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2012-08-08up
松本哉ののびのび大作戦
第64回:大阪のとんでもないイベント「ナツダツゲンパツ2012」に行って来た!
世界一マヌケ臭の漂う街=大阪。そこから、先週はゾロゾロと、これまたマヌケな奴らが東京にやって来て大騒ぎして帰っていった。これは前回紹介した。
で、そんな奴らが8月4日に大阪で反原発サウンドデモをやるというので、勢いで行って来てしまった!
当日は、デモの前に出発地の西梅田公園でイベントを行うという。しかもそのイベントがなんと4時間! これはもはやデモ出発前の集会というレベルではなく、むしろメインのイベントのような感じ。ここで、ライブやらトークショーなんかもやりつつ、フリーマーケットやいろんなブースも出るし、みんなのびのびやってる。みんな、ライブで盛り上がったり、ビールを飲みまくってたり、昼寝をしてたりと超くつろいでいる。
普通は、デモ前の集会はデモに向けての景気づけにやったりする。あるいは、「今回はデモじゃなくイベントをやろう」と、単独でイベントとしてやったりもする。が、今回はイベントをやって、その盛り上がりのクライマックスにデモという、なかなか強力な複合技! いいねー、この作戦。
ランキンタクシー現る! これまた盛り上がった!
しかし、これ東京で出来るんだろうか…。と、ふと思う。都内でも、警察署によっては「原則、デモ前の集会は認めない。集合地としてだけ使用OK」と言い張る厳しいところもあるし、「集会? いいよ。何時間やるの? 何かあるといけないから長めに取っといたら?」みたいなところもあって完全にマチマチだ。ちなみに、サウンドカーの申請も地域によって全然違う。東京でも、以前はサウンドカーには結構な人数が乗っても大丈夫だったのが、ある時段々厳しくなって来て、「やっぱり、○人以上は認めない」などと2人とか3人以上乗るのは認められなくなったり、挙げ句の果てには「シートベルトを付けてくれ」などと言い出して、バンドの演奏者がシートベルトをつけてライブをやるという奇怪な状況になったり(これはこれで面白かったけど)、厳しくなって来た。…と、思ったら最近は全く厳しくなく、そんなに制限はなくちゃんと安全を守れば何人でもOKになっている。一方、大阪では「DJはいいけどライブはやっちゃダメ!」といわれるという。乗っていい人数も少ない。これに対し「いやいや、東京では普通にやってますよ」といっても、「あっちはよくても、大阪はダメ!」と、「東京の警察は頭がどうかしてるんだよ」みたいな感じで却下されるという。でも、実は大阪でも数年前は普通にバンドが乗ってライブをやるサウンドデモが出来たりもした。うーん、警察同士も色々あるんだね…。
なんだかよくわからないけど、昔と今で勝手に変わって来たり、場所によってやれる権利が違ってたりしたら、こっちはたまったもんじゃない。知ったことかそんなもん。これじゃ、「法の下の平等」もヘッタクレもありゃしねえ。ともかく、多分、警察って「自分は偉い」と思っている人たちの集まりだから、いろいろと勝手に独自ルールを決めがちなんだろう。本当は、警察は憲法で保障された権利を実行するときの手続きをやってるだけだから、いろいろ違ったらおかしいのに、みんなワガママ言って「うちの管轄でそれやっちゃダメ」みたいなこと言われても困っちゃうんだよな〜。もう! アノニマスに言いつけるぞ!(←このネタ、「素人の乱FM」を毎週聞いてる人にはわかります)
ところがどっこい。日本には「規則まみれの厳しい義務教育」というマヌケな制度があるおかげで、規則の隙間でできるいろんなワザを開発して勝手なことをやる教育はすでに施されている。そう。いくらダメだと言われても、健全な高校生なら酒もタバコも試してみるし、パチンコ屋にも行くし、金も賭けるし、ロクでもないこともとりあえずやってみるし、余裕で出来る。人間の自由力は実は無敵だったりする。
ま、そんな感じで、規制の多い日本とはいえ、デモも実はいろいろ可能性を秘めているのだ。
こんなところにも奴がいた!
あれ、話がそれた。
さて、イベントも盛り上がり、いよいよクライマックス到来! デモ出発! 散々遊んだり歌ったり飲んだり踊ったりした後、「さー、これから、最後の締めくくりで街に繰り出して原発反対を訴えちゃうよ〜!」って感じだから、テンションは上がらざるを得ない!
しかも、すごいのは、いままで公園でステージのバックにあった音響システム、実はサウンドカーの荷台になっており、そのまま動き始めてデモ出発! その盛り上がりを連れて動き始める! 集会からデモに移行する時に機材を組み替えたりしてもたつくと盛り上がりに欠けるので、この作戦は便利だ! なんだこれ! 東京でまだやったことないよ!
デモコースは、梅田界隈から始まり、関西電力などのあるビジネス街を通り、そのまま人の賑わう難波方面へ行き、解散! 約5キロの長いコース。
先頭はサウンドカーで、イベントの盛り上がりをそのまま引き連れ、音楽を先頭に「原発要らない!」などのコールをしながら進んでいく。イベントでみんなが目指す自由なスタイルを発揮しまくって、その後に、この日に一番言いたいことを叫ぶのでこれは熱が上がる! で! そのまま進む先には、先陣きって原発を再稼働して、もはや悪の権化と化している関西電力の黒いビルが見えてくる! コンチキショー! 景気のいい音楽にあわせて「大飯を止めろ!」「再稼働反対!」の声が大阪市内に鳴り響く。そして! その悪の巨塔=関電ビルの前に来た時、ついにサウンドシステムが火を噴いた! なんと「六甲おろし」が大音量でかかり、全員が「うおおおおおぉ!」と、大歓声で、そのまま全員で大合唱! 盛り上がりはついに完全にピークに達してしまった! おい! 大阪どうなってんだ!!!!!
しかし、やはり喜怒哀楽はすべてセットで、そのベクトルの長さはほぼ均等なのだ。これだけ楽しく盛り上がっているが、それが怒りに転じた時、いったいどんなことになるか、想像するだけで恐ろしい。関電ビルの中にいた人々は、群衆に包囲され六甲おろしを合唱され、さぞや恐ろしい思いをして、大飯原発を動かしてしまったことを後悔しているに違いない。
さて、デモはサウンドカーだけではない。後方に続くのは、毎度おなじみ、泣いても笑っても「怒りのドラムデモ」部隊! 物を叩けば盛り上がるという、類人猿以来のお決まり定番芸を展開するとんでもない軍団。今回は東京のサウンドデモなどでも活躍中の、人間のお祭り騒ぎに長けたイルコモンズ博士をはじめ、東京からもドラムチームが参戦! で、もちろん東京チームだけではなく、大多数は大阪人達で、それぞれ家から楽器をはじめ音の出る謎の物体を持って来て、叩きまくる! これまたすごい景気のよさ!
六甲おろしに続いて、類人猿の太鼓に包囲された関電は、もはや倒産同様の再起不能なまでの大打撃を食らったはずだ。関電の諸君、今回の倒産を機に考えを改めてくれたまえ!!! そう、「電力」に罪はない。次にいい仕事をしてくれることを期待している!
先頭のサウンドカー周辺。まさに大パニック
さて、そんな感じでデモは繁華街へ進み、大阪の街を景気よく「原発要らない」の声で埋めていく! もはや全国的に「原発いらねー」の声はメジャーになってるので、街の反応もいい。途中から入って来る人や、巻き込まれるヒマ人などもいて、いい感じに。
で、最後は難波の公園でゴール。デモ隊も公園に入り「お疲れさま〜!」って感じかと思ったら、そうはいかないのが世界のマヌケ首都=大阪! 到着した公園内に用意周到に組まれていたサウンドシステムから河内音頭が流れ始め、そのサウンドシステムを中心にみんなで輪になって踊り始める。なんだなんだ!!
で、最後に盛り上がり、ちょうど程よい頃に警官がやって来て「終わり終わり! うるさい!」と、やって来て絶妙なタイミングで締めくくる。う〜ん、警察も「間」をわかってるね〜。
ちなみに、主催の人に「参加人数って、どれぐらいいたの?」とだれかが聞いたら、「えっ!?」という返事。最近のデモは前代未聞の人数が集まってることもあり、いつも、多いだの少ないだの、水増ししすぎだの、いや本当はもっとたくさんいただのという話題になるが、この大阪のもりっしーやらタナカくんやら(←前回を参照)は、「いやー、今日はよかったねー」みたいなことを言ってて、まったく人数のことを忘れていた様子。これはすごい! ってことで、参加人数:不明(主催者発表)、警察発表もナシ。
いやはや、大阪は盛り上がっていた! こりゃ、いよいよ各地でいろんな祭り(騒ぎ)が発生することによって、巨悪を包囲していくしかないね~!!
デモ後、いや、河内音頭後。デモにはソウルフラワーの中川さんも現れた!
9月3日(月)19:00~
「くだらない店の続け方」
野方・こたか商店にて
*
「六甲おろし大合唱」って、それベタすぎやろ! と思いつつも、
高円寺とはまた違う「とんでもなさ」に、
ちょっとその場にいなかったことが悔しくなったり…。
東京への一極集中もそろそろ時代遅れってことで、
皆さんの地域でも、ご当地色出しまくりデモ、いかがでしょう?
松本哉さんプロフィール
まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
「松本哉ののびのび大作戦」
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- 2010-12-22日本で韓国で「のびのび大作戦」
【この人に聞きたい】
松本哉さんに聞いた
- 2008-01-09その1:路上を僕らの解放区に!
- 2008-01-16その2:消費するだけの街から文化は生まれない