかるのだから、呆れ返るしかない。

 米国政府が一部の海兵隊を岩国基地に移す意向を示したら、山口県知事や岩国市長に一喝され、玄葉外務大臣は即答で岩国には移さないと明言。もちろん、岩国基地に移せというつもりではないが、玄葉外相の頭の中には普天間の移設先は、辺野古新基地でなければならないという強い思い込みしかないという事だろう。玄葉大臣の露骨な沖縄差別にはあきれるばかりである。

 民主党幹部たちは沖縄の負担軽減をことあるごとに繰り返してきたにもかかわらず、具体的には何の動きも見せていないことが一番の問題なのだ。その証拠の一つが、辺野古新基地建設をあくまでも追求しつつ、普天間基地の大幅改修もやるという計画が進行していることである。いわゆる思いやり予算が補修費として16億円投じられるというのだ。普天間基地の長期使用を狙っているのではないかと地元は戦々恐々だ。

 昨年に続いて、今年も民主党幹部の沖縄訪問が続いている。直近では岡田副総理が来たばかり。その岡田副総理は、普天間基地に隣接する普天間第二小学校を訪れ、校長先生と面談し、校長が「普天間基地の固定化は困る」と釘を刺したら、岡田副総理は「心配はない。普天間は辺野古に移すから大丈夫」と答えたのだ。岡田副総理の空気の読めない答えには、校長も一瞬コケそうになったのではないか。

 岡田副総理には、以前普天間基地が見渡せる嘉数高台で、住民を軽視する失言を吐いたという事件があった。その弁明もあって今回訪問したのだろうが、これじゃ、より怒りをあおるだけの逆効果でしかない。
 さらに輿石幹事長、玄葉外相、鳩山元首相も4月にやってくる予定だ。

 沖縄選出の照屋寛徳議員が質問主意書で問いただしたところ、昨年10月から今年2月までの沖縄担当相による9回の訪沖にかかった費用は1500万円だというのが政府側の回答である。いずれも1日から2日の短期滞在である。この金額自体がウソかもしれないし、2月26〜27日の野田総理の訪問時の費用は含まれていないが、照屋議員は「県民からすれば、大いなる血税の無駄遣いだ」と批判している。全く同感だ。

 さらに問題発言乱発の田中防衛大臣は、米側に「国内で新たな移転先というのは難しい」と述べたとコメントしており、沖縄県民の悲願である県外移設、つまり国内分散を明確に否定しているのだ。この田中防衛大臣は就任直後、「辺野古新基地の着工は今年中」とも発言している。野田政権と田中防衛大臣がその時まで現職にとどまるとは思わないが、日米実務者協議で極秘裡に実務を取り仕切る防衛官僚たちはやる気満々なのだろう。密約くらい平気な連中だけに油断はできない。  

 ところで沖縄本島・東村高江のヘリパッド建設工事を妨害したという理由で国(防衛省)が反対運動の市民を訴えていた裁判の判決が出た。那覇地裁は一人に妨害禁止を命じ、もう一人に対する訴えは退けた。しかし、この判決に納得した県民はほとんどいないのではないか。建設を進める業者の車両の通行を妨げたという理由だが、住民の意思と関係なく強権力で工事を強行しようとする防衛省側が、国家権力を背景に、住民運動を弾圧しようという魂胆がミエミエの訴訟だ。弾圧でなければ、住民運動の萎縮効果を狙った恫喝である。訴えられた住民は、公判の度に東村から那覇地裁に出向かなければならず、市民への嫌がらせともいえる「スラップ訴訟」そのものである。那覇地裁は「表現活動の範囲を超えている」と判断したが、住民意思を無視して米軍のヘリパッドが強行して建設されることにただ手をこまねいていろということなのか。ヘリパッドは、普天間基地や辺野古新基地にも配備する計画だ。直前まで沖縄県民には内緒にしていた事実だ。普天間基地移設の環境アセスでもこのヘリパッド配備計画は明確にしていなかったのだ。いくら軍事上の秘密だとしても、配備されれば被害を受けるのは沖縄県民である。欠陥機とも言われたオスプレイが離着陸すれば、墜落事故は当然想定しておくべき事案になる。裁判所も、事の本質を見ることなく、一般事件レベルでしか判断しなかった。むろん、刑事事件としては立件に値しない微罪だから、その必要もなかったのかもしれないが。

 毎日新聞元記者だった西山太吉記者の72年の沖縄返還にまつわる密約のスクープ記事に端を発した、いわゆる外務省機密漏えい事件を基にした山崎豊子原作『運命の人』のドラマがTBS系で放送された。放送中に西山太吉氏や読売新聞のナベツネ氏から抗議があったというから、本人たちには不満があったのかもしれないが、そこは小説であり、テレビドラマだから仕方のない部分もあるはずだ。3月18日が最終回で、二時間スペシャルだった。沖縄問題が題材ということもあったので、筆者は一回だけは見過ごしたが、後はすべて見た。事実をもとにしたフィクション小説を原作としたテレビドラマだけに、事実関係が違っていたし、ドラマ仕立てなのでかなり脚色されていたが、沖縄問題の歴史や本質を理解する教科書としては明快なストーリーだった。大手メディアが沖縄問題の本質に触れない以上、こうした作品のドラマ化にはパチパチと拍手を送りたい。

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東村高江の「スラップ裁判」については、
どん・わんたろうコラムでも詳しく解説しています。
琉球新報なども指摘しているように、
判決の内容以前に、「国が住民を訴える」ということそのものの異常さに、
私たちはもっと敏感であるべきではないのでしょうか。

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岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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