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2010-09-15up

癒しの島・沖縄の深層

オカドメノート No.085

これでも民主党は辺野古に基地を作るつもりなのか

 全国的にも注目を浴びた沖縄県名護市議選で辺野古基地建設反対の稲嶺進市長派が勝利した。定数27のうちの16名が当選し、過半数を制した。事前の情報では基地推進派の前市長・島袋吉和派があの手この手で過半数を狙っているので市長派は不利ではないかとの見方が流れていた。今年1月の名護市長選挙で、稲嶺市長が誕生して「海にも陸にも基地はつくらせない」と宣言したものの、名護市議会では反市長派が過半数を占めていた。今回の市議選で再び反市長派が過半数を制することになれば、稲嶺市政に暗雲が立ち込めることになる。どちらの陣営にしても引くに引けない選挙戦だった。東京からもNHKや共同通信などが選挙取材部隊を投入し、名護市議選に張り付いていたことでも明らかなように、霞ヶ関や永田町が注視する異例の地方選挙だった。

 民主党・鳩山政権がブレまくったあげく今年の5月に苦渋の選択をし、後継の菅総理もあっさり容認した日米合意=辺野古新基地建設を計画どおり進めるには、地元の賛成は必要不可欠である。そのため、自民党・公明党系の基地建設推進派市議に肩入れするために、仲井真弘多県知事や県内で唯一の自民党議員である島尻安伊子議員らも前島袋市長主導の出陣式にも参加していた。民主党・前原沖縄担当大臣が基地建設推進派の島袋前市長らと東京で極秘に接触した事実も確認されている。防衛省をはじめとした政府も選挙戦の舞台裏で暗躍し、一説には官房機密費の投入や大手ゼネコンの資金提供までが取り沙汰された。明らかに米国CIA筋と疑われる外国人が名護市に出現しているとの情報もあった。

 民主党政権と米国、そして新基地の共同使用を画策する防衛省にとっては何が何でも辺野古に新基地をつくる必要がある。そのためにはこの名護市議選で反市長派を勝利させることで稲嶺市長に揺さぶりをかけ、11月に予定されている沖縄県知事選でかつては辺野古基地建設派だった仲井真知事を再選させるしか選択肢はないはずだ。仲井真知事は推薦母体の自民党沖縄県連から「県外・国外」の方針を明確にするように迫られているが、これまでの言動を精査すれば、元官僚らしく曖昧な言い回しが多く、信用できない人物と見られている。県民の総意を無視して政府と裏取引して基地建設容認に舵を切る可能性だって残されているということだろう。今回の名護市議選において、反市長派の候補者は辺野古基地建設の是非に関してはほとんど明言していなかった。表向きは辺野古基地建設の賛否については争点にすることをあえて戦術的に避けたのだ。沖縄県民だけではなく、名護市民の間でも新基地建設に関しては7、8割の人たちが反対であるという世論の動向に配慮した巧妙な争点隠し選挙でもあった。

 しかし、それでも、基地利権派の反稲嶺市長派は勝てなかった。16対11では、基地利権派の完敗である。これでも、民主党は辺野古に新基地をつくる方針を変えずに強行するつもりなのか。本来ならば、沖縄だけに米軍基地を押し付けて恥じることのなかった自民党と霞ヶ関の戦後の歴史を転換する絶好のチャンスのはずだ。「地元が同意しないところに基地はつくらない」とかねてより明言してきた米国だって、これだけ地元に反対されてまで新基地をつくることに執着するとは思えない。執着しているのはむしろ日本の防衛省、外務省であり、官僚や御用評論家たちに洗脳された民主党政権の方だろう。日本政府が、これまでの対米追随一辺倒の外交方針を転換して、「対等で緊密な日米関係の再構築」を米国側に申し入れれば、交渉できないはずがない。ちょうど、今年で改定50年を迎える日米安保のありように関して、堂々の論争と外交を提起する能力を日本政府が打ち出せるかどうかにすべてがかかっている。

 しかしながら、名護市議選の選挙結果を受けた、北澤防衛大臣や仙谷官房長官の談話は相も変わらず、「沖縄県民の理解を求めていく」とバカのひとつ覚えを繰り返すだけだった。前回の名護市長選で、基地建設反対派の稲嶺市長が誕生した時、当時の平野官房長官は「斟酌しない」と発言して物議をかもしたこともあるが、まったく懲りない面々である。おそらく民主党政権の最後の望みは自民・公明が推す仲井真知事に辺野古基地建設を内々で容認させる代わりに、民主党が官房機密費や選挙資金を投入し、振興策というアメを奮発してでも、支援体制に回るというストーリーだろう。しかし、民主党沖縄県連は県外・国外移転を出張し、辺野古基地建設は不可能という文言を入れた方針を打ち出そうとしている。民主党本部と県連にもネジレが存在するのだ。その妥協案として、民主党沖縄県連は県知事選で独自候補の擁立を模索している。しかし、民主党本部の裏切りに対して沖縄県民は許さないはずだし、集票は極めて困難だろう。ならば、民主党県連は仲井真知事よりも鮮明に基地反対を打ち出している伊波洋一宜野湾市長の支援にまわるべきではないのか。たとえ、民主党中央本部と全面対立してでも、だ。それしか民主党県連が沖縄で生き延びる途はないはずだ。

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民主党代表選は結局、菅直人首相が勝ちました。
辺野古移設を前提とした日米合意を遵守するとした菅首相は、
この名護市民の声をどう受け止めるのでしょうか。
日米合意を押し通すようであれば、本コラムで岡留さんが指摘してきたとおり、
官僚主導政権でしかないことを証明することになります。

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岡留安則さんプロフィール

おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」

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