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2010-11-24up
マガ9レビュー
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「戦後」を点検する
保阪正康+半藤一利/講談社現代新書昭和史を語らせるに、両氏の組み合わせを超えるものはないだろう。当サイトでも紹介した前著「『昭和』を点検する」において、保阪氏と半藤氏は、いつくかのキーワードを足がかりに、戦前・戦中の昭和を語った。本書でも6つのテーマに分けて論じられており、うち第一章が「いったい、いつまでが『戦後』なのか」である。
私たちはしばしば戦前・戦中・戦後という歴史のくくり方をする。それだけ65年前の敗戦は日本国民に大きなインパクトを与えたということだ。いまも様々な見方があるからこそ、死語にならずに生き続けている。
半藤氏は近代日本の四十年周期説を唱える。京都の朝廷が開国をやむなく認めた1865年からの40年は、国を挙げて営々孜々と努力して日露戦争に勝利するまでの時代だった。その次の40年は、領土拡張の果ての太平洋戦争敗北にいたる日本の軍国主義の終わりまで。まさに「国をつくるのにも四十年、国を滅ぼすにも四十年」(半藤氏)である。
その後の40年は、日本が独立を回復した1947年から始まる「成長と繁栄」という本書で主に語られる時代だ。とはいえ、東京裁判から神武景気、安保闘争、そして日中友好――と振り返っただけも、多くの紆余曲折を経た歴史であったことがわかる。戦前・戦中を語るよりも難しいかもしれない出来事の数々を、博学の2人が対話で掘り込んでいく様は刺激的だ。
本書の最後では、戦後四半世紀以上を経て日本に帰ってきた2人の日本兵、横井庄一さんと小野田寛郎さんが取り上げられる。グアム島での横井さんには「死んでたまるか」「生きたい」という思いが貫かれていた。陸軍中野学校出身の小野田さんは軍人としての任務を全うするという強い意志をもって、フィリピンのルバング島で生きた。そして横井さんが経済成長を続ける戦後日本にきわめて適合的であったのに対し、小野田さんは豊かで平和な日本に強い違和感を抱いた。保坂氏は両者の違いに注目し、こう述べる。
「横井さんの視点と小野田さんの視点をもつように心がけること、つまりここを土台に発想を進めていくと、日本人の『戦後』が見えるように思うのですが……」
半藤氏の四十年周期説に従えば、私たちは1992年のバブル崩壊以降の衰退と滅亡へ向かいつつある。この危機を回避できるかどうか。それは私たちがどのように戦後を評価するかにかかっているのではないか。本書を読むと、そう思えてくる。
(芳地隆之)
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