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2011-06-01up
癒しの島・沖縄の深層
オカドメノート No.101
「国民第一」を忘れた政権は総退陣せよ
おそらくIAEA査察団の来日調査の効果によるものだろうが、東電の嘘や情報隠しが次々と暴露されている。独占的な公共企業・東電の情報隠しは会社自体の体質と歴史によるものであり、解散や組織解体を進めない限り治らない不治の病と断言していいだろう。
IAEAは原子力の平和利用をうたっている団体なので、原子力を肯定したうえで、安全性を高めようというのが組織の趣旨だ。しかし、それでも、こうした「外圧」でもない限り、日本政府も東電も情報隠しは当たり前と考えているフシがある。国民がパニックに陥ったり、風評被害に流されないようにというのが、大義名分である。
しかし、小学校の校庭利用の放射線レベル上限を20ミリシーベルトに設定したものの、内閣参与に招いた小佐古敏荘東京大学大学院教授が涙の抗議で辞任した。その後、文部科学省は、校庭の土を入れ替えることで、児童が1年間に浴びる放射線量を1ミリシーベルト以下に抑える目標を設定し直した。土壌入れ替えの工事費用は全額国が持つという。
こうした政府の情報コントロールや高額測定器・スピーディなどの情報隠し、右往左往した事故対策の混迷ぶりこそが、風評被害を生み出すのだ。今や、国民は政府も菅政権も信用していないのだ。風評被害で悪いのは国民ではなく、都合の悪い情報をひた隠す東電をはじめとした「原発利益共同体」そのものである。
今回の福島第一原発の安全神話崩壊は日本の国策政治の大失敗も証明した。それは、国と通産省、電力業界が三位一体となって進めた原発行政を、関連企業の東芝や日立などの他、原発御用学者や大手メディア、文化人らが盛り立てる構図だった。懺悔すべきA級、BC級戦犯は無数にいる。個人的には国民・市民による「人民裁判」で裁きたいくらいの気持である。
そんな国家の非常事態の中で、ゲーツ国防長官は、普天間基地に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを来年10月に配備することを北沢防衛大臣に伝える方針であることが判明した。これまでも、事故の多いオスプレイの配備は度々言われてきたが、いよいよ正式に強行する方針を固めたわけである。おそらく、沖縄本島北部の高江のヘリパッドと普天間基地を往復するような軍事訓練を実施する腹積もりなのだろう。ゲーツ国防長官は近々退任することになっているが、最後っ屁のつもりなのか。よけいな男だ。
このところ、北沢防衛大臣、松本外務大臣が沖縄を訪問して仲井真知事と面談した。目的は辺野古新基地建設のゴリ押しのためである。しかし、知事も「なぜ、辺野古に戻ったのかの説明がない」として話し合いは相変わらず決裂状態。県民の8割近くが県内移設に反対しているのに、民主党政権も防衛・外務官僚もどうやって新基地建設を強行するつもりなのか。見通しは全くないのに、「県民の理解を求めていく」という言い回しは理解不能である。ならば、自衛隊の戦艦でも米軍の戦車でも、海兵隊の精鋭部隊でも動員して実力・武力行使も辞さないとはっきり言えばいい。おそらく、想像するに、防衛・外務官僚は、沖縄はアメとムチでオドシをかければ最後は妥協するというシナリオを描いているのではないか(大間違いだが)。あるいは、菅政権が日米合意に同意した以上、そう簡単に撤回できないので、時間稼ぎでノラリクラリとやる戦法なのか。どうせ、菅政権の命は短いだろうし、あとは知らんふりを決め込めばいい。
しかし、このところ、北沢防衛大臣率いる防衛省のやることはひどすぎる。大震災や未曾有の原発事故に国民の関心が奪われている間にイケイケどんどんだ。まさに、火事場ドロボーと一緒だ。
米軍の射爆場を久米島町の鳥島から同町硫黄鳥島に移転する方針も示している。鳥島射爆場は島自体が崩れ去り原型をとどめない無残な戦場跡地と化している。だから、新しい訓練場をよこせというわけだ。鹿児島県の馬毛島で米軍の艦載機の訓練を行う方針も打ち出している。つい先日は米軍が嘉手納基地上空でパラシュート降下訓練を日本政府にも地元に通告なしで実施した。当然ながら、市街地での降下訓練は危険極まりない。地元の抗議に対して、「東日本大震災のトモダチ作戦の支援で、訓練がおろそかになったので実施した」と米軍側は平然と答えていた。
さらに、米兵の息子たちが県内で犯罪を犯したにも関わらず、当初米軍は日本に身柄を引きわたさなかった。最終的には、沖縄県警に引きわたしたものの、これも日米地位協定の見直しがなおざりにされてきたことに最大の問題がある。何しろ、米兵の酔っ払い運転も「公務」であれば、日本に身柄を引きわたさなくてもいいのだから、まさに沖縄は植民地扱いなのだ。どこが、トモダチだ。笑わせるな!
その一方で、米軍の軍事拡大戦略見直しや国防予算の大幅赤字からの脱却策として、上院の軍事委員長などの有力議員は、「辺野古基地は不可能」として他の案を検討するように申し入れている。米国防省の幹部が匿名で書いた「緊縮時代の国防・2022」の中でも、在沖海兵隊の廃止・縮小を国防予算削減策の一環として打ち出している。こうした米国の財政赤字と米軍の台所事情を思えば、米国の対日軍事戦略は大幅に見直しされて当然である。
ところが、G8サミットでは、菅総理とオバマ大統領が辺野古新基地建設で合意。もうすぐ辞める予定のゲーツ国防長官や、正体不明のダニエル・イノウエなる上院議員も辺野古推進を表明。原発同様に、日米安保マフィアに象徴される「日米軍事利益共同体」の面々が利権死守で蠢いているとしか思えない。ウィキリークスの米国公文書の暴露内容を持ち出すまでもなく、そこで大活躍しているのがCIAに洗脳された防衛官僚であり、裸踊りをしているのが、北沢俊美「大バカ」防衛大臣なのである。情けない限りだ。
やはり、政権交代の「国民が第一」の原点を忘れた菅総理と民主党執行部は総退陣すべし、である。でないと、原発も普天間基地もとんでもないことになるのは間違いなしだ。これまた大バカの岡田幹事長のいう「内閣不信任案に賛成もしくは欠席したら処分する」という恫喝など無視すればいい。普天間基地の辺野古基地移設に反対して知事選を戦ってきた民主党沖縄選出議員の瑞慶覧長敏も玉城デニーもいまだに処分されていないではないか。安心して、内閣不信任案決議で「菅総理、NO!」をつきつければいい。
*
原発事故への対応も、基地問題をめぐる言動も。
あまりに人々の声と乖離した動きに、
いったい、誰のための「政治」なのか? と思わずにいられません。
岡留安則さんプロフィール
おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」
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