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これまで「高円寺一揆」や、「クリスマス粉砕デモ」など、
数々の脱力系にして最強の「運動」を繰り広げてきたカリスマ店主、松本哉のコラム連載です。
高円寺から世界へ「のびのび大作戦」、日本のみならず世界各地でも増殖中!
翻訳ツールもつけました。
まつもと・はじめ 「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
いやいや、景気のいいデモをやらかしてしまった!!
まずは前回までのあらすじ。今年の正月に、新宿駅前で人間書初めをやろうと思って現場に行ったものの、警察に妨害され、コテンパンにされて高円寺まで逃げ帰った。で、さっそくそれに文句を言うデモをやろうっていうことになり、デモの申請を行ったのが前回まで。おや、なんだか連載小説みたいになってきたが、新聞の朝刊なんかに載ってるしょうもない連続作り話なんかとは違い、正真正銘のドキュメンタリーってところが気持ちがいいね!
さて! 前回のデモ申請の後、もう一度杉並警察署に足を運び、デモの届けもまんまと完了! ちなみに、前回のマヌケ申請の後、さらに調子に乗ってしまい、「トラックの上にバンドのセットを組みライブをやりながらデモをやる」という申請までしてみたら、これまた許可が出てしまった! おお、すごい! 届ければ通るんだね、こういうものは。
…ということで、せっかくなのでデモの名前も変更し、なんと「ANTI新宿POLICE!高円寺ロックンロールショー」に!! これはいい! デモをやって、新宿署に文句を叫ぶだけじゃ、退屈な上に景気が悪くてしょうがない。警察としても、自らの不祥事がもとで「ロックンロールショー」なんかが開催され、口々に警察の文句を言いながら大パーティーが行われてしまうほど恐ろしいものはない。
で、さっそく出演バンドなどを呼び掛けてみると、来るわ来るわ、いろんな奴らが次々と「出させてくれ」と集まってくる! 失礼ながら驚いたことに「前回のマガジン9条読んだんですけど、出てもいいですか」なんていうバンドもあったし、「マガジン9条読みましたよ!!! おれもデモ行きますよ!」などという、異常にテンションの高い奴なんかも現れたりと、なかなか影響力があることが判明。これは、飲みすぎて原稿落としたりしてる場合ではないなと思わされてしまった…。
さてデモ当日! うちの店で家具の運搬に使っているトラックに、ドラムセット、ギター・ベースアンプ、発電機、その他音響機材を積み、デモ仕様に改造! そして、「ANTI新宿POLICE!高円寺ロックンロールショー」という巨大な横断幕! これはバカバカしくていい。まず、デモ前に店の裏の駐車場で、機材チェックでとんでもない騒音を出してみると、真っ先にパトカーが駆けつけてきた。が、「あ、今日のデモの音チェックね。なるほどね!」と、やたらユルく、ひとまず幸先がいい。
そしてついに、その見るからにバカバカしいデモカーは発進し、商店街を通り、デモ出発地の高円寺中央公園へ到着! とりあえず集会を開始し、年末の新宿での経緯とか、新宿署の文句なんかを一通り言いまくっているうちに、デモを楽しみにしている貧乏人やらヒマ人やら大バカ者やらがワラワラと集まってくる。
杉並署のおまわりもたくさんやって来たが、杉並署の代表格の数人がこちらへやってくるなり「今日は何バンド出るんだ? バンドの転換の場所はどうする? 転換のときは機材が倒れないように車を止めて。で、最初のバンドは誰? ちょっと時間押してるぞ!」などと立て続けにまくし立ててくるが、もはや、警察でも何でもなく単なるライブハウスのスタッフみたいだ。やはり今回の標的は新宿署なので、日頃エリート風を吹かしている新宿署からは鼻で笑われているであろうマヌケ杉並署としては、ちょっと気分がいいらしい。
また、今回のデモはなんだか面白い。たとえば、近所の人にもデモ情報が浸透しているのか、初めて高円寺のデモにきた人が、八百屋の前にいたおばちゃんに場所を尋ねたところ「ああ、ロックンロールショーね。あの神社の前の公園よ! あっちあっち!」と教えてくれたりしたそうだ。また、公園の使用許可も取っているので、杉並区役所の人も一人来ていたんだが「みなさんタバコを吸うでしょうから」と、大量の携帯灰皿の差し入れをくれた。あれ? 杉並区って路上喫煙禁止って言ってなかったっけ? デモのときはいいのかな? いや~、なんだか知らないうちに高円寺もだんだん街ぐるみでわけのわからないことになってきたね…!
さあ、そんなことで、デモも出発!! すかさず先頭のトラック上からは、パンクロッカー労動組合、APageOfPunk、えびのお寿司おねえさん、フジロック(仮)の順にライブ開始! 今回のライブは基本的にパンクだったので、先頭の方は早くも大暴れの大パニックに! デモ隊はそのまま、駅前ロータリー方面に進み、スーパーや八百屋の前なんかを通る! 夕方の買い物時に、大根を物色するおばちゃんたちの前で巻き起こるモッシュやダイブ! さらには「アンチ新宿警察」の主張!! 高円寺ロックンロールショーとはまさにこのことか!!!
最近は経済も悪いし世間も窮屈だし、どうにもこうにも景気が悪い。ってことで、こういう閉塞感に満ち溢れた雰囲気には嫌気がさしまくり、こういったお祭り騒ぎを待ち望んでいるという奴らは、街には大量にいる。ましてや単なるバカ騒ぎじゃなく“アンチ警察”なんて言ったら、テンションも倍増ってもんだ。たまたま駅前で遭遇してデモ(=ライブ)に入ってくる奴らも続々と現れる! また、マンションの窓から顔を出して大喜びの奴らや、「あ、またデモ! 今回のテーマは何?」と、店から飛び出してくるショップ店員など…。で、たまに駅前とか交差点とか人が集まってるあたりでは、路上の群衆に新宿署の悪行についてトラメガで解説したので、「なんだかよくわからないけど、とりあえず新宿署がヒドイことをしたらしい」という程度には情報が広まり、デモとしても大成功!!
そんな感じで、デモは少なくとも2~300人ほどの連中を率いて大騒動のまま高円寺中央公園に到着! そのまま駅の北口広場に移動して、酒を飲みまくり、まさに路上解放区と化してしまった! いやはや、今回のデモも相変わらずとんでもない騒ぎとなって、よかったよかった! ざまあみろ、新宿警察!!
新宿署の不祥事が原因で高円寺で騒動が起こるという、妙な流れにはなっているが、今回参加した連中なんかは「今度はあれをやろう」「いや、こんな作戦がある」と、やたらと作戦を練りまくっていたので、今後、また次々と騒動が起こりまくる可能性は高い! これは期待するしかない!!
ちなみに、杉並署の交通課の人はどうやら音楽が好きらしく、「ま、トラックの上のライブは、一回許可でたから、次からは全然やっても大丈夫だからね!」と、ご機嫌だったので、そのうちまたやってしまおう。
あ、ついでに。こういうデモの許可は東京都公安条例によるので、少なくとも都内であれば同じ条件でできることになってる。あと、2008年には大阪の浪速署でも許可が出てるので、大阪も大丈夫。デモをもくろんでいる人は、これらの経験をフル活用してジャンジャンやらかしちゃってくれ!!!
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