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2011-02-01up
松本哉ののびのび大作戦
第54回:杉並で前代未聞の有象無象デモが発生! 2・19脱原発杉並デモ!
あけましておめでとうございます(今さら!)。今年も景気よく、のびのびと勝手なことやったり文句を言ったりしていきましょう!
去年は、震災と原発の1年で、デモも怒りまくってきたが、今年もどうやらその勢いは衰えそうもない。3月11日には早くも震災&原発大爆発から1周年。今年の春には、再稼働さえしなければ、ひとまず全部の原発が止まってしまう。おまけに4月26日はチェルノブイリ事故26周年だったりもする。もう原発のことを考えてくれって言ってるようなもんだ。この春で「もう原発やめた!!」と、金と欲望と権力欲にまみれた原子力政策に区切りをつけて、前に進んでいきたいものだ。
…などと思っていたら、杉並区でとんでもない動きが巻き起こり始めた! これまでの脱原発運動の流れとは全く違う、とんでもないローカルなところからの謎の事態! これがまた面白すぎるので、今回はちょっと紹介してみよう!
まず、ことの発端は去年末。杉並あたりの労組だとか社会運動系の人たちが「杉並で幅広い枠組みで脱原発運動をやりたい」と、言い出しいろんな人に呼びかけ始めたという。こっちにも遠まわしに話は伝わって来たんだが、「いや〜、いいですね!」と言いつつ、よくわからなかったのでうまく逃げたりしていた。で、年末に会合をやってみたそうなんだが、この辺の人たちいわゆる共産党系の人たち(こんなこと言ってよかったのかな?)ってことで、いざ集まってみると、結局そのいろんな所の人たちは来ず、なんだか見たことある人ばっかりだったという。で、「こんなのじゃ、全然広い枠組みでもなんでもないから意味ないよ! やめ、やめ。中止、中止!」と、完全にポシャったという。
ところが、一旦いろんなところに声がかかったということもあり、地元で脱原発のことをやりたい人ややってる人もたくさんいて、その火種だけは各所で燻っていたみたいで、気づいたら「全員寄せ集めでなんかやりませんか?」って流れになって来たという。
さて、そんな経緯もあり、改めて集まった初会合が1月9日。このときは前評判でも話題になっており、めちゃくちゃにいろんな人が集まるという情報が流れまくっていたので、さすがにちょっと気になり、ちょっと顔を出してみた。すると、次々とわけのわからない人たちが集まりまくっていて、総勢100人ぐらいが地元の産業商工会館(場所がいい)に集っている。う〜ん、なんだなんだ? で、顔ぶれがこれまたすごいことになっていて、老人からママさんたち、その辺の商店主、謎の若者、ビジネスマン風の人などなど、老若男女もバラバラで、いきなり傾向が読めない。区議会議員なんかも来ているんだが、これまた脈絡がない。社民共産からみんなの党までいて、てんやわんや。あまりにいろんな人が来てるので、のちの会合からはあわてて民主党の議員も来はじめた。これだけムチャクチャだともう完全に意見がバラバラ。「ま、ぼちぼち適当にやりましょう」って人から「毎週デモをやるぐらいでないとダメでしょ!」って人もいる。即時に全原発廃炉っていう人もいるし「脱原発はトゲがあるから、『放射能危ない』ぐらいのほうがいいのでは?」という超穏健派まで。運悪く司会を引き受けてしまった重鎮のおじいさんも、もうとてもじゃないけどまとめきれない感じ。みんな手を挙げるので、「じゃ、次の方」「じゃ、そちらの方」と、どんどん振っていくんだが、みんな全く違うことを言う。で、「さて、みなさんどうしましょう?」司会の人。この繰り返しで2時間以上に及ぶ白熱した議論の末、決まったのは「2月19日」の日にちだけ。時間は「冬は寒いから一番あたたかい時間に」ということに。おお! さすがご老人も多く参加するだけあって、この発想。いいね! そして、あまりにまとまりがないので「みなさん、いろんなご意見がおありのようですが、ここはひとつみんなで原発をゼロにしようってことに…」という、町内会的な完璧な仕切りで盛大な拍手とともに閉幕。完全に昭和の雰囲気が漂っている!!!!!
2回目の会合は1月19日。前回の謎の盛り上がりを聞きつけた人たちがさらに集まってきて、今度は何と120人。もちろん素人の乱界隈でいつもデモやってる人たちなんかほとんどいない。完全に杉並辺りの人たち。これはすごい! どうなってるんだ一体! 今度は前回と違って具体的な話が出まくってくる。初デモの人たちもたくさんいるので、これがまたすごいとんでもない発想がたくさん浮上する。おばちゃんが「新聞折り込みのスーパーのチラシほどすごい宣伝力はないのよ!」と熱弁をふるいだしたり、老人向けにガリ版刷りのチラシを作ろうという話になったら「普通の印刷でも読める!」とムキになるご年配の方が登場。あるいは、「子供たちはデモの途中で絶対に『もう歩きたくない〜』って泣きだすから、お菓子を満載した台車を用意して、その台車に乗せちゃいましょう」などと言い出したと思ったら、商店街のオジサンが「うち、お菓子屋やってるからお菓子提供するよ!」と挙手。おお、オッサンかっこいい!!!
ここへきて、もう完全にバラバラながらもみんなが対等なすごい会議。司会のウェブデザイナーの兄ちゃん(数日前にこの会合のことを知ったらしいけど、行きがかり上なぜか司会をやるはめになったという)がまたいい。その辺の区議会議員なんかがゴニョゴニョいいだした時なんかでも「なんだか意味分かんないからダメ! はい、次の人〜」って感じ。すごいすごい、最高の司会さばき! そもそも誰なんだあの人!!
さて、そんな感じで次々と準備は進んで、当日のお楽しみのようなものすごい案がたくさん練られている。いや〜、これはいったいどうなるんだろうか!? 今回は単なる一参加者としての参加だが、暇人はどんどん参加してしまうしかない!
事故から一年がたとうとしていて、反原発運動も盛り上がっている一方、全く関心のない人は関心のないままって状態も続いている。この固定化した状態を一挙にひっくり返すような、もうゴチャマゼのうえに超ローカルなところからのこの動き、最高過ぎる!!! いや〜、杉並って前からいろんな奴らがいるとは思ってたけど、ここまですごいことになってるとは! もちろん、杉並以外の人でも大歓迎とのことなので、働いてる人、よく遊んでる人、昔住んでいた人、あるいはまったく縁もゆかりもない人などなど、興味のある人はむやみに駆けつけてしまおう!
2月10日(金) 18:30〜
「2.19脱原発杉並デモ」準備会合
阿佐ヶ谷・産業商工会館
デモをやりたい人なら誰でも参加可!
オープンなデモ会議って、よく考えたら前代未聞!
【出演】おじいさん、おばあさん、ママさん、若者、議員、商店主、住民ほか
2月10日(金)
『住み開き』(筑摩書房・アサダワタル著)出版記念トークイベント
場所:新宿・カフェラバンデリア
アサダワタル・米田智彦・山下陽光・松本哉
http://www.kotoami.org/menu/schedule.html
2月19日(日)
2.19脱原発杉並デモ
登場:大熊ワタル&こぐれみわぞう、ジェロニモレーベル(京都)、保坂展人(世田谷区長)、コバヤシステム、雨宮処凛ほか
☆19日の杉並デモが気になる人は、twitterのアカウント@datsusuginamiを要チェッ
ク!! すべてがここでタイムリーに報じられている!
*
その後のさらなるカオスな会合により、
「カラオケカーを出動して『脱原発のど自慢』隊列を!」
「小さい子どもを載せる『お散歩カー』が10台登場」などなど、
ますますよくわからないことになっている杉並脱原発デモ。
準備会に集まった人たちのいろんな思いが詰まった「呼びかけ文」が、
こちらのサイトで読めます。
キーワードは「有象無象」。
あなたも「有象無象」の一員になりに、2月19日は杉並へ!
松本哉さんプロフィール
まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
「松本哉ののびのび大作戦」
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- 2010-12-22日本で韓国で「のびのび大作戦」
【この人に聞きたい】
松本哉さんに聞いた
- 2008-01-09その1:路上を僕らの解放区に!
- 2008-01-16その2:消費するだけの街から文化は生まれない