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2012-12-19up
マガ9レビュー
本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。
vol.208※公式サイトにリンクしてます
WORKERS
ワーカーズ
(2012年/森 康行監督)
雇う、雇われるという関係ではなく、働く者がお互い平等な立場で仕事をすることを理念とする労働者協同組合(ワーカーズコープ)。自分たちで仕事をつくり、自分たちでその進め方を決め、自分たちで運営していくメンバーたちの姿を描いたのがこのドキュメンタリーである。
雇用・被雇用が発生しない働き方といわれても、ぴんとこない人も多いだろう。かくいう私もその一人なのだが、働く者が自ら出資して事業を立ち上げる=みんなが対等な議決権をもった株主として一緒に働く、みたいなイメージをもった。
映画の舞台は東京・下町の墨田区だ。
組合員が担う主な事業は子育てや介護など、行政がフォローしきれない細かいケア。社会的弱者をサポートする公共性の高い分野である。
登場するのは、働くお母さんのために19~20時まで子供たちを預かることを検討する区の子育て担当施設の女性のセンター長、紆余曲折の人生を経て高齢者向けの体操やレクリエーションを企画・実践する元教師の男性、介護事業を立ち上げて地域を回るかつては家政婦をしていた人など。
彼、彼女たちの仕事は地域の人々も巻き込んだコミュニティづくりの役割も果たす。要介護の母親を抱え、自分も障害者である女性の「近所の人に助けられないと生きていけない」との明るい言葉が印象的だ。他人に頼ることを後ろめたく思う必要がなく、周囲の人々が自然に呼応する町のあり方がこれからますます求められる。
冒頭をはじめ、途中で何度か挿入される芸人、松元ヒロの漫談が淡々とした映像に笑いのアクセントを与えてくれる。宮崎美子のナレーションからは語り手の誠実さが伝わってくるようだ。
挿入される音楽はオーソドクス、意表をつくような表現手法はとられない。といって啓蒙的な映画ではなく、真面目な映像に向かい合っていると、自分がその現場に関わっているような錯覚を抱くのである。スクリーンの向こうから、そこの空気が感じられるようなドキュメンタリーはそうそうない。
本作品、新年1月下旬に東京の東中野ポレポレでの上映が内定しているそうだ。新しい働き方に関心のある方はぜひ足を運んでほしい。
(芳地隆之)
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