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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.035

映画『アメリカばんざい』を見て思う沖縄の窮状

 麻生内閣の支持率が遂に絶対的危険水域に突入した。三大全国紙の朝日が20パーセント、毎日が20パーセント、読売が21パーセントである。最近の世論調査は保守的傾向を示すNHKが25パーセント、共同通信も25パーセントだ。総理就任2ヶ月でこの数字まで支持率を低落させるというのは並大抵の努力ではできない。森喜朗元総理の支持率10パーセント台突入までもう一息である。さすが、エラソーに見せかけることだけは得意の麻生太郎の化けの皮が次々と剥がれた結果である。これじゃ、自民党に勝ち目はないだけに、解散総選挙で国民の信を問うわけにもいかないはずだ。麻生はこの際、大政奉還をやった徳川慶喜に見習って、薩摩・長州(民主党などの野党)に政権を一度禅譲したらどうか。

 麻生があくまでも権力の座に執着して居座れば、このまま「死に体」内閣が続くことになる。大不景気、中小企業経営、失業、雇用、年金、福祉などあらゆる社会不安はますます増幅し、日本全体が異常な絶望主義、刹那主義に陥る可能性がある。そうなれば、凶悪犯罪、猟奇事件、テロ、自殺は言うに及ばず、田母神元航空幕僚長のような跳ね上がり分子の政治クーデターや北朝鮮侵略行為、過激派による成田空港占拠の革命ゴッコだって絶対ありえないとはいえないだろう。それこそが、政情不安な国がたどってきた歴史の教訓というものではないか。

 沖縄の桜坂劇場で遅ればせながら「アメリカばんざい」を見た。「マガジン9条」の読者ならすでにご存知の映画だろう。イラク戦争に行った帰還兵たちの悲惨な現実をレポートしたドキュメント映画だ。アメリカ発の世界金融恐慌は、まさに100年に一度というくらいの未曽有の危機に突入している。イラク戦争に志願する兵士たちは、もともとアメリカ社会の貧困層、落ちこぼれ組が多い。戦争を志願することで、その世界からの脱出を試みることになるわけだが、兵士たちを待ち受けているのは戦場での死か、帰還してもPTSDやホームレス化した人々なのだ。民主主義を大義とするアメリカの格差社会が,実はいかに異常で冷酷であるか、この映画はそれをとことん教えてくれる。

 アメリカは日本に対して、特に沖縄に対して軍事基地を提供させ、思いやり予算をもらって基地を運営する。しかも、治外法権なみの傲慢な精神と態度を持って、である。それだけではない。毎年恒例の年次要望書では、日本をアメリカ化するために、まるで植民地なみの要求を押し付けてくる。「死に体」内閣の沖縄担当大臣・佐藤勉氏が二度目の沖縄入りで、辺野古の新基地予定地、泡瀬干潟の埋め立て計画地、大学院大学の建設予定地を見学に訪れた。しかし、存在感の薄いこの大臣に何ができると言うのか。

 以前、この欄でも紹介した沖縄タイムスで連載された渡辺豪氏の「アメとムチの構図—普天間移設の内幕」が平和・協同ジャーナリスト基金賞の奨励賞に選ばれた。筆者が沖縄に移住して以降、もっとも調査報道という名がふさわしい記事だった。連載終了後、沖縄タイムスから同名の本としてまとめられたので、興味のある向きは読んで欲しい。筆者的には新聞協会賞を貰っていい力作と考えている。ま、これを読めば、佐藤勉沖縄担当大臣に多くを期待できない事情がよく分かる。何せ、国、県、沖縄地元の思惑が複雑に絡む利権の構図がドップリと横たわっているのだ。

 来年一月に大統領に就任するオバマが、国務長官にヒラリー、そして国防長官にゲーツを留任させると言う。オバマはイラクからの撤退を宣言していると同時に、アフガニスタンには増兵する方針を打ち出している。「アメリカばんざい」状況は続くということだろうが、せめて普天間、辺野古からは米軍は即刻手を引いてくれ!といいたい。黒人差別を受けたことのあるオバマに対して、沖縄の歴史家、文化人、学者、ジャーナリストらの民間使節団をホワイトハウスに派遣して沖縄が置かれてきた窮状を直訴したらどうか。利権絡みの沖縄県知事一行でもなく、しかも防衛省や外務省が戦後60数年のトラウマともいうべき手垢をオバマ本人につけないうちに、急げ!である。

映画「アメリカばんざい!」については、
藤本幸久監督に「この人に聞きたい」のインタビューにもご登場いただいています。
オバマ新大統領の誕生は、沖縄の現状に何らかの変化をもたらすのか。
そうなるよう、沖縄から、そして日本からの働きかけが必要なのかもしれません。
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