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2010-08-25up
マガ9レビュー
本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。
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マイ・ライフ、マイ・ファミリー
2007年米国/タマラ・ジェンキンス監督アメリカ東海岸でそれぞれに暮らす兄妹のもとに、突然、アリゾナに住む父親が認知症になったとの知らせがくる。兄のジョン、妹のウェンディはコートの必要なニューヨークから、シャツ一枚でも汗ばむような中西部へと飛ぶ。そこには2人が見たことのない父親の姿があった。
兄妹の母親は2人が幼いころ、育児を放棄して家を出てしまい、ジョンとウェンディは強圧的な父親によって育てられた。
幼少のときに受けた2人の傷は、現在の生活にも影響している。大学で演劇学を教えるジョンは40才を過ぎても結婚に踏み切れない。一方、38才のウェンディは派遣社員として働きながら、劇作家を目指しているが、妻子ある年上の男性と惰性的な不倫を続けている。
不摂生による肥満、身体にきたす変調、現状への焦り、そして老齢となった親の介護など、中年の域に達した者であれば、この映画のなかに、いくつもの身につまされるシーンを見出すだろう。
父親はジョンの家の近くにある老人ホームへ入居することになるのだが、施設の環境や父親のケアを巡って兄と妹はときにぶつかり合う。
ウェンディを演じるローラ・リニーがいい(ジョン役のフィリップ・シーモア・ホフマンは職人芸の域に達している)。
かつての横暴な父を恨みつつ、現在の姿に同情を抱いて涙を流し、大学教授の兄への対抗心から、自分の書いた戯曲が有名財団の助成対象になったと嘘をつく。冴えない女性像をうまく演じるのだが、過去と正面から向かいあうことを決める終盤からは、とてもチャーミングになっていく。女性監督(タマラ・ジェンキンス)ならではの演出だと思う。
すべてを見終わった後、もう一度、ファーストシーンに戻ってみてほしい。青い空とヤシの木、そして区画整理された住宅地と道路――アリゾナの荒野につくられた清潔な住宅地で、エクササイズをやる老人たちの姿は何を語っているのか。そんな想像をしてみたくなる。
日本では劇場未公開。そうした作品がDVDで観られる。得した気分だ。
(芳地隆之)
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