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2011-02-22up
松本哉ののびのび大作戦
第56回:2.19脱原発杉並デモ、大成功!!!!
ここ数回にわたって紹介している「2.19脱原発杉並デモ」が、ついに開催されてしまった!! 「有象無象デモ」とうたってるように、本当にいろんな人たちが集まって5~6000人の参加者が集まり、大賑わいでデモは行われた! いやいや、この前代未聞のデモはすごかった!!!!
デモ直前まで、続々と賛同人も増え続け、菅原文太、ねじめ正一、小林亜星、山本太郎などなど、著名人が続々と名を連ね始める一方で、地元の八百屋さん、電気屋さんなども名を挙げているすごいラインナップ。うーん、この賛同人の名前を見てるだけでも、すでにカオス状態になっており、このデモのバラエティっぷりがわかる。
さて、何度も紹介しているように、この杉並デモのすごいところは、いろんな人が「杉並」ってだけでゴチャマゼにつながって集まってるところ。いまさら「地域」ってなんだ、と思うかもしれないけど、甘い!!! 若いやつらっていうのは都内をウロチョロしまくっているので、杉並だろうと新宿だろうと渋谷だろうと関係なく出かけるが、ジイちゃんバアちゃんたちとか地域の商売人の中にはほとんど地域から出ない人も多い。こういう人たちと話していると、去年の4月10日の高円寺デモはインパクトがあったものの、その後に連発した新宿や渋谷のデモなんかにほとんど印象がないっていう人がたくさんいた。そういう人たちからしたら、今回のデモのことを「杉並でやる2回目の大規模デモ」と思っている人ばかり。また、警察もそう。去年の秋ぐらいに別件(店の手続き上の用事)で杉並署に行ったとき、デモ担当でも何でもない警察署員が「いやー、松本さん、春のデモはすごかったね~」という。さらに「ああいうデモは、一回じゃ意味ないよね。続けてやらないとね~」と、やたら理解がある。ただそのとき、すでに新宿や渋谷でもやってたので「いやいや、何度もやってますよ!」というと、「ええっ、ホント? そうなんだ!」と、全く知らなかった。デモの警備担当の警察以外は地域のことばっかり考えてるから、ほとんど知らないようだった。なるほどなるほど、杉並のローカルの人からして渋谷や新宿のデモのことは、東京から見た大阪や札幌のデモていう感覚に近いのかもしれない。
だからこそ、自分らの場所でやるデモっていうのにやる気満々なんだろう。う~ん、はたしてどうなることやら!!
出発地へ移動する『なんとかBAR』。何度も車に轢かれそうになった
で、当日は予想通り大変なことに!! 老人たちも大張りきりで呼びかけまくってただけあって、高齢者も大量に押し寄せてきたし、「原発やめろデモ!!!!!」でおなじみのサウンドカーも出たので、若い奴らも大量にいる。
先頭はパパママ&チビッコ部隊で出発! 泣く子も黙るお菓子満載カーも出現し、大変な迫力!! そして、完全に謎のカラオケカーが続いていたんだが、たまたま見かけたときには中年男性が本気で熱唱していて異常な盛り上がりを見せていた!!! これはヤバい! 続いてサウンドカーが4台(すごい!)も続き、最後にはオールドアクティビスト・シュプレヒコール部隊。ま、ともかくバラエティに富んでいた。
恐るべし地域デモ!
今回の特徴は何と言っても地域から巻き起こったということ! 地域ネットワークを使って宣伝もしているから、地元賛同者も多い。約1万枚の「デモが通ります」ビラをコース上にばらまいたってことで、沿道には店から出てきてプラカードを出してる人もいるし、「トイレ貸します」っていう看板を持ってトイレを提供している商店街の人もいた!
聞いた話では、住宅地域を通っているときに、地元町内会長と老人クラブ会長が沿道まで出てきて腕を組んでデモを見ているので、デモに参加してた彼らの知り合いが「お騒がせしてすいません~」というと、「ばかやろう。そんな小せえ音じゃ裏まで聞こえねえじゃねえか! もっとやれ」。おお、いいね。何にでも目くじらを立てるようなせせこましい時代の中、こういう粋な長老クラスも多いのがわかるとホッとするね。余談だけど、杉並ってところは、関東大震災や空襲などで下町から大量に人が移り住んで大きくなっているところだから、下町の粋な価値観も意外と根付いている。う~ん、さすが杉並老人! いまの日本社会に失いかけた「懐の広さを見せる美徳」をまだ持っている!
老人で思い出したけど、今回のデモにはなんと102歳のおばあちゃんも参加していたという。写真を見る限り本当にうれしそう。102歳といえば1910年ぐらいの生まれ。子供のころ関東大震災があり、その後は戦争に突入してどんどん窮屈な時代になり、戦後は復興して経済成長を経て豊かになってきたけど、今度はそれがいよいよ行き詰ってきて、また窮屈になってきたところでの今回の解放感に満ちたデモ! うーん、我々には想像もできないぐらいの感想があるんだろうな~。でも、こういうおばあちゃんが新宿やら渋谷やらのデモへ出かけていくのは大変だし、やっぱり地元地域でやるデモってものの大事さを痛感!! いやはや、ともかく感激!
102歳の藤原フミさん。明治42年杉並生まれのおばあちゃん。(撮影:山本宗補)
必殺! 移動式なんとかBAR!
さて、そんなデモの中、なにをやってたかというと…。
今回は主催者ではないので、意外とデモ中は手持無沙汰になる可能性が多かった。そこで考えたのが、移動式「なんとかBAR」!(←これ、素人の乱の日替わり店主BARの名前)
デモっていうとみんな、怒ったり、叫んだり、歌ったり、踊ったり、笑ったり、走ったり、なにかと体力を使う。で、今回は年配の人も多いし、ちょっと休憩でホッとできるスポットがあったらいいんではないか!? また、休憩所があったらそこでゆっくり話して行ったり、友達ができたりっていう謎のスポットになる可能性も大。よし! BARだ、BAR! 移動式のBARをやるしかない!! …ってことで、急遽デモ前日に材料を揃え、いろんな人が手伝ってくれて寄ってたかって、なんとか完成。よく見たら、これ完全に屋台だ。
まずは出発の公園でやってたところ、早くも大好評!! お茶、紅茶、ホットワイン、テキーラ、お菓子(近所の子が突然作ってきた!)などを出し、それぞれ1杯1~200円の激安カンパ価格で営業を開始! やばい、これは大繁盛だ! 日ごろのうちの店の赤字を埋めるビッグチャンス到来!!! ヘイ、いらっしゃい、いらっしゃい! そこのボク、まずは駆け付けテキーラ三杯!!
最初は公園でほかの物販ブースと一緒に並んで屋台をやってたんだけど、デモ出発と同時にまさかのぬけがけで移動開始! どうだ、このやろう。ただの屋台だと思ったら大間違いだ! 本当の移動販売を見せてやる!
デモ隊の中に入り、沿道のガキんちょたちに「ああっ、屋台が動いてるぜ~。なんだありゃぁ!」と、指さして笑われながらの営業! 「だまれ、クソガキ! オマエのランドセル隠すぞ!」とは言えず、「ジュースもあるよ~」と、大人の対応。まいったか。大人が本気で遊んだらどういうことになるか思い知らせてやった。ジュースなんかねえよコノヤロー!!
さて、移動BARは大好評で、沿道からも「おお、なんだあれ!」と次々に買いに来るので、思いのほかやたら忙しい! ホットワインなんか一瞬で売り切れちゃったが、品切れは商人の恥。すぐに酒屋へ走り、物資を調達して作り直す。そう、何を隠そう、移動式厨房も兼ね備えたこのBARは簡単な調理も可能なのだ! 大繁盛のままデモ解散地点までたどり着き、無事に本日閉店! さあ、もうかった金でもっととんでもないデモでも起こそうかと、いざ精算してみると…。売り上げが約30000円!!!!!! おおすごい! で、仕入れが約13000円、屋台製作費が約17000円。う~ん、世の中うまくできている。完全にトントン。
で、最後は解散地の阿佐ヶ谷駅近くの小学校(小学校解散っていうセンスも地域っぽくてすごい)で、「小学校でお酒はダメ!」と主催スタッフの人に怒られて終了! いや~、めでたしめでたし。
すぐに大繁盛に! デモ中もみんなで交代で店番!!
前代未聞の「デモ割り」!
さて、ここからがまたローカルデモの本領発揮! 前回も少し触れたように、デモに出た人へのサービスをやる店が続出していたので、そんな「デモ割り」サービス店にむかって、数千人が三々五々、阿佐ヶ谷の飲食街へ! さあ、こうなったら阿佐ヶ谷の街にお金を落とさないでどうする。珍しく1滴もお酒を飲まずにBARに専念したので、今度は飲む番だ。
いろんな店が「デモ割り」をやってたらしいんだけど、とりあえず「阿佐立ち」という焼き鳥屋に。ここは、「デモに行った」で、一品サービス! 案の定満員で、デモに行った人であふれていた! みんなデモ終わりでお腹がすいていたので丼ものを頼みまくり、店の人も「そんなにドンブリがない!」と、大パニックに!! これはすごい。で、お次はベルギービール屋の「海晴亭」へ。移動中も、街を歩いてると、知らない飲み屋でもデモ参加者がたくさんいたりして、なかなか大変なことになっていた! 海晴亭に着いてみると、こっちはこっちでまた超満員。ちなみに、サービスはHoegaardenが2杯で700円引き。全く知らない人と20回ぐらい乾杯したような気がする!!! 夜遅くなってもさらに人は増えて、商店街まであふれるぐらいの大混乱営業! 挙句の果てにソウルフラワーユニオンやら忌野清志郎やらが流れたりで、すごいことに!! ほかにもたくさんデモ割店があったみたいなんだけど、全部行ってたら死んじゃうので、しぶしぶ高円寺へ退散!
ま、ともかく、街の人たちが繰り出してきてデモをやって、それをサポートしてくれる店が繁盛して、ついでにほかの店にも金が落ちていくってのが、すごい新鮮だし、素晴らしすぎる!!
いま、世論調査なんかを見ても7~80%の人が「原発いらないでしょ」と答えている。それ、あれだけの大惨事が起こってるんだから当たり前かもしれない。でも、なぜか権力中枢の人々はそれを無視してまた動かそうとしている。どうなってるの? この世の中!? たぶん、もう完全に金やら地位やらでがんじがらめになって、人として普通に考えることができなくなっちゃってるんだろう。
よし、こうなったら、超ローカルなところで、街ぐるみで「いや、普通に原発いらないでしょ!」って声が巻き起こり、それで地域経済まで成り立っちゃえば、国の中枢のイカレた連中のように「いや、原発は大切です!」みたいなことを無理して言い出す人もさらに減っていくに違いない。
う~ん、ともかく今回は地域の超ローカルなデモの恐ろしさを思い知らされてしまった! 杉並恐るべし!!!! それに、今回は杉並関係者以外にも、ちらほらと地域外の人も来ていた。みんな口々に「うちの区でもやりたいなぁ」とブツブツ言いながら帰って行ったので、これはもう各地で勃発する可能性もある!!!
もしそんなことになったら、もうだれにも止められないはず。よし!! 各地域の人、みんなで同時多発でいろいろやらかしてしまおう!!!!!!!!
2月22(水)~27日(月)
『貧乏人の逆襲』台湾版出版記念ツアー
2月27日(月)
台湾大作戦報告会!
素人の乱16号店「なんとかBAR」
(杉並区高円寺北3-4-12)
20:00~
ビール400円ほか
2月28日(火)
高円寺「素人の乱」とウォール街占拠
トーク:松本哉・樋口タクロウ(ニセ学者)・木下ちがや(インチキ学者)
コメンテーター:池上善彦(難しい本の編集者)
14:00 start
東京外国語大学・海外事情研究所427
*
まさに街ぐるみ、地域ぐるみで巻き起こった前代未聞デモ。
隊列の先頭を、黄色い風船いっぱいつけた「お散歩カー」が、
お子さま満載で進んでいく様子はまさに圧巻! でした。
(雨宮処凛がゆく!もあわせてどうぞ)
原発だけじゃなく、基地やダム建設、環境破壊やハコモノ開発などなど、
いろんな問題に立ち向かうには、たぶんこんな「地域の力」が、
何よりも重要になってくるはず。
そんなわけで、「うちの近所でもやりたいなあ」と思わずつぶやいちゃったあなた、
迷わず実行に移して、全国「同時多発」を実現しちゃいましょう!
松本哉さんプロフィール
まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
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- 2010-12-22日本で韓国で「のびのび大作戦」
【この人に聞きたい】
松本哉さんに聞いた
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- 2008-01-16その2:消費するだけの街から文化は生まれない