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2013-06-12up
佐藤潤一の「カエルの公式」
第27回
インドネシア大統領がグリーンピースと協力。「敵対」から態度を180度変えさせた「ドミノ戦略」とは?
こんにちは。
インドネシア大統領が家族を連れて「虹の戦士号」に乗船先週の6月7日、インドネシアのユドヨノ大統領が、ジャカルタに寄港したグリーンピースの船「虹の戦士号」を訪れました。 ![]() 虹の戦士号を訪れたユドヨノ大統領(右)と、グリーンピース・インターナショナル事務局長クミ・ナイドゥ(左)
とても友好的な写真に見えますが、数年前までの状況はまったく異なっていました。
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ユドヨノ大統領は、「虹の戦士号」をジャカルタ港に招き入れただけではなく、インドネシア政府の閣僚たちのみならず、家族も連れて「虹の戦士号」に乗船し、子供の世代のために生物多様性を守る必要があると訴えたのです。
グリーンピースの熱帯雨林保護、10年間の道のり地球に残された熱帯雨林の約10%がインドネシア一国に存在すると言われます。 ![]()
しかし、その熱帯雨林は紙、パーム油、鉱物などを生産するために世界でもっとも速いスピードで伐採され続けてきました。その結果、インドネシア国土の82%を覆っていた熱帯雨林は、今ではその国土の42%を覆うのみとなっています。
「ドミノ戦略」、どこの誰に働きかけるのかがカギ
さて、グリーンピースがインドネシア政府にその森林政策を変えてもらいたいと願ったときに働きかけた先はどこだったのでしょうか?
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上の図のように、グリーンピースは、世界に広がる市民や消費者のネットワークを通じてネスレ、ユニリーバ、ダノン、マテル、レゴなどの大手企業に、インドネシアの森林伐採企業との取引をやめてもらうようにキャンペーンを行い、実際に取引を中止させることに成功しました。
(*)2013年6月10日現在、グリーンピースは、APP社が2013年2月に発表した「森林保護に関する方針」の採用をもって、インドネシアで森林破壊を続けてきたAPP社に対するキャンペーンを一時的に停止しています。しかし、APP社が誓約を実現していかない場合には、キャンペーンを再開することもあります。詳しくは"Greenpeace Update: Asia Pulp & Paper’s new commitments to end deforestation" をご覧ください。 これらの企業は、日本で言う巨大財閥の子会社たち。政府に対しても、グリーンピースより発言力があるわけです(残念ですが、現実です)。 ![]() インドネシアの大企業が方針を転換しはじめたことで、ユドヨノ大統領も熱帯雨林保護に方針を転換してきたというわけです。
変えたい対象に影響力のある人、企業、団体は誰なのか。さらに、その人、企業、団体に影響を与えられるのは誰なのか。
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「誰に」「どうやって」働きかけるのが、
一番効果的なのか。
何のキャンペーンやプロジェクトをやるときにも、
常に頭においておくべきことといえそう。
いったん「ドミノ倒し」が起これば、その影響力は甚大です。

佐藤潤一さんプロフィール
さとう じゅんいち
グリーンピース・ジャパン事務局長。1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中に、NGO「リザルツ」の活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato
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