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2011-02-02up

松本哉ののびのび大作戦

第38回:新春デモ作戦! 前代未聞のデモ不許可!!

 今年は年明けの瞬間からずいぶんとマヌケな騒ぎが起こってしまった! 何を隠そう、今年の正月は、年末年始のデモ作戦というとんでもない騒ぎが発生してしまったのだ。いやー、実にマヌケだったので、いまさらだが、ちょっと報告してみよう! 

 まあ、こんなロクでもない世の中で「あけましておめでとう」もヘッタクレもあったもんじゃねえな、ってことで、「なんかめでたいことでもやろうか」というのが事の起こり。しかも、正月の高円寺は、かなりの人が実家に帰ったり旅行に行ったりして、みんなどこかへ行ってしまって実に閑散としている。残された貧乏なヒマ人らで、軽く祝いつつなんかやらかそうって感じ。
 計画は2つあって、「大晦日カウントダウンデモ」と「元日デモ」。
 まずカウントダウンのほうは、まさに大晦日の夜に高円寺駅前広場でカウントダウン駅前パーティーを開催しようというもの。「年越しに苦労する生活困窮者に精神的な支援を!」っていう名目のもと、カウントダウンイベントは計画された。街の中がどんどん窮屈になり、やみくもに商業化の一途をたどり、何でもかんでも禁止になっていくというなか、大パーティーを行おうという、素晴らしい企画!
 いやー、祭りだ祭りだ!
 で、主催した人が警察署にデモ申請に行ったところ、いろいろと揉めた末になんとか「許可する」との回答! おお、すごい! 深夜のデモ申請なんか許可されるもんなんだな! 杉並署、今回も太っ腹だね!
 …と、思っていると、大晦日のイベント前日に杉並署からデモの「許可証」が主催者のもとに届いた。すごいすごい。本当に許可が出た! で、その許可証をよーく見てみると…、なんと、日付が変わっている! 許可条件のところに「日時を変更する」とか言って、勝手に1月1日(元日)の午前8時からに変わっているではないか!! あっ、汚ねえ! こんなの許可って言えるかよ! それに、年越しの瞬間のデモと元日の朝のどっちが迷惑かって言ったら、間違いなく朝早くのデモだ。う~ん、これはひどい。

これが申請書。当初は意外に簡単に通ったので大喜び!

 ちなみに、「集会・デモは自由にできる」というのは、憲法にも書いてある権利で、よほどのことがない限り却下できない。もし仮に申請を却下にする場合はエライことで、東京都議会に対してなんで不許可にしたのかっていう理由をちゃんと提出して説明しなきゃいけないことになっている。むやみに不許可にできないようにっていう配慮だろう。…で、こんなことになったら相当面倒くさいからか、今回はとんでもない時間に勝手に変更して「許可」にしたんだろう。うひゃー、これはまたイカサマなことやるね~。国やら警察がこういうインチキをやるから、みんなが法律を守る気が失せてくるんだと思うけどね…。こんなのだったら、「許可する。ただし5年後に行うこと」ってのだって出来ちゃうでしょ。インチキだ、インチキだ!! 先生に言いつけてやる!

これが伝説のイカサマ書類! 朝8時にデモやるやつがどこにいるんだ!

 さて、なにはともあれイベントは不許可になった。まったく、警察も正月だってのに興ざめな連中だね、本当に。台湾の旧正月なんか、花火打ちまくりで大変なことになってるのにな~。ずるい! なんで日本だけダメなんだ! で、さらに、パーティー予定地の駅前広場には、飲み会をさせないように大晦日だってのに数百人の警官が配備されていた! おお、相変わらずのマヌケ警察! 完全に勘違いしている!
 一方、こっちは素人の乱期待の新店「なんとかBAR」を開けていたのだが、みんな実家に帰っていると思って油断していたら、来るわ来るわ、ヒマ人たちが入れ替わり立ち替わりで、延べ6~70人ぐらい来たんじゃないだろうか。
 そして、夜も更けてきて、いよいよ紅白歌合戦も終わろうという頃、せっかくだから近くの神社に初詣に行こうということになり、店を閉めて街に出た。駅前を通りかかると、まだ警察が大量に警戒しているではないか。う~ん、税金がムダだな~。さらに! 警官が近寄ってきて、「おい、もうこんな時間なんだから家に帰ったらどうだ?」と言ってきた。バカ! こんな時間だから出てきたんだよ! 神社に行ってみろ。
 で、警察は放っておいてそのまま神社へ行くと、私服の警官も警戒(?)してついてきた。しかも、素顔を見られたくないのか、どいつもこいつも帽子にサングラスにマスクという100%変質者のような出で立ち。ええい、無礼者! 神の御前であるぞ。覆面を取れ!
 そして、我々は初詣の列に並ぶ! 私服警官も列に並びそうになる!! こちらはもう完全に「なんとかBAR」で出来上がっているので、実にいい感じに盛り上がっており、高円寺なのでやたらと近所の知り合いなどに会うから、「どうもどうも、おめでとうございます」などと挨拶! 非常に和やかな光景なのだが、私服警官(変質者)は、その神社の列からちょっと外れたところをウロウロしている。実に怪しい。彼らもそろそろ、場違いな警備に派遣されちゃったんじゃないかと気づいているとは思うが、職務上なんかやってないといけないので、ロングコートで電柱の陰から神社の様子を窺って無線で交信したりと、ハードボイルド風のことをやってみたりしている。これはもう完全にヤバい人だ!!
 この警察って、たぶん公安部門の人たちだろうが、彼らはいま人が余りまくっていて、完全に税金の無駄遣いというか、国のお荷物になっているようで、常にリストラの危機から怯えながら任務を遂行しているようだ。それでなきゃ、こんなどうでもいいイベントに派遣されてくるはずがない。う~ん、さすがに同情するけど、ついた仕事が悪かったってことだね~。あきらめて交番勤務に戻ってくれ!

 そして、翌日は「元日デモ」。勝手に午前8時に変更させられたデモは、知ったこっちゃないので当然行かないが、朝まで飲んで帰った人の目撃談によると、これまた昨日の大量の警備態勢がそのまま敷かれていたらしい。うーん、下っ端の警官がかわいそうだ!
 これは、元日の午後という、おそらく日本でいちばん平和なタイミングで、超平和的なユルいデモを行い、高円寺のマヌケさを増長しようというもので、主催はパンクロッカー労働組合というバンドの連中。こちらは、元日ということもあり、むやみに騒いだところで面白くないので、まさに「元日の散歩」という感じで高円寺一周デモを決行! じつに平和的に終わった。

なんと長野からも強力な援軍がジープに乗ってやってきた

マイクで演説するのは、パンクロッカー労働組合のベーシスト・喜久氏

 ま、よくよく考えてみると、大晦日にみんなで集まって酒を飲んで初詣に行き、元日は街を散歩をしようという、ごくありふれた行為を、届けを出してやってみたというだけの話。めでたしめでたし!

【おまけ】

 前回報告した、フランスのショボすぎる対ファシスト戦を思い出してほしい。あれ、客観的には超マヌケな戦いだが、当事者の最弱ファシスト3人衆からしたら、一大事だ。ほうほうの体で逃げ帰り、家でホッとして湯船につかり、プロ野球でも観ながら晩酌でもしてたら、かみさんが起きてきて「アンタ! またくだらないケンカなんかして帰ってきて! 今日は仕事行くはずじゃなかったのかい!? この役立たず! ごくつぶし! さっさと死んじまえ!」などと怒られ、「悪かったよ~。明日はちゃんと行くから…。そう心配すんない」などとひたすら謝ってるうちに、だんだん腹が立ってきて「コンチキショー! あいつらぶっ殺してやる!」なんてことになりかねない。

 逆に、アナキストの兄ちゃんもデモが終わった後「これじゃ、弱い者いじめだ。意味がないよ。みっともないところ見せちゃってすまんね~」と弁解していた。そう、確かにいくら悪を懲らしめるとは言え、粗暴に憂さを晴らすだけでは何も生まないのだ。で! そんなことを考えてると、よく考えたら、「マガジン9」のテーマでもある日本の憲法にも、まんまとそのことが書いてあるじゃないか! 気に食わないときに、むやみやたらと手荒に解決しようなんて原始人みたいなことやってても、埒が明かないってことだ。 そう、やはり貧乏な役立たず連中によってマヌケな雰囲気を作り出すことが、世界平和への第一歩になってしまうに違いない!!! …ということで、今年も好戦的な金持ち連中によるボッタクリ社会に対しては、大バカなのびのび大作戦を展開していくしかないね!!

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公安警察は人が余っている! という話は、
以前に鈴木邦男さんもされていましたが、
それにしてもこれはマヌケすぎる!!
大晦日の夜に「そろそろ家へ帰れ」って!? と、絶句してしまいます。
そんな息苦しい社会にしないために、
今年も「のびのび大作戦」を大展開! 

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松本哉さんプロフィール

まつもと・はじめ「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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