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2012-08-08up
佐藤潤一の「カエルの公式」
「チーム脱原発」が避けるべき3つのトラップ
チーム脱原発
さあ、夏本番。オリンピックも盛り上がっていますねー。
快進撃を続けるサッカー日本代表ですが、脱原発を願う市民をメンバーとした「チーム脱原発」もサッカー代表チームのように「チームワーク」、「しつこさ」、「瞬発力」を活かして、野田首相に「原発ゼロ」を確約させていきたいところです。
いよいよ重大な局面を迎えるエネルギー政策議論。
今日は、「チーム脱原発」がこの重要な局面で最大限に力を発揮できるように、ぜひ避けたい「市民活動の3つのトラップ」についてご紹介します。
市民活動の3つのトラップ
「トラップ」とは「罠」という意味ですが、ここでは「効果的な活動を妨げる要因」という意味で使っています。
NGOの活動や市民活動にはたくさんのトラップが存在しますが、今日紹介するのは以下の代表的な3つのトラップです。
1. 「目標忘れちゃって仲間でワイワイ」トラップ
2. 「方法が気に入らなくて仲間割れ」トラップ
3. 「勉強しすぎて混乱」トラップ
それでは、それぞれ個別に説明していきます。
1.「目標忘れちゃって仲間でワイワイ」トラップ
「何を目標に活動していますか」と聞かれたら何と答えますか?
「そんな簡単な質問」と思うかもしれませんが、改めて活動している仲間たちに聞いてみると、「え、そうだったの?」と意外な答えが返ってくる場合も多いようです。
例えば、「脱原発を実現する」のか「放射能汚染から子どもをまもる」のか、原発をめぐる活動でも目標をどこに置くのかで活動方法も異なります。「手法をめぐって、もめることが多くなった」とか「最近、仲間との情報交換(飲み会)で集まることが目的化している」なんて感じたら、目標が何かを再確認してみることをお勧めします。
サッカー代表チームは「金メダル」という明確かつ魅力的な目標が共有されているので、チームの力が最大限発揮できているのでしょう。
2.「方法が気に入らなくて仲間割れ」トラップ
意外と深刻なのがこの「仲間割れトラップ」です。
社会問題を解決しようとするときに、目標のずれ、手法の違いが起こるのは当たり前です。初期には大きな問題にはならないのですが、活動に効果がでてくるころになると、その違いから溝が広がりお互いを批判しあうなんてことにも発展してしまいます。
これがせっかくの労力を仲間割れに費やしてしまうという「仲間割れトラップ」です。
脱原発を目指す活動も、デモ、署名、集会、勉強会などが様々な時期に、様々な対象に向けて行われます。それらの活動のうち、結果としてどれが一番効果的になるかは予想が難しいものです。活動の効果は政治的要因などの外部的要因にも大きく左右されるからです。
「あの活動は効果的ではない」「私たちの活動がやりにくくなる」という排除の原理では無駄な時間を費やすばかりで目標は遠ざかるばかり。多様な活動を多様な人たちが行う多様性こそが市民活動に「持久力」と「強さ」を生み出します。
サッカー代表チームも、それぞれの選手に役割があります。各選手が攻撃、守備などの役割を与えられているからチームとして機能するのです。全員が攻撃ばかりに参加していてもまったく脅威ではありません。チームメイトが不調な時もあるでしょう。意見が異なることもあります。そんな時でも、共有している目標に向けて力を合わせていきましょう。
今はツイッターやFacebookなどのSNSが発達しているので、ちょっとした発言もダイレクトに当事者に届くインフラが整っています。不用意に「仲間割れトラップ」にはまってしまうこともありますのでより一層の注意が必要です。
もちろん、誹謗中傷ではない建設的な意見交換は活発にされるべきですし、これを排除してしまっては本来必要な多様性が損なわれてしまいます。コツは、チームメイトであるという意識でお互い敬意をもって議論するということでしょうか。
3.「勉強しすぎて混乱」トラップ
最後のトラップは、「勉強しすぎて混乱」トラップです。
例えば、「放射能がいやだ」と「脱原発」のために声を挙げたいと思うと、原発の技術的なことだったり、自然エネルギーのことだったり、知らないことが多いことに気が付きます。
様々な団体が勉強会やセミナーを開催したりして、わかりやすく情報を伝えてくれていますが、普通の市民が、科学者や業界の専門家と同等レベルになることはほとんど無理な話です。
勉強すると、大抵は「知らないことがもっとある」ことに気がついて「私には無理」とあきらめてしまうか、周りの仲間が離れていってしまう傾向が強いです。勉強して知れば知るほど混乱してしまい、行動することを躊躇してしまう、これが「もっと知りたい、勉強」トラップです。
問題点などをわかりやすく話せる程度の勉強は重要ですが、「市民は市民のフィールドで戦う」のがもっとも効果的です。
「放射能はいやだ」「福島で被害を受けた人たちのことを考えて」「未来に安全・安心な世界を残したい」という心から出てくる訴えを議員に電話したり、デモに参加して訴えたり、友達に伝えたり、新聞に投稿したりすることこそが市民のフィールドです。
官邸前のデモで「再稼働反対」と唱え続ける活動が支持を得て、政治に影響を与え始めているのは、シンプルな訴えと行動に共感できる人が多いからでしょう。市民に求められているのは、知識を深め続けることではなく、行動で民意を示すことです。
もしあなたの活動が勉強会やセミナーを開催することに特化しているけれど、参加者が毎回同じような人ばかりという活動を続けている場合は「勉強し過ぎて混乱トラップ」にはまっているかもしれません。参加者が学ぶだけではなく、学んだことを活かして行動につなげていく方法を模索してみてはいかがでしょうか? 勉強会の最後に、地元議員に意見を書いたハガキを送ってもらうなんていうのも良いと思います。
以上が代表的な3つのトラップです。
他にもたくさんトラップはありますが、まずはこれらをもとに活動を振り返ってみてはいかがでしょうか。
余談ですが、去年の夏グリーンピースでも、チームワークを意識しようと、なでしこジャパンにあやかって『グリしこジャパン』(グリーンピースの最初の二文字を取って)をイメージしようと提案しました。冷たいスタッフの視線を感じつつも、チームワークはよくなったと思います。ただ、予想通り名前は根付きませんでした(苦笑)…。
8月25日に山本太郎さんとワークショップします!
最後に、8月25日(土)に「非暴力行動」についてのワークショップを山本太郎さんと一緒に行います。「非暴力行動ってなんだ」という知識から、具体的な行動につなげていけるような場にしていきます。ぜひぜひご参加ください。 詳細はこちらから
どれも「ありそう」と思えてしまう「3つのトラップ」。
こんなことで、途中で活動停止なんてことになったら、
あまりにももったいない。
もちろん脱原発だけではなく、
何を目的とした活動であっても、
常に振り返りを繰り返しておきたいものです。
佐藤潤一さんプロフィール
さとう じゅんいち グリーンピース・ジャパン事務局長。1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中に、NGO「リザルツ」の活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato
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