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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」
オカドメノート No.076
民主党政権の最大の懸案となりつつある普天間基地の県内移設に反対する県民大会は、参加者9万人を超える盛り上がりを見せた。当日は好天で陽射しも強く、会場は熱気に溢れていた。今回の会場は沖縄本島中部にある読谷村運動公園。那覇市内から距離もあり、蛸壺型の会場に繋がる道路事情も悪いため、大会実行委員会の「10万人動員」の掛け声を危惧する声もあった。高校の歴史教科書改ざんに抗議する11万人が参加した県民大会の会場は宜野湾海浜公園だった。その会場は、「芝生の養生のため」という理由で今回は使用できなかったのだという。一部には、県民大会の成功に水をさそうという勢力の陰謀論もあったが、真相のほどは不明だ。
こうした会場の事情もあり、仕事などで参加できない人々のために、黄色いリボンやシャツで政府に「イエローカード」を突きつけようという大会実行委員会の呼びかけもなされた。筆者は那覇市内から自分の車で駆けつけたが、大会開始時刻である午後3時に間に合うように約2時間前に家を出たものの、到着したのは大会終了の15分ほど前。北谷を過ぎたあたりから嘉手納ロータリーにかけては車が大渋滞。ノロノロ運転するしかなく、「こりゃ、間に合わないか」と一時はあきらめたほど。さいわい車にはテレビがついているので、NHK、琉球放送、沖縄テレビ、琉球朝日放送各局の生放送を見ながらの運転だった。テレビで大会の模様はだいたい掴めたものの、ぜひとも現場の雰囲気も感じておきたかった。ネバーギブアップ精神のおかげで、沖縄にとっては歴史的な県民大会の現場に何とか立ち会うことが出来た。
最後まで大会出席に関して態度表明を曖昧にしていた仲井真知事も大会前前日に参加を決意。知事の参加が実現したことで自民党から共産党まで、文字通り県民の総意をアピールする大会となった。大会当日の地元両紙は社説を一面に掲げる熱の入れようだったし、東京からもメディアが大挙してやってきた。今や普天間基地問題は全国的な関心事となっている以上、それも当然だろう。地元のテレビ関係者によると、中東のアルジャジーラまで取材に来ていたという。沖縄の米軍基地からイラクやアフガンに海兵隊が出撃するのだから、関心があるのも当然ということか。見方を変えれば、沖縄の米軍基地を狙ったイスラム過激派のテロもありうるということになる。米軍基地が存在する以上、沖縄県民はテロの犠牲になる可能性も常に覚悟しておかなければならないのだ。バカバカしい話だが。
東京からやってきたメディアは、5月末までに移設案が決まらなければ、鳩山総理は辞任すべしと煽っているフシもある。13年間も危険な普天間基地を放置してきたのは、歴代の自民党政権と防衛省、外務省の官僚たちではないか。すべては日米関係のためという大義で、米国の意向に逆らうような外交交渉を完全に封印してきたのは歴代の自民党政府である。これまで、県外・国外移設を米国側と本気で交渉したことすらなかったはずだ。普天間の移設先が決まらなければ日米関係が危機になるというのも、米国側の恫喝に便乗した日米の安保マフィアの世論誘導であることを見抜くべきである。日本政府の戦後の外交姿勢は、官僚内閣制のもとでの日米運命共同体論だった。外務省内では、米国と対立する事は最大のタブー、不文律とされてきた。その結果、日米の経済関係は絶対であり、米国の国債なんて到底売却できないような関係性に置かれている。米国にとっては、日本は在日米軍に思いやり予算まで提供してくれる最大の支援国でもある。5月末にこだわる必要はないし、じっくりと粘り強い交渉を納得できるまでやるべきではないか。それこそが日本の国益のためである。むろん、沖縄の海兵隊は抑止力だという論理もマヤカシである。海兵隊は、米国本土にいても、グアムにいても軍事的にはほとんど関係ないのだ。
それはともかく、県民大会の成功を受けて鳩山総理は、「県民意思のひとつの表れ」とコメントした。常々、沖縄県民の思いを大事にすると語ってきた鳩山さん、それはないだろうよ。失言と調整能力不足で退陣説まで出ている平野官房長官ですら、「県民意思の表れ」とちゃんとコメントしていた。もっとも、この平野官房長官は相変わらず、「予見を持たずに、ゼロベース」でともコメントしていた。まだ、ゼロベースかよ。せめて「沖縄県民の意志を尊重して、本気で県外・国外を検討したい」ではないのか。まだ、県内を諦めていないということを誤魔化しているのではないか。
そういえば、この県民大会直前、岡田外相とルース駐日大使の間で、辺野古沖の修正案を検討しているという記事が出た。埋め立てではなく、クイをうって滑走路をつくるという苦肉の策である。しかも岡田外相の側が米国側に持ちかけたという報道である。岡田外相も鳩山総理も「事実ではない」と否定していたが、じゃ、米国側が事実をでっちあげてリークしたというのだろうか。世論誘導のためということか。もしそうだったら、米国側に毅然として抗議すべきである。そうでなければ、怪しさは消えない。その報道が逆の意味で県民大会への思いを一層強くしたのではないか。反対派の名護市長が誕生したことで、辺野古沖もキャンプ・シュワブ陸上案も消えたと思っていた沖縄県民の怒りに火をつけたのではないか。政権の迷走はますます県民の不信感を増大させるだけであることに、鳩山総理はもっと敏感たれ!
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後日、大会の要請団から決議を受け取った平野官房長官は、
それでも「国外・県外」に関する明言を避けたとのこと。
あまりに明らかな民意を、政権はどう受け止めるのか?
この「4・25」は、沖縄の歴史にどう記されるのか。
期待したい気持ちと、不安とが入り混じります。
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