マガジン9
憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。
|「マガジン9」トップページへ|松本哉のびのび大作戦:バックナンバーへ|
2011-05-11up
松本哉ののびのび大作戦
第45回:原発冗談じゃない!! 今度は渋谷で超巨大サウンドデモが発生!
4月10日の高円寺に引き続いて、今度は5月7日に渋谷で超巨大な「原発やめろデモ!!!!!」が巻き起こってしまった! 原発に反対するデモを起こす理由は今さら書く必要もないと思うが、地震と津波で原発が吹き飛び、人も近寄れなくなるぐらい放射能がバラ撒かれるという大惨事になった。そうでなくても使い古し燃料の処理方法すらロクに決まってない。こんな人の手に負えないような未完成品の出来そこない発電所が、いまだに世の中にあること自体が不思議でしょうがない。そろそろみんな、うすうす感づいてるんだから、いいかげん「いや、もうやめた!」と言っちゃったほうが気が楽ってもんだ。
さて、そんなわけで渋谷デモも盛大に開催されてしまった! 惜しいことに午前中から昼過ぎにかけ雨が降ったのが唯一残念だったが、午後には何とか雨も上がり、無事開催ができた。
で、今回も準備段階からいろんな人から手伝いや出演希望の申し出や、応援メッセージなどが大量に寄せられた! おかげで、当日のデモ出発前の集会も相当な豪華メンバーになっており、たった1時間しかなかったのがもったいないぐらいだった。とりあえず、このメンツを見てくれ。
【演奏】
難波章浩(Hi-STANDARD)&YOSHIYA(RADIOTS)/チグリハーブ+高橋まこと(ex.BOØWY)+まどかまるこ+たぬ/ハ・ホンジン(from SEOUL)/藤波心(挨拶&歌)/ジンタらムータ+チンドン有志
【アピール】
染谷ゆみ(TOKYO油田2017/再生可能エネルギー)/Misao Redwolf(NO NUKES! PEACE DEMO In Iwaki, FUKUSHIMA)/高田久代(グリーンピースジャパン/放射能海洋汚染調査について)/坂田昌子(虔十の会代表/上関状況報告)・福島瑞穂(社民党党首)/宮台真司(社会学者)/氏家芙由子(環境エネルギー政策研究所(ISEP))/伊藤麻紀(eシフト/6.11超巨大デモ)
とりあえず、アピールでは、説得力ある演説から景気のいいアジテーションまで、だいぶ場を盛り上がらせた! 自然エネルギーについての話があったり、宮台氏が原発でひと儲けしてる会社の不買運動を呼び掛けたり、山口の上関原発や福島のいわきからのアピールもあったりと、かなり熱い集会だった。
さらに、演奏もヤバいことになっていた! 高円寺デモにも参加したという歌い手のチグリハーブさんがなんと元BOØWYの高橋まこと氏を引き連れて登場(BOØWY世代の自分としては腰が抜けるほどビックリしてサインをもらい忘れた)! そして最近、ブログなどで原発に関してもコメントしまくっている、若いのにやたらしっかりしている藤波心ちゃんも登場! さらに、最近、再結成を表明して話題になっているHi-STANDARDの難波さんらの『サマータイムブルース(RCサクセション)』で会場は「原発はいらねー」の大合唱!!! そのドサクサにまぎれて韓国のバムサム海賊団の友達のブルースギタリスト=ハ・ホンジンの演奏とマヌケ日本語でだいぶ笑いを取っていた。そして、集会最後には、高円寺デモに引き続いてジンタらムータの実にいい感じのチンドン・プロテストソングとともにデモに突入! う~ん、デモ出発前の集会としては、こんなにレベルの高いイベントがあっただろうか! 本当にもっと時間がほしかったぐらいだ。
で、いよいよ景気よく渋谷デモが開始! これまた運がよく、出発してすぐに雨も上がってきた。まずはジンタらムータ率いるチンドン部隊が先頭を進み、そのあとを、DJカー2台&バンドカー2台の計4台のサウンドカーが音楽とともに続き、その間にも太鼓部隊とか、プラカード部隊とか、古典的シュプレヒコール部隊とか、いろんな人たちが続く。今回も前回の高円寺デモと同様、若者だけじゃなく、オッサン&おばちゃんたちや老人から、子連れの父ちゃん母ちゃんたちまで幅広い年齢層だったし、海外からも白人、黒人、アジア人などいろんなところ出身の人たちもいた。動物も歩いてたし、日の丸を振りまくってる人から赤旗を振りまくってる人まで、みんないろんな考えで原発に反対しまくっていた。完全に意味不明の原発神輿まであった!
サウンドカーはどれもすごいメンツで盛りあがりまくり、人によってはサウンドカーの間を行ったり来たりで大忙しだった人も多かったみたいだ。普通に音楽のイベントとしても相当面白い感じなのに加え、「原発やめちまえ!」っていう強力なメッセージまで共有してるので、もうこれで盛り下がるわけがない! 究極の野外イベントはデモなのかもしれない! まあ、やはりこの超盛り上がりの様子も文章じゃ説明できないのがデモの醍醐味。残念ながらこれなかった人には、次回は目撃したほうがいいとしか言いようがない。次回までの間はyoutubeなどでチェックしてみてほしい。
『フジロッ久(仮)』やつらは盛り上げるのがやたらうまい
『RANGE & THE DIRTY HOSPITAL』渋谷の真ん中でとんでもない迫力!
109前。やたらと人が増えまくる!
福島からやって来た『BAND OF ACCUSE』! ハチ公前にて!
さて! こんちくしょう!
100%いいデモだったと言いたいところだが、1点だけ非常にけしからん事があった。それは、サウンドカーのうちの1台、「高円寺アナーキーオールスター号(←名前がいい)」で起こった。デモ序盤で高円寺号が「ねたのよい」の演奏を行いながら原宿駅のあたりに差し掛かったころ、ライブ中にもかかわらず、何を思ったのか警察がステージ前にやたらと割って入ってきた。デモが盛り上がらないようってことなのか、ステージと観衆(参加者)を引き離してきた。ひどい! デモ前にも警察には何度も足を運んで綿密にデモの打ち合わせをし、車の上でのライブもちゃんと許可も取ったし説明済みだったのに…。なに勝手なことし始めてんだ、おい! ライブの最中にいきなり割って入ってきたら、そりゃ揉めるにきまってるよ。いきなり押してきたから「なんだなんだ」「見えねえよ」「邪魔だよ!」などと参加者から声が上がる! で、さんざん押してきてモミクチャになったタイミングで「公務執行妨害!!!」だって。で、いきなりデモ参加者が警察に取り押さえられたりして計4名ほど捕まってしまったのだ!!! 「なんか物騒な奴が暴れて捕まったのか?」と思うかもしれないが、そんなことは全然ない! むしろとんだとばっちりだ。いやー、これヒドイね。「妨害」って、どっちが妨害してんだろ、まったく。
高円寺デモの時なんかは、特に混乱もなく良かった。杉並警察署員は、パンクとかハードコアのライブのこともよく知っているのか、その辺ちゃんとわきまえていて、モッシュやダイブが起こっても特に動じない(たまに巻き込まれるお巡りさんがいるが…)し、ちゃんとやっててくれた。それに引き換え、代々木署は結果的に完全に人の神経を逆なでするようなことばっかりやり始めてて、あれじゃ、初めてデモに来た人なんか怒るに決まってる。あれは完全に警察のデモ警備の作戦ミスだったね。こっちはむやみに騒ぎを起こしたいわけじゃないんだから、余計なことをしないでもらいたいもんだね…。
不当拘束に抗議し、アルジャジーラに送られたと思われるビデオ。バンドの正体は不明
で、そのトラブル後は、また気を取り直しライブ続行! その後はインディーズ界で話題のフジロッ久(仮)にバトンタッチし、原発に対する熱いメッセージとともに異常な盛り上がりになり、表参道が大変なことに!!!!!! ま、そんな感じでデモ隊は、各部隊ごとに独自の盛り上がり方で渋谷中心部へと進んでいった!
参加者数も、出発当初は雨のせいもあって3~4000人ぐらいだったと思うが、例によってtwitterやUstream中継を見て、急遽街に繰り出してくる人が続出! おまけに渋谷中心部のセンター街から109前、ハチ公前などを通るあたりで、その辺を歩いている人が大量に入ってくるなど、最後の最後にやたら人数が増え、最終的には軽く10000人を超え、またも高円寺に続き15000人に及ぶ人数になっていた! すごいすごい! 余談だが、警察発表の人数って何でああ少なく書くのかね…。今回も4000人とか5000人とか言ってたみたいだけど、それって出発直後にでも数えたのかね~。
デモ頻発作戦!
というわけで、またも大規模デモが発生してしまったわけだが、いま日本では空前の反原発デモブームが到来している! 東京以外にも名古屋、大阪、福岡はじめ大都市でも大規模デモが連発しているし、いままでデモが起こったりしないような小さい街でもデモが発生したりして、その人数も増える一方だ。「デモを起こしたいんですけど…」という人も続々と登場している。
その影響がどこまであるのかわからないが、この渋谷デモの前日には菅首相が「浜岡原発もとりあえず止めたほうがいい」と言い出し、デモ直後には中部電力もそれを受け入れ、ストップすることになった。廃炉ではなく当面止めるだけってことで、インチキのような気もするが、少しでも前に進んでいるところはいいことだ。海外メディアでも「文句を言わない日本人が声を上げ始めた!」と、驚き始めているぐらいで、ようやく世の中が動き出している雰囲気が出始めている。もちろん、デモだけで世の中が変わるってもんじゃないが、まだまだ意思表示はまったく足りないので、たまにはもうちょっと声を上げまくってしまうしかないね!
団塊世代の蜂起を待つ!
そうだ、もうちょっとおまけで一言…。いま、反原発デモの報道なんかを見ていると「若者が渋谷でデモ!」とか「若者パワーが炸裂」みたいな感じだ。確かに、ネットで広がったりしてるせいか若い人が多いかもしれないが、反原発運動=若者の運動ってのもどうもおかしな話だ。世代論というのは基本的に好きじゃないんだが、そもそも原発を日本に引っ張ってきたのは中曽根のオッサンをはじめとした、あの世代の連中だ。それに、原発を野放しにしておいたら日本社会全体が大打撃になりかねないので、これはもう全世代をあげて何とかしなきゃいけない話だ。
…で、よくよく考えたら、かつて数十年前に世の中にたてつきまくって、暴れまわっていた団塊世代がいるではないか! たぶん、みんな「いや~、俺も昔はやったけど、今は時代が違うからね…」とか「なんだかんだ言って自分も就職しちゃって、日本経済の甘い汁を吸ってしまったから、いまさら…」とか、「魂は捨ててないんだけど、そろそろ孫もできるしね」とか「最近は若い人たちが元気だから、がんばってもらって。私らはお迎えを待とうかねぇ」とか言い出してるに違いない。で、そんなことを言いながらムリヤリ買ったマイホームでマイカーの洗車をしている場合じゃない! いや、これはぜひとも立ち上がるしかない!! しかも、若い奴らのノリに無理に合わせたってしょうがない。こうなったら、白いギターを担いで街に繰り出して岡林信康あたりを歌いまくったり、派手なパンタロンをはいてウロウロし始めたり、ガリ版のビラを御茶ノ水駅前あたりでばら撒きだしたり、大量のジョン・レノンやオノ・ヨーコが街に繰り出したり、東電本社にバリケードを築いて立てこもって鎮圧されてみたり、挙句の果てには退職金をつぎ込んで超巨大サウンドカーを準備し、若い奴ら主導のハードコア・パンク・レゲエ・ヒップホップなどのデモ部隊を圧倒するようなフォークゲリラブロックを出現させたりしたら、まさに大変なことになるに違いない! 若い世代から文句ばかり言われてしょんぼりしている、眠れる獅子=団塊世代がついに決起するときが来た!!!! 頼む!!
よし! ってことで、総力戦で危なっかしくてしょうがない原発を何とかしよう!! いやいや、これは今後の展開が楽しみだ!!
*
超巨大デモ、渋谷へ!
そして、もちろんこれは終わりじゃなくて始まり。
社会を大きく変えるかもしれない「瞬間」を、
あなたも目撃しにいこう!!!
あの気持ちよさ、体験してみないとわかりません。
松本哉さんプロフィール
まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
「松本哉ののびのび大作戦」
最新10title
松本哉さん登場コンテンツ
- 2010-12-22日本で韓国で「のびのび大作戦」
【この人に聞きたい】
松本哉さんに聞いた
- 2008-01-09その1:路上を僕らの解放区に!
- 2008-01-16その2:消費するだけの街から文化は生まれない