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2012-12-05up

マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.207

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自然エネルギー革命をはじめよう
地域でつくるみんなの電力

(高橋真樹著/大月書店)

 フードマイレージという考え方がある。食物がどのくらいの距離を運ばれてきたのかを表す指標だ。その数字が大きければ、流通過程は複雑になり、つくり手の顔は遠のいていく。安心・安全とは反比例に伸びる数値である。

 農産物は「地産地消」が望ましいが、日々の生活に欠かせないエネルギーも同じだろう。遠くの原発でつくられた電力ではなく、地元の自然エネルギーによるそれを使おうというエネルギー・マイレージ(という言葉があれば、だが)の思想と実践は3・11後、全国各地で見られるようになった。

 自然エネルギーというと、私たちはまず太陽パネルや風車を連想しがちだが、本書はそれらだけでなく、木質ペレットや地熱など、森林が豊かで、火山の多い日本の資源を効率的に使った試みにも目を配る。たとえば宮城県の「日本の森 バイオマスネットワーク」は石油やガスの供給が遮断された被災地にペレットを運び、被災者の方々に暖を届けた。長崎県雲仙市の小浜温泉では、高温のお湯を発電に使う実験を行っている。

 日本の再生可能エネルギー供給のうち、実際に日本で活用されてきたのは小水力、地熱、太陽熱の3つで、そのシェアは63%であるという。「日本は水の国であり、火の国」(千葉大学・倉坂秀史教授)なのである。私たちは自分たちの身の回りにある資源をまだまだ活用しきれていない。このことを本書は教えてくれる。

 そして何より読んでいて楽しい。

 エネルギー・シフトとは、反原発に留まるものではない。地域の人々が自らエネルギーを生産・調達することで雇用を生み、お金の流れを変え、ひいては地域の経済的自立を促すものなのである。電力不足によって日本経済の国際競争力が低下するといった恫喝的な口調の本音は、従来の日本の構造を変えたくないというところにあるのではないか。「原発が止まれば、銀行や保険会社をはじめ、電力会社に出資していた企業に損失が出る」からかもしれない。四半期先の業績を超えた先の未来を見ようとしない発想だ。

 来る衆議院選で「日本を変えるッ!」と主張する候補者の、原発に対するスタンスに注目である。そこで曖昧な物言いに終始する人は、たぶん本気で日本を変える気はない。そこのところはきちんと見ておきたいと思う。

(芳地隆之)

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