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冬のオススメ本
”コタツみかん”で読書する絶好の機会が冬休み。
テレビもいいけど、読書もね。
今回は、マガ9スタッフと読者から寄せられた
「おすすめ本」を中心に紹介いたします。
”押入れ”(アーカイブ)から出してきた、
夏休みの「おススメ本」もあわせてどうぞ。
■上原公子さん(国立市長)
「子どもが出会う犯罪と暴力 防犯対策の幻想」
(森田ゆり著/NHK出版)

「子どもが危ない」キャン‐ペンで、監視社会を作ろうがいかにもよいことのように補助金つきで、半強制的につくられています。それに逆らうものは、子どもの生命を大切にしないとんでもない奴というわけです。しかし、そんなに子どもに対する犯罪が増えているのかという疑問を、デ‐タ‐を元にきちんと分析がされています。
 危ないキャンペ‐ンの裏に見える「自警団」の組織化を感じさせる。

■鈴木 力
「岸上大作全集」
(岸上大作 著/思潮社)

1960年12月5日未明、睡眠薬150錠を服み、さらにロープで縊死。まだ21歳の若さであった。
彼は、高校時代から短歌を作り始め、國學院大學に進学してからは「國學院短歌研究会」に属して精力的に作歌活動をする傍ら、時代に真摯に向き合い、60年安保闘争にも積極的に参加した。

その彼が遺した短歌や、思索の跡のノート、部誌やその他の雑誌に発表した文章などを集めて、その死後に上梓されたのがこの本である。

青春の苦悩、と呼ぶにはあまりに痛々しい血を吹くような歌の数々、そして追い詰めて死に至るその過程が、今も生々しく読むものに迫ってくる。

全集の冒頭に収められた歌。寺山修司を思い起こす。


意思表示せまり声なきこえを背にただ掌の中にマッチ擦るのみ
「エチカ・一九六九年以降」
(福島泰樹 著/構造社)

いまや「叫ぶ歌人」として名高い福島泰樹のかなり古い本。

1943年生まれで、彼もまた70年安保へ向けた騒乱の日々を走り抜けた歌人である。この本は限定本として刊行されたので、ほとんど市場には出回っていないと思われるが、福島の中でも畢生の名著だと思う。

闘いの中で詠まれた歌が多いけれど、言葉遊びも自在に駆使し、苦いユーモアがその持ち味にもなっている。

例えば、この歌。


鬱鬱と飲んだくれて胃肝臓 誰に捧げん徳利ひとつ
「無援の抒情」
(道浦母都子 著/岩波書店・同時代ライブラリー)

これもまた闘争から生まれた歌集である。道浦は、ベストセラーになった『サラダ記念日』の俵万智などとともに女性歌人の先頭に立つ存在。

道浦のこの歌集のタイトルとなった「無援」は、多分、高橋和巳の評論集『孤立無援の思想』(岩波書店)などの影響を受けたものだろう。いわゆる全共闘世代を代表する歌人でもある。

無援でも闘わなければ、という気分が時代を覆っていたころの、痛苦に満ちた歌の数々が、今も読むものの神経を引きちぎるようだ。


炎あげ地に舞い落ちる赤旗にわが青春の落日を見る
■芳地隆之
「里」という思想
(内山節 著/新潮選書)

 労働という視点から「人間の幸せ」について考察を続けてきた著者が、9・11以降のグローバリズムの暴走に対して、「里」=ローカルに生きることの大切さを説いたのが本書。里といっても田舎で生活するという意味ではありません。「・・・・・・共同体、伝統、風土といったものは、本来的に国家主義と相いれないも のとしてあるのに、この両者が結びつくかのごとく虚構の上に国家が形成されているという悲劇である。この悲劇があるが故に、私たちは歴史や社会を率直にとらえることができない」まるで「美しい国」批判のように読めますが、数年前に書かれた文章です。家族や地域の人々、あるいは身近な自然との付き合い方を考え直してみましょう。ローカルを意識することで、いままでとは違う世界が見えてきます。
「グラミン銀行を知っていますか
      ―貧困女性の開発と自立支援」
(坪井ひろみ 著/東洋経済新報社)

 貧困や戦争の撲滅を世界中で訴え続けるU2のボーカル、ボノはノーベル平和賞の有力候補の一人ですが、今年は彼を抑えて、無担保低額融資(マイクロクレジット)でバングラデッシュの女性の自立をサポートしてきたグラミン銀行とその創設者・総裁のムハマド・ユヌス氏が受賞しました。グラミン銀行のすごいところは、貧しい人々を「施し」の対象ではなく、「顧客」とみなしていること。そして、顧客に様々なアドバイスを与えて優良な借り手とし、返済率を95%以上にしたこと。同行は十分な利益も上げているのです。グラミン銀行に賞を授与したノーベル平和賞審査委員の見識にも拍手。
■y・k
「運命論者ジャックとその主人」
(ドニ・ディドロ 著(王寺賢太・田口卓臣翻訳)/白水社)

 著者ドニ・ディドロは、フランス革命を準備したとされる、かの『百科全書』の編集長を四半世紀つとめ、完成させた。ロシアの女帝エカテリーナ2世との交流でも有名。そんな八面六臂の活躍をしたディドロの極めつけの小説が、本書である。ジャックを中心に “恋”のお話が全編で描かれるのだが、登場人物たちが繰り広げるナンセンス ・ストーリー。そのドタバタは物語の細部にいたるまで徹底している。帯に書かれた「よくもまあ、こんな小説を書いたもんだわい!」というコピーがそれを現している。が、なぜ「マガ9」でメタフィクションの恋愛小説を?

 ここではこの小説を、人を律する「法」との関係を頭の隅に置きながら読んでみることをオススメする。というのも、運命論者ジャックによれば、語られる「偶然の出来事」としての数々のエピソードは、「この地上に起こることのすべては、天上にそう書かれている」のだから。すると、逸脱しまくる物語の快活な支離滅裂さが、人間にとって根本的なあるなにものかを書き留めようとするために選択された「手法」であったことがわかってくる。訳者曰く、「その運命が示すのは、出来事の連鎖の必然や偶然よりもむしろ、この地上にあるすべてのものが持つ限界と、その限界を超えたなにものかの存在にほかならない」。18世紀の啓蒙の時代を代表する哲学者、ドニ・ディドロの最晩年の傑作を読んで思うのは、「18紀ってすでに21世紀を超えている。ラディカルだなあ」。
■水島さつき
「十六の話」
(司馬遼太郎 著/中公文庫)

 この本には、司馬遼太郎の16篇のエッセイが収められているが、私は次の1篇が読みたく、この本を購入した。それは、「二十一世紀に生きる君たちへ」。司馬がある出版社から小学校の教科書用にと依頼され執筆したこの文章は、推敲に推敲を重ね、長編の歴史小説を1冊書くのと同等の時間と力を注ぎ書いたという。一つひとつが、やさしく、きびしく、きっぱりと語りかけてくれている。ほんの一部だけ紹介しておくと・・・。

 (前略)「いたわり」「他人の痛みを感じること」「やさしさ」これらは、本能ではないので、私たちは訓練をしてそれを身につけなければならないのである。(中略)この根っこの感情が、自己の中でしっかり根づいていけば、他民族へのいたわりという気持ちもわき出てくる。君たちさて、そういう自己をつくっていけば、二十一世紀は人類が仲良しでくらせる時代になるのにちがいない。(後略)

 こどもたちと一緒に、是非読んでおきたい1篇です。
「戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る」
(斉藤美奈子 著/岩波アクティブ新書)

 戦時中、戦後の話を聞くと、生き残った人が直面した苦難が「飢餓」。とにかく食べるものがなくて大変だったということだ。この本は、戦前から太平洋戦争後まで、当時の人気婦人雑誌のページより抜粋された、食べ物に関する記事から、いろいろなことが読み取れる。まさに「銃後」を女性たちが担っていたことがよくわかる。「節米時代の健康レシピ」や、「馬鈴薯のハッシュ」、「イタリー風のうどん料理」など、日中戦争が泥沼化していく、昭和15年年から16年当時のレシピは、いまでも「作ってみようかな」と思わせる、工夫がもりだくさんで、「女たちのたくましさ」を感じさせるが、昭和18年にもなると、国会議事堂のまわりが、一面芋畑だったという嘘みたいな話も、実際の写真がばっちり載っているので、「へえ」という感じである。

 「そんなひもじいおもいはもうしたくないよね」「いまが豊かで良かったね」ではなく、「こんな生活が来る日も来る日も続くのは絶対に嫌だ! そうならないためには政治や国家とどう向き合うかを 私たちは考えるべきなのです」と斉藤美奈子さんも、あとがきできっぱりと書いています。
「悪夢のサイクル ネオリベラリズム循環」
(内橋克人 著/文藝春秋)

 実はまだ読んでいません。まさにこの冬休みに読もうと思っている本です。なぜ読もうと思ったか、、というと先日、NHKの「ワーキングプア」について特集した番組内で、著者の内橋克人氏のコメントにはっとさせられたから。「(格差は広がり)このままでは、日本の多数派が、貧困層ということになります」

 この本には、「格差はどこから来たのか?」という問いの答えがあるようだ。表紙扉には、「70年代に生まれた「ネオリベラリズム」がアメリカの政権中枢部を覆い、世界にあふれ出す。」と書かれています。日本もその波にのまれているというわけ。このシステムを知った上で、内橋氏が言うところの「第三の道」を考えてみたいと思います。
●大木晴子さん
「沈黙の社会にしないために
      ―最高裁にあてた168通の上申書」
(立川反戦ビラ弾圧救援会 編/発行・樹心社/発売・星雲社)

 私は2004年2月27日の自分の行動をよく覚えています。
「何かしなくては」と直ぐにカンパ箱を作り考えました。
立川反戦ビラ入れで逮捕された三人の方と心を繋げていこうと・・。
それからずっと裁判を見つめ続けています。支援の為に平和のバンダナを作り、何時もこの裁判を見つめてほしいと機会あるごとに、ホームページ「明日も晴れ」で書いています。
この本は、逮捕後直ぐに結成された「立川・反戦ビラ弾圧救援会」の手で出版されました。
三名の無罪判決を願う言葉が詰まっています。
もしみなさんが読まれたら「私も!」とみんな頷いてしまうことでしょう。
表現の自由が奪われる社会を想像するだけで恐怖です。
映画「白バラの祈り」の情景が浮かんできます。
私たちの生き方に関わって来る問題を、この裁判は抱えています。
新しい年、最高裁の判決が出ます。見つめ続けてください。
そして、この本を読まれてあなたに出来ることを・・・・。
●十文字(衆愚代表)さん
「鋼の錬金術師(15)」
(荒川弘著)

 日本の漫画、アニメ表現の世界観には「クール・ジャパン」の名に恥じないものが多数存在する。その作品群の中でも一際光る作品、『鋼の錬金術師(漫画版)』(荒川弘著)を紹介したい。第15巻(12/22初版)で、多くの登場人物達に、大小の心の傷を負わせた、「殲滅戦」の内実が描かれた。当巻によってストーリーの一区切りがつくと共に、殲滅戦の描写は圧倒的で、未読の方はぜひ15巻までの一気読みをお勧めする。漫画という表現に慣れており、『ハリー・ポッター』等を抵抗なく楽しめる人ならば、問題なく読み進められるだろう。最後に皆様の食指が動くよう、15巻の前書きを抜粋する。"本編を描くにあたり第二次大戦で前線を経験した方々の話を聴いて回った。書物や映像よりも鮮明で強烈なその様々な話の中で、とある方がテーブルを上に目線を落としてぽつりと仰った。「戦争の映画とかね、そんなのは観ないですよ」。その言葉が一番心に残っている。"
「これが憲法だ!」
(長谷部恭男、杉田敦 著/朝日新聞社)

 「現在の憲法を変えなければならない理由はついにはみあたらなかった」との結論で終わる同書ですが、そこまでに至る対論がなんとも愉快痛快でした。その理由は長谷部氏、杉田氏共に権力、国家、法制度はもとよりデモクラシー、平和主義、社会主義などに至るまで、頭の片隅では疑念を持たざるを得ない性分の人々であるのでしょう。あとがきで長谷部氏は編集者に「偽善は大嫌いってか!」と真心のこもった突っ込みまで頂戴したと暴露しているのですが、平たく言えばワルなのです。とはいえ、学者という者は信仰者ではなく、「汝、疑うべきである」というのが本来の姿のはずなので、両氏のスタンスは学者として大変に信頼できます。因みに個人的には、長谷部氏より杉田氏の考え方に近い私が発見でき、非常に有意義な本でした。
●ごんたさん
「一市民の反抗― 良心の声に従う自由と権利」
(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー著、山口晃訳/文遊社)

 あのガンジーやキング牧師の市民的不服従運動に影響を与えたといわれる本です。19世紀半ばに書かれた本ですが、現代でも通用する力強さと高潔さを持っています。権力者や多数派の前にくじけそうになった時は、この本が勇気をくれるかも。訳者による解説も一読の価値があります。巻末には英語原文付き。
「戦争で死ぬ、ということ」
(島本慈子著/岩波新書)

 戦争の残酷さを知らない人必読の本です。文章中心の本ですが、戦争のむごたらしさが生々しく伝わってきます。「この人に聞きたい」のコーナーでの広河隆一さんのメッセージ「戦場を見ずに、戦争は必要悪だと言うな」と同じメッセージをこの本から感じました。
●まみまみさん
「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」
(堤未果著/海鳴社)

 若者、元兵士、マイノリティ、母親など戦争という巨大なビジネスを続けるために国から捨て駒にされてきた人たちが立ち上がり、行動する様子がいきいきと描写されていて勇気をもらえる一冊です。軍隊が高校生をリクルートする様子は結構もう日本でも実行されそうで怖い。若い将来のある人はぜひ読んでみて。「戦争をしなくてすむ世界をつくる30の方法平和をつくる17人著「世界から貧しさをなくす30の方法田中優・樫田秀樹・マエキタミヤコ編共に合同出版。戦争はなぜ起こるのか?貧困の本当の理由は?などの視点で書かれた2冊。自分にも何かできる!と気づかせてくれるヒントがいっぱいつまっています。具体的にね。ちなみに前者の巻頭にはミスチル桜井君のメッセージ、後者の帯には今なら広末涼子のメッセージが書かれています。
 
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