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2011-06-29up
おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」
第9回
「脱原発裁判&脱原発株主総会」
い~ち、に~い、さ~ん、ダーっツ原発!! というようなおじいさまにお会いしましたよ☆
北海道からいらしてお一人で福島原発差し止め訴訟を起こした方、前川宗廣さん。6月27日に、東京地裁で第一回公判がありましたので、走って行ってきました。このことをいっぱい広めてね、ということで訴状や答弁書も頂きましたよ☆
訴状の被告は、東京電力、清水正孝社長。そして、もう1つの被告は国! 国って書いてあるのよ~斬新。代表者として江田五月法務大臣。
請求の趣旨は、東電にも国にも、福島第一原発の1号機~6号機、福島第二原発の1号機~4号機の運転差し止め。
請求の理由は、国も東電も原発事故を想定外としたのは、危機管理能力の低さのあらわれなので、原発は止めるべし。そして福島県民の基本的人権が守られてない、情報の隠蔽が多々見られるなども請求の理由でした。
公判自体は10分弱で終わりました。あっさり。ま、第一回だし。けど610号法廷は傍聴人でいっぱい、といっても42人しか入らないのですが。
前川さんが答弁を読み上げられて、東電も前川さんも弁論を続行、ということで次回は8月25日(木)13時半~@530号法廷ですよ、という内容でした。
終わって、前川さんにお話を伺いに! 北海道の北広島市の方。神棚やお仏壇を扱ってらっしゃる自営業の方ですって。お子さんはいらっしゃらないんだけど、仲良しの奥様がいらして、奥様が素敵な答弁書を考えてくださったんですって。訴訟を起こした理由は、
「福島に行ってビックリしたから。もともと僕は原子力は容認してたんだけど、あんなに人も土地も痛めつける電力はいらないねぇ。日本中の原発が無くなればいいな、と思って、訴訟を起こせねえかな、と考えて。あのね、みんな僕に続いてくれたらいいんだ。原発を止める訴訟の起こし方と道筋を作るからさ、そしてネットとかいうのにも載せて、マニ、マニ、(マニュアルですか?)そうそれ! マニアル作るから、みんなたくさん訴訟を起こしたらいいんじゃないか?」
北海道の「巨人」! 前川さん
なんとも軽やかで素敵なおじいさまでしたよ☆ なんにもバックも支援者の方もついてらっしゃらなくって!
けどアドバイザーはいらっしゃいました。アドバイザー「藤田先生になんでも聞いてるんだぁ」。アドバイザーをされた藤田正人弁護士にもお伺いしました。
藤田先生:「僕はなんにもしてませんよ、ほんと」
えー? では前川さんとの出会いは?
藤田先生:「あのね、東京地裁の前で裁判員制度についてのビラを配っていたら、前川さんがウロウロしてたの。どうしたんですか? って聞いたら、裁判を起こしにきたんだけども、どうやったらいいかわかんないんだ、どこに申し込んだらいいの? って聞かれて。どなたか弁護士さんにご相談なさったら、と言ったら、じゃ誰か紹介してください、と言われて。誰に紹介しようかと考えてたら、ビラを配っていた仲間の一人が、この人弁護士ですよ、とバラすからさ、そのまま相談のっちゃった」
…な、な、なんか素敵な出会いね☆ いいわこの軽やかさ!
でも先生、みんなが裁判起こしたらいいのに、っていっても、肝心の裁判費用のほうはおいくら?
「原発1機につき(1機ごとなんですって!)1万4千円、そして郵便切手代が6400円で、それ掛ける10機だから…」
そっか、弁護士費用が入ってないので案外お安いのね? でも1機ごとっていうことは、1機だけの訴訟も可能?
「もちろん!」
ということは、何人かで、1機ずつ請け負っての裁判もあり?
「それももちろんできます」
なるほど、では2万ちょっとで原発差し止め訴訟が起こせるということが分かりましたよー☆ ビックリするくらい、訴訟がたくさん起こっても面白いわね?
そして! 同じように今、低額でできる脱原発アクションの1つに、東京電力の株主になるというやり方もあります。3万円ちょっとで100株買えちゃうからね! 株主になって総会に出て、脱原発を訴えるというアクション。
そんな方々がいらっしゃるかも? と思い、6月28日は東京電力株主総会に走ってきましたよ☆
総会前と総会後の株主の方々にたっくさんお話を伺いました。
総会前は「原発推進か反対かは、東電の弁明を聞いてから判断する、そのために今日は来た!」という方々が多くって。以前からの株主だけれども、今回初めて総会に来た、という方も多数いらっしゃいました。
でも総会後は! 「原発が是か非か、というより、東京電力は原発を扱う器じゃあない!」という声ばっかり。「僕は原子力はいいと思うけど、今の東電にはまかせられないね、原発は怖いよ! 東電が扱うのは怖いよ!」とかね。
総会前は、本当に、今日はしっかりと話を聞かねば! という方々ばっかりだったの。全く脱原発の方には当たらなかったのよ?
「収束するための工程表の道筋を知りたい」(70代男性)
「詳しい実態を直接聞いて考えたい」(60代男性)
「原発対策を聞きたい」(30代男性)
本当にそんな方々ばっかり。
株主のみなさんにインタビュー。「マコちゃんはお一人お一人に本当に丁寧にお話しを伺ってましたよ」(ケン)
その中でお一人、興味深い方がおられました。お話ししていて、あら、東電のOBの方? と思い、お聞きしたら、
「言いたくない」。
でも、
「東電の株は全く売らなかったから、今の重役くらいの株は持っている」
「事故後に幹部が家に謝りにきたけど、怒鳴りつけてやった」
「俺が働いていた時分はこんな馬鹿げたことになるはずなかった!」
「電気屋が電気が無いなんて、こんな情け無いことはない!」
などなど、限りなくOBの方っぽかったです。
そして、原発プラントにお詳しい! 絶対温度、マイナス270度の概念とか、あんまり理解できませんでした、ごめんなさい。けど、名言多かったのよ!
「あのな、人が歩いてたって、人にぶつかることがあるんだよ、どんなに気をつけててもな! 絶対安全なんてないんだ! 外にはそう言っててもな、技術屋はそんなこと考えちゃいけねんだ!
なんで東電はどんどん安全装置を外したんだ? なんで保険も掛けてなかったんだ? 俺んときはちゃんと掛けてたよ! 昔はな、車でも保険に入らなくても運転できたさ、でも、今は強制的に保険に入らないと車も運転できないだろうが。なんで保険をわざわざやめるんだ?
ディーゼルでも何もかもな、10年たったら新しく作らなきゃダメだ、と俺ずっと言ってきたんだよ。言ったってな、上が聞いてくんないんだよ! 全部全部、金がかかるから、でダメなんだよ! 東電はな、みな優秀で一番いい会社だったよ、でも、もともとがダメだ。津波が来る前にダメだよ。想定外とか、1000年に一度とかいろいろ嘘言ってほんとに申し訳ないよ! 当たり前のことをやってダメだった、というのは明らかに失敗なんだよ」
メモった範囲でこれだけのことはおっしゃってました。もう腰はとても曲がってすごく小さくなってらしたおじいさま(80代)で、歩きながらずうっとお話ししてくださいました。
それで、総会が終わる前にパラパラと帰られる方々にもお聞きしました。めちゃくちゃ長かったからね! 6時間超えだよ、そりゃお腹も減るってー。
「くだらない! 時間のムダだから帰る!」そういう方々がほとんど。でもお一人、私がお話を伺いながら泣いてしまった方がいらして。年配の女性で、途中で出られてトボトボ歩いておられたんです。
「ダメですわ…もう全然あきません…。私はね…原子力で子供たちが働いていてね…だから株を買っただけなんです…。ずうっとずうっとね、一生懸命、本当に一生懸命働いていたんです…。…それだけなんです…。
でもね…私…(震災後に)やめるように言いました…。子供たちにね…退職願いを書くように言ったんです…。本当に一生懸命ね…やってきただけなんですけどね…。どんないい案を出しても、上の人がとってくれなかった、と何度も聞きました…。もっといいやめ方をさせてやりたかったんですけどね…あきません…。
もう、本当にあきません…。悔しいです…本当に…。(総会に)最後までいててもね…もう、悲しくなるだけだから…」
お話ししながら、その方も涙を流しておられました。私と2人で泣きながら歩いていまして、ケンパルはどこ? 今、撮ってる? と思ったら、彼は一歩後ろで号泣してしゃくりあげてましたよ! 役立たずぅ!
その他、
「5000万損した! 2万1千500株持ってるよ! でも原発はこわいね、いらないよ。だって扱ってる人間がバカだから…」(70代男性)
「経営陣の発言を聞きにきたんだけど、責任ある言葉は一切無かったわね~。もう原発はいらないわ、危ないわよ、キラキラした電気ばかりの世の中が異常だったのよね」(60代女性)
「俺はね、事故の賠償が免責かどうかを聞きたかったんだ。天災だから原発事故は免責とかおかしくないか? 何兆円かゼロかなんてそんな話あるか? 国と一体になって負担すべきだよ。ま、俺は損するだろうけど、ここまで損したからもう一緒だ。損したうえに、卑怯な会社の片棒担ぎたくないよな」(60代男性)
「今年の総会はお互いバカだったね。株主も役員もバカだ。茶番だったよ。今まではお互いもっときちんとしていたよ。反論も説明もきちんとあったよ」(70代男性)
「もうね、大株主の委任状を取ってるとかで、なんの採決もないよ、やりたい放題だよ。前のほうの席には総会屋がいっぱい座っていてね、僕は始まる45分前に入ったけど、前のほうの席には全部荷物が置いてあったよ。そして、そいつらが東電側の意見を全部凄い拍手で大賛成さ。第3号議案の採決も、明らかに賛成票が多くても、やり直して賛成票が多くても、大株主の票とかで、否決されたよ」(60代男性)
その問題の第3号議案! ビリリと破って「もうあなたにあげる」と言われたんで頂きましたよ、これ!
「古い原子力発電所から順に停止・廃炉とする」
「原子力の新設・増設は行わない」
というのを定款につけくわえるというもの。
株主の1人がビリっと破いて下さった第3議案のページ。(クリックすると拡大します)
採決したら、賛成派が多数で、慌てた勝俣会長がもう一度採決を! と怒鳴ったんだけれど、そうしたらもっと賛成派が増えたんだってさ。
でも、大株主の委任状があるとかで、そのぶんを入れたら、この議案は否決なんだって。いやーもう、株主さんがたカンカンだったよ!
「確かに私は零細株主だし、でも原発賛成派だったが、今日の総会はバカにしている!」(50代男性)
TVニュースではどんなふうに放映されるのかしら? と思ってましたが、原発推進、反対、半分半分のような感じで、そして「脱原発の議案は採決により否決されました」というあっさりムードでしたね。新聞はどういう報道かしらね?
今回は自分で実際、時間かけてお一人お一人たくさんのお話を伺ったので、かなーり正確に株主総会の雰囲気がつかめたもの。
正直言うと、大手の方々が休んでいたときも、ずっと、インタビューしてたの。なんでかさ、私と話す方はとっても長話になって、そうしないとたくさんの方のお話を伺えなかったから。だから、ここに書けなかったお話もたくさんあります。ごめんなさい。
IWJ(岩上安身さんところのウェブメディア)の若い衆もいらしてて、そちらもずっとインタビューを撮り続けていました。でさーほんっと暑くてさー、脱水症状気をつけなきゃね、とか言いながらせっせと動いていたの。
そうしてたら日陰で休んでいた大手の方々が私たちを見て笑ってらしたので、そのとき遠くにいたケンパルにこっそり目で指示を出して、通りすがりに盗み聞きさせました。
すると、大手の方々は私たちを
「レポートしてるつもりになってる、何もわからないくせにねー」
「ご苦労なことだねー」
と、笑ってらっしゃいましたとさ。
もちろん、後ほどどちらの方々かチェックさせて頂きましたよ! ウフ。素晴らしいお手本となるニュースを放映してくださいませね☆
***
追伸:
株主総会の第三号議案議決について、のちほど正確な数字がわかりました!
今日、来場した株主は9282名(13時半時点)、で、そのうち2名が、大株主の委任状を持った代理人だったのです。
来場した株主の議決権は130万6633票、そのうち2名の代理人は107万8000票。つまり、2名の代理人の挙手によってのみ、議決が行われたわけです! 最後の脱原発の3号議案なんて会場の9割が賛成したのに否決。
そしてそういった経緯を説明せず「否決」のみ報道するメディア…。今日の株主総会は確実に脱原発だったのに、ニュースを見た方々は、あらあらまだ原子力オッケーね? と思っちゃいますよ!
おっそろしいなぁ、もう!
***
追伸(その2):
株主総会当日の夜のテレビニュースでは、原発議案は「圧倒的に(!)否決」とだけしか報道されなかったけど、翌朝のニュースでは、きちんと不公平な採決だった、と報じている局もいくつかありました。
そりゃそうだよー。当日、実際総会に出た株主さんたちがツイッターやネットで、不公平な採決だったことを書きまくっていて、とても話題になってたもの! 何人かの株主さんは総会の動画や音声を取っていたから、テレビが報じなくてもバレバレだったんだよね!
というわけで、これからもっと、みんなで目を光らせていかなくっちゃね!
【今週の針金】
勝俣恒久代表取締役会長
株主総会の議長、株主の方々に何にも耳を貸さないワンマンショーだったんですって!
*
暑い暑い中での充実レポート、ありがとうございました!
東電株主総会の様子は、こちらなどでも読めますが、
誠意のかけらも感じられない対応に、思わず言葉を失います。
株主の方たちの怒りも当然でしょう。
そして「ひとり一機ずつ」で差し止め訴訟、
なかなかいいアイデアかも?
おしどりプロフィール
マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。
ブログ:
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twitter:
マコ:@makomelo
ケン:@oshidori_ken
その他、news logでもコラムを連載中。