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2010-08-25up
癒しの島・沖縄の深層
オカドメノート No.084
民主代表は小沢一郎しかありえない、その理由
興南高校の甲子園大会の優勝で、沖縄中が県民一体で燃えた。春の選抜に続いて夏の甲子園大会も連覇したのは、沖縄の高校として初めての快挙である。地元の『琉球新報』『沖縄タイムス』に加えて、現地印刷をやっていない『朝日新聞』までが号外を発行するというフィーバーぶりだった。試合の内容も幸運というレベルではなく、ソツのない自信に満ちた「横綱相撲」のような勝ちっぷりだった。「負ける気がしない」と言うのが、興南の試合を見守る多くの県民の共通する思いだった。72年に本土復帰した沖縄は、「内地」の高校に比べて技術面でもメンタル面でも大きなハンデをかかえてきたが、これまでの沖縄水産、八重山商工、沖縄尚学などの活躍の総仕上げとして、春夏連覇を達成した興南高校の快挙によって、文字通り全国№1のレベルまで進化を遂げた。
たかが高校野球といえども、興南の活躍が沖縄県民に夢と希望を与えた事は紛れもない事実だろう。民主党が政権交代を達成してまもなく1年が経つ。この間、沖縄県民は鳩山前総理の普天間基地の県外・国外移設の主張に共感して、大いなる希望を抱いてきた。しかし、長年の日米両政府の癒着関係により築きあげられてきた強固な安保利権体制を打破することなく、鳩山総理本人が挫折し、後継の菅直人総理も交渉する前に敵前逃亡し、辺野古沖に海上基地をつくるという案が日米合意とされた。政権交代前に自民党・公明党が容認してきた対米従属路線がそっくり存続されることになったのだ。
県民は普天間基地の辺野古移設に激しい怒りをぶつけつつも、諦念と絶望的気分が複雑にまじりあっていた。沖縄において政権交代の原動力となった民主党沖縄県連じたいも中央本部の裏切りに翻弄され、今や分裂か解体の危機に晒されている。わずか8ヵ月の間の出来事である。沖縄県民にしてみれば、かつての「琉球処分」に匹敵する本土政府の裏切り、切り捨て、差別という状況に、今年の5月以降は完全に追い込まれてしまったのだ。そこに、純真で一途な高校球児たちの全国制覇という出来事があった。この結果が、大人たちも「負けてはいられない」という反撃のきっかけとなれば、「たかが高校野球、されど高校野球」となるはずだし、そこに大いに期待したい気分だ。
それにしても、菅・民主党の沖縄に対する目線や政治姿勢はひどすぎる。自民党時代ならいざ知らず、「国民の生活が第一」をかかげた民主党までが、県民の思いを木っ端微塵に砕いてしまった。県民は今後何を信じていけばいいのか。民主党政権の辺野古新基地建設を実現するための、「沖縄の負担軽減のために、県民の理解を求めていきたい」という嘘くさい血も涙もない官僚的言い分には反吐が出るくらいだ。負担軽減を言うならば、すでに在日米軍基地の74%が集中する沖縄にこれ以上の新基地をつくらないことだ。言行不一致の極致ともいうべき政府見解ではないか。
辺野古に新基地が建設されれば、最低50年、100年は沖縄の米軍基地は存続されることになるはずだ。その代わり、沖縄にはカネをばら撒いておけというヤリクチを堂々と取り始めた前原国土交通大臣にして沖縄担当大臣も最低最悪の政治家である。地元の名護市長が、「辺野古の海にも山にも基地はつくらせない」と断言しているのに、日米両政府が頭ごなしに計画を押し付け、地元の誘致派の一部と接触して利権誘導の密談を進めるなど、悪徳政治家、CIA工作員そのものの手口である。八ッ場ダムもJAL再建も中途で投げ出し、沖縄の泡瀬干潟の埋め立て工事に対しても裁判所が経済的合理性はないとする判決を下したというのに、勝手に埋め立て工事の推進にGO!を出してしまった。地元も戸惑うくらいの早業だ。北澤防衛大臣や岡田外務大臣が対米追従の外交交渉を進め、前原が札束でアメをばら撒くという二人三脚路線が動き始めている。普天間基地移設の担当責任者は平野官房長官から仙谷官房長官に代わったが、沖縄県民の「辺野古に基地はいらない」との声は相変わらず無視され続け、今や話題にもならないくらいだ。
そんな無責任な菅内閣を単なる自己保身で支持する閣僚や党の役員もいるが、沖縄的にいえば、絶対反対という他はない。少なくとも9月の民主党代表選によって、菅―仙谷ラインで進められる官僚政治への同化・一体化路線を拒否し、小沢一郎のいう政権交代の原点を想起し、「国民の生活が第一」の政治に立ち戻るしかない。少なくとも沖縄県民にすれば、辺野古への新基地建設は白紙にもどし、あらためて県外・国外、もしくは普天間基地の即時閉鎖を実現できる勢力を応援するしかないだろう。メディアも検察・霞ヶ関も、小沢の「政治とカネ」の問題を蒸し返して総バッシングするだろうが、たとえ小沢の支持率が10%を切ろうとも国民の支持を得られるような大胆な政策を次々と打ち出せば、支持率は必ず上昇するはずである。
疑わしきは罰せずという民主主義の原則すら無視する検察審査会至上主義がまかり通れば、政治は再び、度し難い「官僚内閣制」への逆行にしかならないはずだ。小沢潰しで喜ぶのは既得権益が守れる検察・官僚、大手メディアである。民主党代表選の本質は巨大な日米の利権集団との戦いである事を見逃してはならない。小沢一郎は、最後の政治生命を賭けて、霞ヶ関を革命的に改革する剛腕を発揮すべき時ではないのか。ついでに、普天間基地の県外・国外移設、消費税10%アップも党首選の争点にすべきである。民主党の党首選はメディアが言うような権力抗争ではない。せっかく実現した政権交代の理念を実行するか否かの方向性を巡る戦いなのだ。ネジレ国会にしても、官僚内閣制に依存して第二自民党の道へとひた走る菅―仙谷―枝野―前原―岡田―北澤ラインでは、まともに運営できないはずだ。当欄への反論は読者の自由だが、少なくとも沖縄から霞ヶ関や永田町を見ていると、そう断言せざるを得ない。
優勝した興南高校の島袋投手は普天間基地に隣接する宜野湾市、我如古主将、銘苅右翼手も辺野古基地建設予定地の名護市久志の出身である。野球少年とはいえ、基地問題を日常的に意識せざるを得ない街に生まれ育った選手たちである。彼らの活躍に対して当たり障りのない優勝コメントをノーテンキに出していた民主党幹部たちよ、今一度、沖縄に新基地建設を押し付けることの歴史的犯罪性を、他人事ではなく自分のこととして再認識すべき時ではないか。
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鳩山前首相の別荘での研修会や新人議員の囲い込みを狙った懇談会など、
民主党代表戦をめぐる報道に接して、
かつての自民党内での「国民不在の派閥争い」を思い出しました。
民主党が野党ならいざ知らず、この国のトップを決める選挙なのですから、
普天間問題をはじめ活発な議論をしてほしいものです。
岡留安則さんプロフィール
おかどめ やすのり1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。 HP「ポスト・噂の真相」
「癒しの島・沖縄の深層」
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