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2013-02-06up
鈴木邦男の愛国問答
第118回
「日の丸・君が代」嫌い派と討論した
えっ、今回も「マガ9学校」か。と、思っちゃいました。「マガ9学校in大阪」だ。だって、討論会のテーマはこうだ。
「鈴木邦男と愛国問答=市民的不服従、君が代不起立を考える=」
マガ9の私の連載は「鈴木邦男の愛国問答」だ。「そこから取って今日のテーマにしました」と主催者も言う。でも主催は「市民社会フォーラム」だ。そこの第94回例会に呼ばれたのだ。前にもこの市民社会フォーラムに呼ばれたことがある。雨宮処凛さんと対談した。そして今回は教師や元教師の人達と「君が代」問題を考える討論会だ。
前に、『紙の爆弾』で、「君が代」不起立で処分された根津公子さんと対談したことがある。今回も、同じように処分された人と対談するのだと思っていた。「今日、鈴木さんと対談する人です」と、始まる前に紹介された。「よろしくお願いします。お手やわらかに」と挨拶した。2人で対談するのかと思ったら、もう1人紹介された。「えっ、3人でやるのか」と思っていたら、またもや1人。さらに1人。驚いた。6人もいるのだ。「6対1で闘ってもらいます」と主催者が言う。凄いことになった。
こんな「試合」は生まれて初めてだ。6人と闘うなんて。プロレスのようだな。アントニオ猪木は言った。「いつでも、どこでも、誰とでも闘う!」と。私もその闘魂にならって、「試合」に臨んだ。この日の案内状を見たら、こう書かれている。
<「これまでに何千回と日の丸を掲揚し、君が代を歌ってきた。私こそは世界一の愛国者」と豪語する、新右翼の鈴木邦男さんに、教育現場での「日の丸、君が代」強制についてお話しいただきます。ゲストは、卒業式での君が代不起立で大阪府人事委員会による処分を不服としてあらそっている現役教員・元教員をお招きして対談いただきます>
「現役教員・元教員」とあるから、2人かなと思った。せいぜい3人だろう。まさか6人が大挙して来るとは思わない。
会場は、梅田駅近くの教室だ。伊藤塾大阪梅田校401教室だ。司法試験を目指す人の学校だ。
初めに、「日の丸・君が代」嫌い派6人の報告がある。そして、「日の丸・君が代」好き派の私との間で激論が闘わされる。そういう熱い討論になるはずだった。でも、6人の報告を聞いているうちに、すっかり同情してしまい、つい「大変でしたね。私で出来ることがあればお手伝いいたします」と言っちゃった。「同情なんかされたくない!」と言われた。
でも、6人が皆、同じ考えではない。温度差がある。「日の丸・君が代は侵略戦争の血で汚れている。認められない」「別のものにすべきだ」「いや、別のものにしても、それが強制されたら同じことだ」「それよりも、日の丸・君が代の背後の天皇制が悪い。これをなくさない限り問題は解決しない」…と。
6人の中の「違い」を聞いてるだけでも面白かった。「面白い」と言っちゃ失礼かもしれないが、興味深かった。「君が代は天皇制を押しつける歌だ」「でも日の丸はいいかな」「いや、日の丸も悪い。侵略戦争に人々を駆り立てたのだ」…と言う。
しかし、「強制」に反対という点では一致している。それに、私だって「強制」には反対だ。強制されて、いやいや歌わされる。これでは「君が代」がかわいそうだ。「日の丸」だってかわいそうだ。
じゃ、私も「グループZAZA」に入れてもらおうかな。一緒に闘える。でも、向こうが嫌がるだろうな。そうだ、初め「案内状」には「協賛 グループZAZA」と書かれていたが、6人は、それに抗議。「ここに来たのは一人一人の意志だ。全体として協賛してるのではない」と言う。どうでもいい、小さな事だと私には思えるのだけど。
初め、「グループZAZA」と聞いた時、分からなかった。ロックのグループかと思った。ところが、日の丸・君が代の強制に反対する会だという。この日、出席した6人だけなのか。あるいは他にも何十人、何百人といるのだろうか。それにしても、「ZAZA」なんてローマ字にするから、分からない。「どういう意味なんですか?」と聞いたら教えてくれた。「君が代」不起立→立たない→座っている→座座→ZAZA。なんだそうな。分かりにくい。でも、「不服従・不起立」というのはいい。がんばって下さい。日の丸・君が代の「強制」反対では、私も一致してるんだから、一緒にやれることも多い。そう言いました。
今、自民党では、憲法改正を本気になってやろうとしている。天皇を象徴から元首にする。自衛隊を国防軍にする。さらに、「自民党憲法改正草案 第3条」は、こうだ。
<国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない>
いやだね。モロ「強制」だ。そんなことなどする必要があるのだろうか。危ない。だって、1999年、国旗・国歌が法律で決まった。「はっきりしなかったので、キチンと決めただけだ。強制はしない」と言っていた。しかし、教育基本法で強制した。法律になったら、どんどん一人歩きし、強制力になる。さらに憲法で明記されたら、どうなる。こんな「市民社会フォーラム」は「憲法違反」になる。不起立の人や、反対意見をいう人も「憲法違反」になる。おそろしい社会だ。
実は、この市民社会フォーラムの2日後、2月4日(月)にもテレビで話をした。テレビ朝日のCS放送、朝日ニュースター「ニュースの深層」だ。この日は収録で、放送は2月7日(木)の午後8時から9時だ。この「ニュースの深層」では、シリーズで「"これからの日本政治"を考える」をやっている。今まで、中島岳志さんや坂野潤治さんたちが出ている。私が出たのは第5回で、「世論の"右ブレ"は起きているのか」。キャスターは小田嶋隆さん。進行は武内絵美アナウンサー。なかなかいい番組でした。私が、みやま荘で仕事してる様子も出ている。事前に取材されたのだ。憲法、愛国心を中心に、じっくりと話をしました。打ち合わせの時に、ディレクターの人が言っていた。「マガ9の連載を読んでますよ。マガ9に鈴木さんが連載するようになったんですね。時代は変わりましたね。そんな心境の変化も含めて話して下さい」と言う。マガ9を読んで、テレビに出てもらおうと思ったという。じゃ、ここも「マガ9学校」か。「マガ9学校inテレ朝」だ。
*
日の丸・君が代を愛する「愛国者」鈴木さんですが、
だからこそ強制には反対、なのだそう。
そういえば、初めて鈴木さんに「マガ9」に登場いただいたときのインタビューも、
「愛国とは、強制されるものじゃない」とのタイトルで記事になったのでした。
いまや、強制されようとしている「愛国」。
皆さんは、どう思いますか?
*
鈴木邦男さんプロフィール
すずき くにお1943年福島県に生まれる。1967年、早稲田大学政治経済学部卒業。同大学院中退後、サンケイ新聞社入社。学生時代から右翼・民族運動に関わる。1972年に「一水会」を結成。1999年まで代表を務め、現在は顧問。テロを否定して「あくまで言論で闘うべき」と主張。愛国心、表現の自由などについてもいわゆる既存の「右翼」思想の枠にははまらない、独自の主張を展開している。著書に『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)、『公安警察の手口』(ちくま新書)、『言論の覚悟』(創出版)、『失敗の愛国心』(理論社)など多数。近著に『右翼は言論の敵か』(ちくま新書)がある。 HP「鈴木邦男をぶっとばせ!」
「鈴木邦男の愛国問答」
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【この人に聞きたい】
鈴木邦男さんに聞いた
- 2007-07-25その1:右翼運動と日本国憲法
- 2007-08-01その2:愛国とは、強要されるものじゃない
鈴木邦男さんの本
「マガ9」コンテンツ
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