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2012-02-22up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.116

沖縄の米軍基地をめぐる防衛官僚のヤリクチは、上から目線の国策押し付け

 昨年末、深夜四時に防衛省から県庁の裏口に持ち込まれた約7000ページに及ぶ環境影響評価書。ドサクサ紛れの評価書提出で評価書に欠落部分があったりして、一部は年明けに搬入された。米政府に約束した期限を守るために、防衛省がいかに大慌てしたかがよくわかる。その環境アセスにしても、内容自体も杜撰そのもので、県の環境影響評価審査会(宮城邦治会長)は仲井真知事に対して答申したが、県の防衛省に対する意見書も手厳しいものだった。飛行場の建設は「事実上不可能」とし「環境保全に関しても生活・自然環境を守ることは不可能」とした。最後まで、内密にされてきたオスプレイの配備に関しても後出しで不公正なやり方と断じている。

 先の宜野湾市長選で、もともとは辺野古新基地建設派だった元自民党県議・佐喜真淳市長が当選したことで、民主党政府も辺野古移設に一縷の望みを抱いたが、今回の仲井真知事による意見書が環境アセス結果を全否定し、あらためて県外移設を求めると明記したことで、新基地建設の可能性は限りなくゼロに近くなった。
 この宜野湾市長選でも驚くべき事実が発覚した。強姦を例に出す不適切発言で更迭された田中聡沖縄防衛局長の代わりに、新たに新局長に就任したのが出戻りの真部朗局長。この人物が沖縄防衛局の人事課に命じて、職員親族の宜野湾市長選有権者リストを作成させた上、職員を沖縄防衛局の局舎に集めて、「講話」なる選挙向けの檄を飛ばしていた事実が発覚したのだ。本人は、誰に投票しろとは言っていないし、選挙に行くように呼びかけただけと主張した。ウソにきまっているし、この真部局長には名護市でも公知の前歴があった(毎日新聞記事など参照)。

 宜野湾市長選の公示日直前のこの問題発覚で、防衛大臣と防衛省は真部局長を東京に呼びつけて「事情聴取」。国会での参考人招致にも引っ張りだされた。しかし、その時の防衛相といえば、前の一川保夫防衛大臣よりもお粗末な田中直紀氏。就任以来、失言を乱発し、無能な大臣の烙印を押されて野党から袋叩きの真っ最中。これで、真部局長を更迭したら、田中防衛大臣の責任を問われるだけではなく、宜野湾市長選でも大敗する可能性があったため、処分を急遽先送り。結局、真部局長はお咎めなし。そんな馬鹿な! と思うのだが、結局4月の定期異動でさりげなく配属を変えて、通常の人事で済ませるつもりなのだという。大臣が大臣なら、沖縄防衛局のトップも似たような無責任体制という事だろう。まったくあきれ返る事実だ。

 そして、無責任の極みだったのが、地元の沖縄タイムス、琉球新報が追撃により、環境アセスの調査会社に防衛省の役人が天下っていたという事実が発覚したあとの展開だ。防衛省は過去6年で9社34件の環境アセス業務を発注しているが、そのうちの5社は防衛省の天下り会社で受注額は9割を超えている。その総額も約86億円。ほとんどが随意契約。なかでも、大半の受注額を占めているのが東京に本社のある「いであ」なる会社だ。つまり、防衛省が思い通りの環境影響評価を作成させるために、天下りの役人を窓口にしていたことになる。しかも、調査費用は大盤振る舞いである。防衛省と調査会社になんらかの特別な癒着があった可能性も高い。しかし、沖縄の地元紙以外はこの事実を報じないばかりか、衆議院予算委員会でも追及されなかった。もともとは自民党が歴史的にまいたタネであり、何が何でも辺野古に新基地をつくりたい民主党政権としても、口をつぐんだ方が得策だと判断したのだろう。事故率の高いオスプレイの配備に関しても最後の最後まで極秘にしてきた。環境アセスの面からいえば、どんな機種が配備されるのか最重要事項ではないか。事ほど左様に沖縄の米軍基地をめぐる防衛官僚のヤリクチは、沖縄県民を無視した上から目線の思い上がりの国策押し付けなのだ。

 田中防衛大臣が完全に防衛官僚のロボットにすぎないことはもはやだれの目にも明らかだが、外交を担う玄葉光一郎外相も弁はたつが、本性は松下政経塾出の親米ズブズブの売国政治家。米国が財政の破綻で軍事費を見直すために、06年の在日米軍再編のロードマップの見直しを発表した。これまでの普天間基地の辺野古新基地への移設と嘉手納基地以南の米軍施設を返還するというパッケージ論を捨てたのである。辺野古に新基地をつくるメドがたたないばかりか、グアムに移設する予定の海兵隊に対しても予算を削減しなければならなかったからだ。米軍によると、グアムへの移転は従来の8千人ではなく、4600人。他は豪州、フィリピンなどのアジア方面にネットワークで移動する方式を打ち出した。米軍は岩国にも1000人規模の海兵隊の移設を発表したが、山口県や岩国市の反発で一夜にして撤回。玄葉外相は「岩国はありませんから安心してください」とリップサービス。その気持がなぜ沖縄に対して発揮できないのか。沖縄県民が望んでいる県外・国外移設に真剣に取り組んだ痕跡など皆無ではないのか。玄葉クンよ!

 これまでの防衛・外務官僚の洗脳に乗せられて、沖縄の地理的優位性や抑止力をバカの一つ覚えのように繰り返している玄葉外相。今回の米国議会の本音は、沖縄に海兵隊を置く必要はなく、グアム、ハワイ、米本国、フィリピン、インドネシア、オーストラリアをこれまでのネットワークで移動して訓練すれば問題なしだということなのだ。まして、仮想敵・中国の目と鼻の先にある沖縄は米国にとっては危なすぎて、陣地を後退したほうが、米国のアジア・太平洋戦略上も有利なのだ。そんなことは、田中防衛大臣だってわかっているはずだ。玄葉外相が口先だけでなく、実行力を打ち出せないのは、民主党の公約だった政治主導を捨てて、防衛・外務官僚や米国の沖縄利権派と本気で交渉する能力もセンスもなく、親米路線の呪縛に取りつかれているだけだからだ。今月26日には、野田総理の就任後、初の訪沖が予定されているが、遅すぎる。収獲ゼロで、県民から「怒」のプラカードを突きつけられるのは確実と来る前から断言しておきたい。

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かつては辺野古への基地建設容認派だった仲井真知事ですが、
「県外移設」を求める世論に支えられる形で、
環境アセス評価書に対して厳しい姿勢を示しました。
先日の宜野湾市長選挙も、
「普天間基地の全面撤去」を掲げた伊波洋一元市長が敗れこそしたものの、
自民・公明などの推薦で当選した佐喜真淳新市長の公約も「県外移設」。
もはや、県内移設はありえない。
そのことに気付いていないのは、
「上から目線」の中央の政治家たちだけなのかもしれません。

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岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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