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2011-04-13up
癒しの島・沖縄の深層
オカドメノート No.99
「4・25県民大会」から1年、
ますます強まる日米主従関係
4月22日の『沖縄タイムス』の一面トップに「嘉手納以南返還 7割弱」という記事が掲載されていた。米軍の内部資料に明記されていたという発掘ものスクープである。普天間基地の代替基地として辺野古新基地を建設すれば、嘉手納基地以南の米軍基地を返すというのは、かねてより日米両政府の間で確認されてきた事項である。それが、100%ではなく、70%弱だというのである。辺野古新基地建設推進派のなかには、嘉手納以南の米軍基地や施設が返還されれば、沖縄の米軍基地の負担軽減につながるのだからいいことではないかという理由で賛成に回った人たちもいた。防衛・外務官僚たちがこぞって世論操作してきた部分もあるが、そこにも情報隠しが存在したのである。まったくタチの悪い、米国追従の亡国官僚たちである。
とはいっても今や沖縄県民や県議会は当然としても、沖縄の41自治体の全部が辺野古基地建設に反対の意思を表明している(『琉球新報』調査)。もともとは、辺野古新基地を条件付きで容認していた2期目の知事である仲井真弘多氏も「県外移設しかありえない」と路線を転換している。県民世論を斟酌したうえでの路線転換だから、そう簡単に知事が寝返ることはないはずだ。それでも、北沢防衛大臣は、辺野古新基地の滑走路はV字型であることを知事に説明するために沖縄にやってくるという。統一地方選でも惨敗して民主党の斜陽を決定づけた選挙の総責任者でもある岡田幹事長も来沖するという。東日本大震災の復旧・復興や福島第一原発のレベル7の事故処理のメドもついていないのに、無神経な連中だ。沖縄県民でこの2人の来沖を歓迎するのは一握りの利権絡みの連中くらいだろう。沖縄県民は懲りずに「怒」のプラカードを掲げて、来沖反対のデモンストレーションを展開すべきだろう。そうでないと、この無神経な連中には、沖縄県民の総意は伝わらないからだ。
折しも、沖縄では「4・25県民大会」から1年が経った。読谷村運動広場に9万人を動員したこの「県外・国外」移設を求めた県民大会には沖縄の全政党や仲井真知事も出席した。当時の鳩山総理が最終的に辺野古新基地建設を容認する直前の沖縄側の意思表示だった。鳩山前総理が歴代総理の中で初めて「県外・国外」移設を目指した心意気は評価したい。しかし、鳩山政権下の平野官房長官、北沢防衛大臣、岡田外務大臣、前原沖縄担当大臣らの関係閣僚は当初から嘉手納基地統合案やキャンプ・シュワブ陸上案、ホワイトビーチ沖埋め立て案などでバラバラに突っ走った。鳩山前総理の政治的リーダーシップが欠如していたと結論づけるしかないが、最大の障壁になったのが防衛・外務省の官僚という「内部の敵」である。北沢防衛大臣に象徴されるように防衛官僚の代弁者のような言動は、防衛官僚や安保マフィアの連中に洗脳された結果である。
特に、北沢防衛大臣の最近の言動は常軌を逸している。基地所在市町村に対する交付金がアメとムチと表現されることに対して、「きわめて適切でない、ネガティブな表現だ。金で地域を揺さぶるという表現は全く当たらない」と14日の参議院外交防衛委員会で述べた。嘘つけ! だ。さらに、普天間基地の周辺で風船を掲揚し、普天間基地の早期返還をはかる市民団体の抗議行動に対して、これ以上運行妨害をすれば処罰の対象であることをほのめかした(21日の衆院安全保障委員会)。普天間基地は日本の航空法の適用外で掲揚物の高さを規制できない。市民団体はこの風船作戦により、普天間の軍用機が飛べなくなる事態を狙って、合法的な闘争として取り組んできた。これに、北沢大臣が恫喝をかけてきたのだ。史上最低の防衛大臣である。仲井真知事も面会を拒否したらどうか。
それはともかく、共同通信、沖縄タイムス、琉球新報の3社合同企画で普天間基地問題の検証をやった際、鳩山前総理が「普天間基地の抑止力は方便といえば方便だった」という本音を漏らしたことがすべてを物語っていた。
東京では報じられていないだろうが、上記のような日米主従関係の中で、沖縄の米軍は相変わらずやりたい放題だ。読谷村の米陸軍基地「トリイステーション(トリイ通信施設)」の海岸に米軍が日本側に了解を求めずに護岸工事を進めていたことが発覚した。この護岸工事自体は米軍管轄の水域にあるため、日本側は文句が言えないことになっているが、地元の読谷漁協は海の汚染や漁業に影響が出るとして抗議をしたが、米軍側は完全無視の姿勢。辺野古新基地建設にそなえてキャンプ・シュワブ内での大規模な擁壁(ようへき)工事が今秋から開始されるという。事故が多発した垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを来年10月から沖縄に配備することも米軍は明言している。日米地位協定の改定も遅々として進まず、交通事故も公務中ならば、米軍の管轄という勝手な解釈もゴリ押ししている。
一方、沖縄にとって吉報もあった。大江健三郎著『沖縄ノート』の記述に対して、元日本軍の戦隊長らが名誉棄損で訴えていた「集団自決」訴訟の最高裁判決で、大江氏側が勝訴したことだ。この裁判は太平洋戦争末期の沖縄戦で座間味島に駐屯していた旧日本軍の元戦隊長・梅沢裕(ゆたか)氏と渡嘉敷島の戦隊長だった故・赤松嘉次(よしつぐ)氏の弟である秀一氏が、大江氏の<住民に集団自決を命じた>との記述が名誉棄損にあたるとして、大江氏と版元である岩波書店へ出版差し止めや謝罪広告、慰謝料の支払いを求めて提訴したのだ。地裁、高裁でも原告の訴えを退け、最高裁でも日本軍の集団自決の関与を認めた。大江氏側の勝訴確定である。しかし、問題はこの訴訟をきっかけに、高校の歴史教科書から軍が集団自決を命じたとの記述が削除されたことだ。裁判上は勝訴したが、「命令を発したことをただちに真実であると断定できない」という裁判所の曖昧な判断がなされたままであることだ。裁判所の高度な政治判断があったのかもしれないが、原告側はこの点を今後とも声高に叫ぶのではないか。要注意だ。
*
東日本大震災以降、中央のテレビや新聞など大手メディアでは、
予算委員会等を除いて国会の動きが報じられることがほとんどありません。
今回岡留さんが指摘した北沢発言などもそう。
震災復興、原発問題に注目が集まるのは当たり前ですが、
だからこそ、そんななかで進められる政府の様々な動きには要注意です。
岡留安則さんプロフィール
おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」
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