マガジン9

憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。

「マガジン9」トップページへマガ9レビュー:バックナンバーへ

2013-02-13up

マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.212

※公式サイトにリンクしてます

球界消滅

(本城雅人/文藝春秋)

 球春到来、である。
 キャンプ、オープン戦、そして今年は3年に1度のWBCを経て、3月29日にはペナントレースが開幕する。そんな季節を今か今かと待ち望んでいるすべてのプロ野球ファンに贈りたいのが、この『球界消滅』だ。
 社会問題に関心のあるマガ9読者にはおなじみの「日本はアメリカの属国である」という枠組み。これを現在のプロ野球界にあてはめてみたら…。端的に言えば、そういうお話である。

 ビジネスとして破綻しかけた日本の12球団が3球団ずつ合併して4球団となり、メジャーリーグの傘下に入る。将来的には韓国や中国も参加して、アメリカンリーグの「極東地区」を構成するのである。
 わざわざ海を渡らずとも(もちろんその競争はいまよりずっと厳しくなるが)、日本人選手も1軍に残れば全員メジャーリーガーとなり、ワールドシリーズを目指してヤンキースやレッドソックスとだって対戦する。

 「えっ、日本に4球団しかないってことは…、オレの愛する○○○○は消滅してしまうのか!!」と憤る一方で、「イチローやジーターのいるヤンキースが毎年1度は日本に来て試合をしてくれるのか」というワクワク感も頭をもたげる。野球ファンには実に困った状況がやってくるのだ。

 主人公となるのは、日本の弱小球団で20代ながら副GMを務める大野俊太郎。彼の夢はメジャーリーグでGMになることであり、自分が選手を集めてつくった球団の消滅と自らの夢の実現の間で気持ちは揺れ動く。それは選手やファンも同様で、不安と期待が入り混じったどうにも割り切れないもやもや感が通奏低音のように鳴り響く。

 作者の本城雅人さんが「世論を二分するような小説を書きたかった」と語っているように、大リーグと合併するか否かの二者択一を迫りながら、どちらが「正解」といった描き方をしているわけではない。
 とはいえ、現在の日本プロ野球界が抱える問題点を鋭く浮かび上がらせることで(審判員のエピソードなど渋いところもついてくる)、リアリティは十二分に感じさせる。実在と思われる人物(たとえば某球団の名物オーナーとか)も多数登場するので、プロ野球ファンは現実の問題として読むことができる。

 で、日本のプロ野球ファンのみなさんは、この問い――衰退する日本のプロ野球を守るのか、メジャーと合併して新たなプロ野球をつくっていくのか――にどう答えるのだろうか。
 ちなみにぼくは、メジャーとの合併話を取り仕切る牛島輝也の冷徹な議論に押し切られ、そうなったらそうなったで仕方ないのかなー、などと風見鶏的な考えでいるのですが…。

 ぜひNHKで重厚なドラマにしていただき(実はもう企画が動き出していたりして!)、多くのプロ野球ファンの意見を聞いてみたい。だってこの問いは、別にプロ野球に限った話ではないと思うし、プロ野球をネタにすることで多くの人の関心を集めることができると思うから。

 あ、その際、ぼくの配役希望は以下の通りです。
 プロデューサーさま、よろしくお願いいたします。

大野俊太郎(20代、弱小球団の副GM)…岡田将生
牛島輝也(某新聞社国際事業室長、大リーグとの合併話の中心人物)…中井貴一
羽佐間章宏(牛島と同期の某新聞社運動部デスク)…佐藤浩一
京極四郎(某新聞社社長にして某球団オーナー)…ビートたけし
磯貝蓮二(俊太郎のチームの主軸打者、元メジャーリーガー)…磯部公一(元近鉄、楽天)
倉知徹(仙台に本拠地を置く球団の監督、元選手会会長)…古田敦也(元ヤクルト)

(山下太郎)

googleサイト内検索
カスタム検索
マガ9レビュー
最新10title

バックナンバー一覧へ→

マガ9のメルマガ
メルマガ9

↑メールアドレスを入力して、ぜひ『メルマガ9』にご登録ください。毎週、更新ニュースを送らせていただきます。/Powered by まぐまぐ

登録解除はこちらから↓

マガ9のブログパーツ
マガ9ブログパーツ

「マガジン9」の更新項目がまるわかり!ぜひ、あなたのブログにも設置してください。